二年前の日記 3/22

2017/03/22

 ニュージーランドのミヤマオウムは現地ではケアと呼ばれ、日本で言えばカラスの生態的地位に近い。すなわち棲んでいるのは山であるが、人里の近くに暮らし、ゴミをあさる、極めて知能の高い鳥である。

 そのミヤマオウムに「つられ笑い」のような効果を持つ声があるらしい。つまり「遊びを誘発する鳴き声」であり、この声が聞こえると他のミヤマオウムは、自然発生的に遊び始めるとのこと。周囲に遊んでいる仲間がいなくても、この声が聞こえるだけで遊びが始まるというから、声が引き金になっているのは間違いないようだ。

 このような声による感情の伝染は哺乳類ではチンパンジーやネズミで確認されているが鳥類では初めてだということである。まあ研究者によって確認されたのが初めてということなのだろうが、鳥を飼っていると、さもありなんと思う。

 鳥は感情の豊かな生物である。明確に喜怒哀楽がある。当たり前のように遊ぶ。宇宙の外に仲間を探さなくとも、人類は孤独ではない。きわめて高度な知性をもった隣人が、すぐそばにいるのだ。しかし何故か人類はそのことに気づこうとしない。そこから目を逸らし続けている。不可思議なことである。『下等動物』の言葉のもとに滅ぼし続けてきた生物が、自らの隣人たりえる存在であると認めたくないのだろう。そんなことで何が『万物の霊長』か。ちゃんちゃらおかしい。


 イギリスは正しくは『グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国』であるが、その北部アイルランドである北アイルランド自治州の前副首相であった、マーティン・マクギネス氏が亡くなった。66歳だという。マーティン・マクギネス氏のことを知らない人は多かろう。自分だって知らない。まったく知らない。ただ彼が北アイルランド和平に尽力した人物であり、さらに言うなら、元IRA司令官であったと聞けば、見方が変わる人もいよう。

 IRAことアイルランド共和軍はカトリック系住民の自警団に始まる過激派組織であり、北アイルランドのイギリスからの独立およびアイルランド共和国との統一を目指している。要はテロ組織であると考えて良い。実際イギリスに対して数々のテロを行い、多くの人命を奪ってきた。遡ればソ連やナチスともつながりのあった、典型的な悪の軍団である。そのIRAが武装解除するきっかけとなった北アイルランド和平合意が1998年の出来事であるから、マーティン・マクギネス氏は40代でIRAの司令官を務めていたことになる。結構若い。

 北アイルランド和平については自分ごときの知識の及ぶところではないのでここには書かないが、興味のある方は調べてみると良い勉強になると思う。カトリックとプロテスタントが、互いの遺恨と権力をかけて意地の張り合い、腹の探り合い、権謀術数、様々な陰謀が張り巡らされた、非常にカロリーの高い歴史的出来事である。それを経て北アイルランド自治州の副首相――IRAの政治部門であるシン・フェイン党に与えられるものとしては事実上最高の地位――にまで上り詰めたマーティン・マクギネス氏の政治力は相当なものがあったに違いない。だが66歳で死去。政治家としては決して高齢な方ではない。憎まれっ子世にはばかると言うが、必ずしもそうではないのだな、とそんなことを思った次第。

※ ミヤマオウムは世界で最も賢い鳥の一つと言われています。日本のカラスもそうですが、環境適応力がずば抜けているのです。このレベルまで適応力の高い動物は、哺乳類でも少数派でしょう。
 イギリスの北アイルランド州は、ブレグジットのバックストップ条項で脚光を浴びた形になっていますが、その陰で『新IRA』が活動を活発化させているそうです。そう言う意味では「憎まれっ子世にはばかる」は間違っていないようです。

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