二年前の日記 1/13

2018/01/13

 かつて「言葉は文化です。大いにもてあそびましょう」と言ったのは故山城新伍氏。なるほど言葉が文化なら、一国の代表が使う言葉にはその国の文化程度が表れているのかもしれない。

 アメリカのトランプ大統領が、ハイチやエルサルバドル、アフリカ諸国からの移民に言及した際、「shitholeみたいな国からなんであんなにやってくるんだ」と発言したと、アメリカのメディアが一斉に報じたのは11日。当たり前だが関係各所からもの凄い反発を受けている。

 ハイチやアフリカ諸国が怒っているのはもちろん、アメリカの駐パナマ大使が辞任する騒ぎにもなっている。しかし一方ホワイトハウスは静観しているとも伝えられている。今回の発言でトランプ大統領の支持者が離れていくことはないだろうと見ているのだ。

 まあ確かにそれはそうかもしれない。現在までのトランプ大統領を見てきてそれでも支持しているのだから、今回の発言くらいでは支持をやめる理由にはならないだろう。ただ問題があるとするなら、その支持者の数が圧倒的大多数ではないということくらいか。去年12月時点のトランプ大統領の支持率は35%くらいらしい。いま調査すればどうなるのだろう。多少減るのだろうか。

 さてそんなトランプ大統領を叩く報道が過熱する中、AFPがちょっと面白い記事を載せている。『shithole』を世界のメディアはどう訳したかという記事だ。shitholeを直訳すれば『クソの穴』になる訳だが、世界各国はそれぞれ苦心して翻訳している様子がわかる。以下に簡単に引用してみる。

◇日本:不潔な国(NHK)、肥だめ(BBC日本語版)、便所のような国(時事通信) 
◇韓国:物乞いの巣窟(聯合)
◇台湾:鳥が卵を産まない国家(中央通信社)
◇中国:悪い国(人民日報海外版)
◇ベトナム:汚い国、ゴミの国、腐った国など
◇タイ:排泄物の穴(ボイス・オブ・アメリカのタイ語放送)
◇セルビア:狼が交尾する場所
◇ギリシャ:掘込み便所
◇イタリア:尻の穴国家
◇オーストリア:ゴミの穴
◇フランス、スペイン、ポルトガル:クソ国家
◇ベルギー:睾丸国家
◇チェコ:世界の尻
◇ドイツ:汚い穴
◇ルーマニア:豚小屋
◇ロシア:臭い穴

 なお英語圏のフィリピンでは『shithole』をそのまま見出しに使ったそうだが、その理由として、ドゥテルテ大統領の暴言に慣れているから、と分析していた。

 何にせよ、世界中のマスコミの中の人も大変である。アメリカ大統領の差別的発言ともなれば伝えない訳にも行かないが、かといって片棒を担ぐような真似も出来ないし――1周回って担いでる国もあるが――そして何より自国民に理解出来るような言い回しにしなければならない。文才と語彙力が求められる。個人的には台湾やセルビアの考えすぎて何かが壊れてしまった感が好きである。

 国のリーダーの発言と言えば、正直なところ日本もあまり他国を笑っていられる状況ではないのだが、さすが天下のアメリカ様は次元が違う。トランプ大統領は発言を否定してはいるとはいえ、実際のところ、アメリカを見ている限り日本はまだまだ大丈夫だなと安心出来る。さすがにこんな状態が長く続いて欲しいとは思わないものの、面白いのは確かに面白い。あとは次の「ちゃんとした」大統領に確実にバトンタッチしてくれれば言うことはない。何とか1年もったのだから、もう充分ではないかという気がするのだけれど。


 マーベルと言えばDCと並んでアメリカンコミック界の大手であり、『アベンジャーズ』を始めとする映画作品でも続けてヒットを飛ばしている。そのマーベルが同社のキャラクター群の中に中国にゆかりのあるスーパーヒーローを加えるらしい。中国にスーパーヒーローっていたっけ、と思ったら、新しく作るのだそうだ。それはどうなんだろう。アジア域のファン層の拡大を狙っているらしいが、仮に拡大しても中国だけではないか。いや、中国ですら怪しい。

 いまハリウッドを始めとするアメリカのエンターテイメント業界には中国からの資本が大量に流入している。だから中国人のご機嫌を伺いたいという気持ちはわかるし、必ずしも間違った戦略ではないとは思うが、その方法論として「中国人キャラを作る」というのは安易過ぎるのではないか。

 確かにアメリカ国内で生まれ育った中国系アメリカ人には人気が出るかも知れない。しかし中国国内で生まれ育った大多数の中国人にとって、アメコミの世界は「自分たちとは縁もゆかりもない世界」だからこそ面白いのではないのか。まあ知り合いにアメコミ好きの中国人がいる訳ではないので確実なことは言えないが、中国人キャラを出すだけで中国での人気を集められるのなら『らんま1/2』とかもっと凄いムーブメントになっていてもおかしくないだろう。出せば良いというものではないはずだ。

 だいたい中国人キャラって難しいぞ。アメリカ人に中国人と日本人と韓国人の区別がつくとは思えないし、逆に区別させたら差別だと問題になる。とりあえず物語のあちこちに中国由来の単語をちりばめて、キャラ自体はものすごいうっすらとしたアジア人キャラにする程度で落ち着いてしまうのが見える気がする。そうなったら中国人ですら見向きもしない恐れがある。

 一番良いのは中国人の漫画家に、中国人らしいキャラの作品を作ってもらって、それをまず広めることだろう。アイアンマンやスパイダーマンの仲間に出来るかどうかは、先々考えていけば良い話で、最初からそれ前提では失敗するのではないか。

 まあ別にマーベルが失敗したからといって自分の懐が痛む訳ではないのだから、どっちでも良いっちゃ良いのだけれど、どうせやるのなら成功してもらいたい。面白いものが増えるのであれば、自分としては歓迎である。面白ければだが。


 日銀が3ヶ月ごとに行っている個人を対象にした調査によると、「暮らしにゆとりがなくなってきた」との回答が増加しているのだそうだ。さもありなん。NHKの報道によれば日銀は「賃金が伸び悩む中、エネルギー価格の上昇などで物価がゆるやかに上がっていることが影響している」と判断しているのだそうな。その上で、春闘での賃上げの動きがどこまで広がるかを注視しているらしい。

 暢気な話である。鉄鋼や自動車の業界でベースアップが実現されたからと言って、サービス業の給料には何の影響もないということを日銀は知らないのだろうか。まさかな。いやいやまさかまさか。

 もちろん景気対策をするのは日銀の仕事ではないし、様子を見るしかない場合もあろうとは思うが、もう少し何とかならんものかという気もする。株価は上がっているのかも知れないが、不景気なのは間違いないのだ。もっと強く政府に提言するとか何かできることはないのか。本当にないのか。

 例えばいま、不景気なのに人手不足という困った状況がある。ならば、思い切ってブラック企業を潰していけば良いのではないか。ブラック企業をどんどん潰して、ホワイトな企業に人材が回れば、イロイロ丸く収まるだろう。ではどうやってブラック企業を潰すかと言えば、最低賃金を大幅に引き上げれば良い。それができれば春闘の結果を待つまでもない。多少劇薬ではあるが、即効性があるはずだ。

 とにかく内需の冷え込みも、待機児童の問題も、少子高齢化も、国民に金があれば何とかなるのだ。金がないから物も買えないしベビーシッターも雇えないし子供も作れない。すべては金だ。金が要るのだ。そういう視点から強く政府に対して提言をしてもらいたい。できればやっている、などという返答は要らない。何とかするのが仕事だろう。とっとと何とかしてもらいたいと思う次第。


※ マーベルの中国人キャラは、結局どうなったんでしょう。まだ構想段階なんでしょうか。時間が経てば経つほど、どんどんいろんな問題が湧き出して、どんどん難しくなって行くと思うのですが。タイミングを逸しましたかねえ。

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