二年前の日記 5/22

2017/05/22

 この世は善と悪との戦いの場であると言い出したのは、ゾロアスター教であるらしい。原初のキリスト教やイスラム教にはこの教えはない。つまり天使と悪魔の戦いや最終戦争などというのは、ゾロアスター教の二元論を取り入れた後で考え出された創作である。しかし現代のキリスト教徒やイスラム教徒にはお馴染みの考え方なので、例として引くには最もわかりやすいものであると言えよう。

 外遊でサウジアラビアを訪れているアメリカのトランプ大統領は21日、首都リヤドで開催されたイスラム諸国指導者との国際会議において演説をした。

 選挙中はイスラムに対して強硬な、ともすれば宗教対立を煽るかのような発言を繰り返していたトランプ大統領だが、この演説では対立を否定し、過激派との闘争を、

「これは人命を奪おうとする野蛮な犯罪者らと、それを守ろうとするあらゆる宗教の良識ある人々との戦いだ。善と悪との戦いなのだ」

 と説明した。つまり基本的にイスラム教徒は善良であり、過激派だけが悪であると言う訳だ。まあ賢明な言葉の選び方ではあったろう。ただその一方で、

「イラン政権が進んで平和のパートナーになろうと努めない限り、良心のあるすべての国家が一致団結してイランを孤立させていくべきだ」

 とイランに対しては厳しい態度を見せている。要は膝を屈してアメリカに従わない限りは経済制裁を続けさせるという宣言である。まあこれはイランと敵対しているサウジアラビアに対するリップサービスの意味合いもあるのだろうが、いつまでこれを続けるのだろうか、という気がする。アメリカは支配する側の立場である。支配者側からすれば、いつまでもイスラム同士で対立していてくれた方が支配はしやすいのだろう。武器も売れるし。だがそれを続けた結果がタリバンでありアルカイダでありISである。自分で自分の首を絞めていることに、いい加減気づかねばなるまい。もう中東は安定させるべきだと思う。

 ちなみに昨日、イランの外相はTwitterにこう投稿した。

「真の選挙で一新したイランが、あの民主主義と中庸のとりでの@POTUSから襲われた。外交政策、それとも単に4800億ドルのサウジ搾りか」

 翻訳の関係か、わかりにくい文章であるが、要約すると、

「イランがトランプから叩かれた。外交のためか、それともサウジから4800億ドルを搾り取るためか」

 ということである(4800億ドルは、サウジからアメリカへの新規投資金額)。トランプ大統領に対する不満を述べてはいるのだが、これは見方を変えれば対話を求めるイランからのメッセージである。アメリカと二国間交渉がしたいがためにミサイルを打ち上げ続けるどこぞの国に比べて、なんと平和的なことか。おそらくTwitterを使えばトランプ大統領の目にも止まりやすいと考えてのことだろう。好きな女の子に近づきたいけど直接話しかけられない中学生男子のようで微笑ましい。アメリカはイランに対し、何らかのリアクションを取って欲しい。もしかしたら、今が最後のチャンスかもしれないのだから。


 昨日の夕方、また北朝鮮がミサイルを打ち上げた。地対地中距離弾道ミサイル「北極星2型」の発射実験であり、実験は成功したと国営朝鮮中央通信が報じている。これを受けて金正恩委員長は「今や早期に大量生産し軍に配備しなければならない」と指示したという。

 指示するのは結構であるが、量産のための資材や金はどこから出てくるのか。まさか地面を掘ったら湧いてくる訳でもあるまい。結局中国かロシアに頼らねばならないだろう。それは首根っこを捕まれるということなのだが、理解しているのだろうか。無理をして自分を大きく見せても、寿命を縮めることにしかならないのだが。

※ アメリカは対イラン政策でも、対北朝鮮政策でも、行き詰まっている気がします。ディールだけでは解決しない事を、そろそろ認めてはどうでしょう。大将があの人では、難しいでしょうか。

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