二年前の日記 6/26

2017/06/26

 将棋の藤井聡太四段が29連勝をかけて対局中である。午前11時半からの昼前のニュースでは、各局トップ、もしくは2番目のニュースとして伝えていた。

 テレビを見ている者の大半は将棋のルールすら知らないのではないかと思うのだが、大変にめでたいニュースとして扱われている。それは必ずしも悪いことだとは思わない。今日一日のことではあるし、明るいニュースもあった方が良いのだろう。しかし危機感はないと言わざるを得ない。

 こんなときにもフィリピンのニュースを真っ先に報道するくらいの硬派なマスコミが一社くらいあっても良さそうに思うのだが、そんなものは日本には存在しない。右寄りとか左寄りとか、イロイロあるはずなのだが、みな揃いも揃って視聴者に媚びを売ることに懸命である。これではいったい何のためにマスコミが何社も必要なのか、見ている者にはよくわからない。正直、意味があるとは思えない。

 いずれ遠くない未来、日本のマスコミは再編されると思うが、それは自業自得であろう。要らないモノは捨てられる。断捨利の精神である。


 タカタと聞けばジャパネットを思い出す人々は多かろうが、そんな人でも嫌でも目にしたであろう話題が、自動車部品メーカーのタカタが民事再生法の適用を申請し、東京地裁に受理されたというニュースである。まあもの凄く平たく簡単に言ってしまえば、会社が潰れたということだ。負債総額は1兆円、製造業としては戦後最大規模らしい。

 タカタはエアバッグやシートベルトなどの自動車の安全装置を製造するメーカーであり、その筋では世界でもトップクラスの大企業であった。しかし危険な動作をするエアバッグ、これまた平たく簡単に言ってしまえば、不良品のエアバッグを世界中の自動車メーカーに大量に納品した。アメリカではこれが原因とされる事故で11人が死亡している。

 当然、事故に対しては賠償しなくてはならないし、製品はリコールしなければならない。しかしこのリコールに時間がかかりすぎた――隠蔽しようとしたという話もある――として、タカタは批判を浴びている。ちなみに2016年5月末時点でリコール対象の車の台数が世界で1億2000万台に上ったという。この大量のリコール製品を回収、修理するのに必要な金を捻出できず、各自動車メーカーに肩代わりしてもらったばかりか、それを棒引きにしてもらえないだろうかと要請し、自動車メーカーの怒りを買った。特にタカタ製のエアバッグを搭載した車を最も多く販売した、ホンダは怒り心頭である。

 まあそんなこんなで1兆円の負債を背負ったタカタは潰れた。リコールを含めた事業に関してはアメリカの自動車部品メーカー、キー・セーフティ・システムズに売却した。1750億円だという。買い物として高いのか安いのか。まあ国内の製造拠点は維持されるということなので、従業員も当面は安心なのかもしれない。

 しかしもったいない。せっかく世界的な大企業になれたというのに。製品の安全テストにもう少し金と時間をかけていれば、こんなことにはならなかっただろう。ほんの少しをケチったがために、蟻の穴から堤の崩れ、すべてがおじゃんになってしまった。これからしばらくの間、タカタは企業経営の「悪い見本」として人々に記憶されることとなろう。ジャパネットに風評被害が及ばなければ良いのだが。


 25日、パキスタンの中部バハワルプルでタンクローリーが横転した。横転しただけでも大変な事故なのだが、悪いことは重なるもので、タンクの中のガソリンがこぼれ出してしまった。すると、それを見た近隣の住民が、バケツを片手に集まって来た。よせばいいのに、こぼれたガソリンをかき集めようというのである。と、そのとき。突然爆発が起きた。一説によれば、現場でタバコを吸っていた者が居たらしい。瞬く間に火は燃え広がり、現時点で少なくとも143人が死亡、250人以上が負傷したという。死傷者はまだ増える可能性があるとのこと。

 何というかまあ、教育って大事よね、という話である。もっとも、日本人も笑っていられない。セルフサービスのガソリンスタンドで、タバコを吸う馬鹿は日本でもみかけるし、ガソリンスタンドついでに言えば、軽自動車に軽油を入れる阿呆も後を絶たない。そんなに死にたいのなら、自分一人で死んでくれれば良いのだが、何故に周囲を巻き込もうとするのか。本当に迷惑な話。


 フィリピンでは依然としてミンダナオ島のマラウイの一部をISが占拠しているのだが、25日、フィリピン軍は8時間の停戦を宣言した。

 今年の場合、5月26日から6月24日まではラマダン月であり、イスラム教徒は夜明けから日没まで飲食物を摂らない。そのラマダンが明けた翌日(つまり25日)はそれを祝うイスラム教の祝日となり、「イード・アル・フィトル」の大祭が執り行われる。つまりマラウイのイスラム系住民がそれを祝えるよう、軍が配慮したのである。

 これは軍、ひいてはフィリピン政府の、「敵はイスラムではなくISである」というメッセージをマラウイの住民に伝えるための行動であり、やむを得ないところであるが、ISはこれを利用しただろうと思うのは自分だけか。銃撃が止まったのを見計らって、物資や人員を補給したのではあるまいか。事態の長期化が懸念されるところである。

 ISが東南アジアに足場を築けば、日本を含めた東アジアにも影響がある。当初は他国の援助を拒否していたドゥテルテ大統領も、最近では援助を受け入れる姿勢を示しているという。これはフィリピンの内政問題ではない。ASEANが対処する問題でもない。世界が立ち向かわねばならない問題である。日本に何が出来るのか、考えなければならないだろう。これで何もしなければ、政府は無能の烙印を押されても仕方ない。

 と、いうようなことをマスコミが主張して、政府のケツを叩いてくれるのならば、その存在価値にもうなずけるところなのだが、本当に何もしないな。まあ言われなければやらない政府も情けないのではあるが。

※ このときはまだ藤井聡太四段だったのですね。いまは七段ですが。すっかり将棋界の顔になった感じです。
 タカタのエアバッグについては、まだときどき訴訟関連が話題になりますね。上にはキー・セーフティ・システムズ(現在のジョイソン・セーフティ・システムズ)についてアメリカの企業と書いています。それは間違いではないのですが、株式のすべては中国企業が持っていますので、中国系企業であるのも事実です。つまりエアバッグ技術を中国に大安売りした訳です。何ともはや。

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