二年前の日記 11/16

2017/11/16

 アフリカのジンバブエではムガベ大統領が37年に渡って支配を続けている。事実上のムガベ王国である。であったと言うべきか。

 15日、ジンバブエ軍はムガベ氏と夫人を拘束し、軟禁した。国営放送を占拠し、他に財務相を拘束したらしい。しかし国営放送を通じて軍から発せられた声明によると、これはクーデターではないという。まあ確かに軍隊が権力を掌握しないとクーデターとは言えない。

 この軍事行動の後、ジンバブエの与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線のものと見られるtwitterアカウントが、「エマソン・ムナンガグワ氏が暫定党首となる」と書き込んでいる。ムナンガグワ氏というのは、先般罷免された副大統領である。与党の暫定党首になるということは、いずれ大統領選挙を経て次期大統領に就任するという筋書きが見て取れる。これが事実であるのなら、かなり強引なやり方ではあるが、政権の移譲であってクーデターではないとも言える。

 ただ、この与党のtwitterアカウントには、いわゆる承認マークがついていない。本当に与党のものなのかが不明なのだ。ムガベ大統領夫妻の行方もいまだ不明であるし、まだ一波乱二波乱あるのかもしれない。


 テロ組織ISを、他ならぬアメリカが支援している、とは以前から言われていた。まあそう言う者はタリバンやアルカイダもアメリカが支援していると言うのだが。

 さて14日のこと、ロシアの国防省が複数の白黒写真を公表した。砂漠の中を走る車列の画像。それはロシア軍の攻撃から逃げるISを撮影したものだという。

「ロシアの攻撃でISが逃げ出したにもかかわらずアメリカはそれを攻撃することはなかった」

 と、ロシアはアメリカを非難した。すなわちこれが、「アメリカがISを支援している動かぬ証拠」であると言うのだ。だがロシア国防省は、突然この写真を削除した。

 実はこの写真、アメリカ軍とイラク軍の攻撃から逃れるISの様子を映した動画から切り取ったものだった。さらにはビデオゲーム『AC-130 Gunship Simulator: Special Ops Squadron』の画像まで一枚紛れ込んでいたというから間抜けな話だ。ロシア国防省は慌てて別の画像に切り替えて、「これこそがアメリカがISを支援している本当の証拠」と主張したが後の祭りである。

 ロシアは昨年5月にも、在英大使館がビデオゲーム『Command & Conquer』のキャプチャー画像を「アレッポ付近のテロリストがトラック数台分の化学兵器を受け取った模様」としてtweetするということがあったのだが、よほど政権内部にゲーム好きがいるのだろう。それ自体は悪いことではないのだが、仕事場にまで持ち込むのはやめておいた方が良いと思う。何せ大統領がプーチンである。命に関わる。いや、もしかしたらこれはプーチンに対する小さなレジスタンスなのだろうか。であるにしても、あまり格好の良い抵抗ではない気がするのだけれど。


 SFという言葉の解釈に「少し不思議」という語を当てた藤子・F・不二雄氏のセンスには感心するばかりであるが、人間は少し不思議が大好きである。大きな不思議にはあまり興味がない。

 宇宙の果てがどうなっているのだろうか、とは誰しも一度は思うことであるが、それに夢中になって宇宙について調べ始めるのはごくごく一部の人間だけだ。しかし目の前でスプーン一本曲げられただけで、喧々囂々大騒ぎになる。とにかく身近な、自分にもできるんじゃないだろうかレベルの不思議には、みな首を突っ込みたがる。ならばもちろん、それを理解した上で、それで金を儲けてやろうと考える者もいるのだ。

 東京国税局は、千葉県市川市に住む48歳の女を所得税法違反の疑いで千葉地検に告発した。女は自称『チャネラー』であった。どこぞの掲示板に入り浸っている者ではない。霊的な存在と交感(チャネリング)できるという特殊能力を持っている人間を意味する。女はその能力を売り物に、カウンセリングやセミナーを開催し、1億3200万円の収入を得たにもかかわらずそれを隠し、所得税4800万円を脱税したとされる。

 チャネラーとはえらい儲かるのだな、というため息が聞こえてきそうだが、そう、儲かるのだ。もちろん誰でも儲かる訳ではない。誰でも儲かるのなら誰だってチャネラーをやるだろう。しかしチャネラーや超能力者の類いで儲けようと思うのならば、セルフプロデュース能力が要求される。仮に本当に本物の能力を持っていたとしても、自己演出が出来ない者は儲からない。逆を言えば、上手い演出さえ出来れば、能力などなくても儲かる、そういう世界なのだ。

 言うまでもなくそれは限りなく詐欺に近い。ただ、霊や超自然現象に興味のない者、信じていない者は、そもそもチャネラーになど近づかない。自分から近寄るのはほとんどが「信じたい」と思っている者だ。信じたいと願っている者に信ずべき答えを見せてやる、聞かせてやる、それは寺の坊主のやっていることと本質的に違いなどない。宗教が金を儲けて良いのなら、霊能力者が儲けることにさほど問題があるとは思えない。キチンとルールに則って申告さえすれば良いはずだろう。

 騙されるのは半分以上自業自得である。もしどうしても騙されたくないと思うのなら、「少し不思議」にはなるべく近づかないことだ。創作の世界だけで我慢しておくことをお勧めする。現実世界の「少し不思議」など、碌なものではないのだから。


※ 結局ムガベ氏は大統領職を追放され、現在ムナンガグワ氏がジンバブエの大統領です。このとき発表された通りになりました。しかしこのときの出来事は、いまでも公式にはクーデターではなかったはずです。まあ、イメージ悪いですからね。

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