二年前の日記 4/30

2017/04/30

 昨日29日、フィリピンの首都マニラでASEANの首脳会議が開かれ、北朝鮮問題や中国の南シナ海進出問題などが話し合われた。そして今日30日、議長声明が出されたのだが、北朝鮮問題については北朝鮮の行動を非難、アメリカにも自制を求めるという、まあ良く言えばバランスの取れた表現が見られたものの、中国に対しては「懸念に留意する」という婉曲な表現となり、去年9月の議長声明では見られた「深刻」「埋め立て」「軍事化」などの言葉は見あたらなかった。これには議長国であるフィリピンのドゥテルテ大統領の強い意向があったとされる。他のASEAN諸国は議長声明の内容を前回より強めることを求めたらしいが、フィリピン側は頑として受け入れなかったという。

 ドゥテルテ大統領といえば、麻薬戦争と称し、国内の麻薬密売人やその元締めなどをバンバン殺しまくっており、武闘派の大統領という印象があるが、中国に対しては臆病と思えるほどに及び腰だ。首脳会議の前に、中国に対し「もうそこにいるのだから。何もできないのに議論することに何の意味があるだろう」と言っていたそうであるから、ちょっと遠慮深いにもほどがある。

 中国はドゥテルテ大統領にロビー活動を行っている。それは他のASEAN諸国から指摘されるレベルの強力なものだそうだ。それが功を奏しているという説もある。いや、実際そうなのだろうが、それでも自分は、もっと根本的なところで、単純に中国が怖いのではないかと思うのだ。北朝鮮みたいな小さな国でも敵意を向けられると怖いのである。巨大な中国はそれより遙かに怖いのが普通だろう。中国はフィリピンに対し数十億ドル規模の貿易と援助を申し出ているらしい。ならば表向きにならない個人的な援助も相当額に上るのではないか。外交の基本は金(飴)と武力による恐怖(ムチ)であるということを、改めて教えてくれる。

 ASEANはそもそも中国寄りの国とそれ以外の国の寄り合い所帯だ。その中でフィリピンは反中国の立場をこれまで貫いてきた。しかし、もう駄目だろう。少なくともドゥテルテ氏が大統領を務めている間は、フィリピンは中国寄りの国であり続ける。海を挟んだ日本の隣国でもあるのだが、残念だ。今後安全保障を考えるなら、フィリピンは敵国になり得ることを考慮せねばならない。厄介ごとがまた増えた。


 アメリカのオバマ前大統領が9月にウォール街で講演をする予定なのだが、その講演料が40万ドル(約4500万円)と大変高額なことが話題になっているという。そもそもオバマ氏は大統領時代にウォール街の富裕層を批判していたという経緯がある。それが大統領を辞めた途端に、そのウォール街に擦り寄ったかの如き行動を取っている。40万ドルと引き換えに。

 ちなみに40万ドルはアメリカ大統領の年間給与に匹敵するそうな。そう考えると、アメリカ大統領というのは儲からない仕事である。その立場にいるだけで感じるであろうプレッシャーやら命の危険やら何やらを考えると、とても金銭的に恵まれた仕事とは言えない。

 アメリカの大企業の社長なら、年収が億を超える者など珍しくはあるまい。なるほど、大統領は辞めてから儲けるという噂はまんざら嘘ではないようだ。ただ、払う側にも懐事情というものがある。いくら金持ちだからとはいえ、一回の講演だけで4500万円払わされたのではたまるまい。民主党の関係者からも困惑の声が上がっているというし、ワシントンポストも疑問を呈している。

 大統領を辞めた後の商売くらい好きにさせろとオバマ氏は思っているかも知れないが、その商売も『元大統領』という肩書きあってのものである。一度大統領になってしまえば、もう死ぬまで私人には戻れないのだ。早晩契約内容の変更を迫られることになるだろう。自業自得の部分もあるのだが、ちょっと可哀想な気もする。


 28日、佐賀県がちょっと奇妙な発表をした。伊万里市の山林でニホンジカの目撃情報があったというのである。シカくらいどこにでもいるだろう、何故わざわざそんなことを発表するのか、と思ったら、佐賀県にはニホンジカがいないことになっているのだそうな。

 地理が弱い人の中には佐賀県がどこにあるのか知らないという人もいよう。九州の北西部、長崎県と福岡県に左右から挟まれた位置にあるのが佐賀県であり、伊万里市は長崎県との県境の都市である。そして言うまでもないことかも知れないが、長崎県にはニホンジカが生息している。ついでに福岡県にもシカはいる。ならば普通に考えて、その間の佐賀県にニホンジカがいても何の不思議もないはずなのだが、何故か佐賀県ではシカがいないことになっているのだ。

 県の担当者は「どういうルートからか見当が付かない」と言っているそうであるが、普通に山沿いか道路沿いに移動してきたのではなかろうか。ていうか、本当に今までいなかったのか?たまたま目撃情報がなかったから、いないことにしてたのではないのか?

 ちなみにシカの農林産物への被害は、イノシシを上回るそうである。いないことにしたい気持ちもわからなくはない。


 昨日、安倍首相のイギリスでの記者会見の様子をたまたま見ていたのだが、いくら表向きの記者会見で、キッチリしたことしか話せないとは言え、やたらロシアを持ち上げるのはどうかと思った。

「日露関係には無限の可能性がある」って、そりゃ可能性だけならイロイロとありはするんでしょうが、そんな小さな可能性に、期待なんぞできんでしょうよ。日本と交わした約束なんて、ロシアは屁とも思っていないに違いない。

 ロシアが日本を重要視しなければならない理由がそもそもないはずである。ぶっちゃけて言ってしまえば、核ミサイルも持っていない、弾道ミサイルがモスクワに向けられてさえいない、そんな小国が約束を守ってくれとか平和条約を結ぼうだとか言ったところで、本気で考慮する価値などあるはずがない。

 結局、軍事力を背景にしない外交などたいした力はないのだ。言ってることが正しいか、説得力があるか、そんなことは二の次三の次なのであり、最終的にはあの国を怒らせたら自国にどれだけのリスクがあるか、それはメリットを上回るのか、その計算をすることで世界各国は外国と交流しているのだ。地理的に離れた日本とアメリカ、日本とEUなら経済だけで話はできるのだろうが、隣接した中国や韓国や北朝鮮に話が通じているかといえば、まるで通じていないではないか。ましてロシアをや。

 日本とロシアの間に、期待できるような可能性など事実上存在しない。どうしても、本当にどうしてもロシアと平和条約を結びたければ、日本と戦争をするのは損だと思わせるだけの軍事力を持たざるを得ないだろうし、軍事力の増強は無理だというのなら、平和条約など諦めることである。北方領土の返還などさらに難しい。

 日本には日米安保条約というものがある、という意見はあるのだろうが、いざ日本とロシアが険悪な状態になったとき、アメリカが日本の盾となるのか、ロシアは疑いの目で見ているのではないか。実際、北朝鮮の核問題とて、アメリカ本土がミサイルの標的になるかもしれない、という段階に至って初めてアメリカは重い腰を上げた。それまでは東京やソウルが狙われている可能性が高かったのに、アメリカは何もせず事実上放置していた。そんなアメリカの態度を見ていれば、日本のためにロシアと全面的に軍事対立する危険を冒すだろうかとロシア側に思われても仕方あるまい。

 不沈空母としての日本は、アメリカ本土をロシアや中国から防衛するための最前線であり、日本防衛にはアメリカ本土を守るのと同じだけの価値がある、という理屈はわからないではないが、アメリカ全土を更地にして、なおお釣りがくるだけの核ミサイルを持つ国に対して、場合によっては日本を生け贄に差し出すくらいの戦略がないわけがなかろう。

 一方日本は、なまじ長い間平和に暮らしてきたがために、自分たちが変わらなければこの平和が永続的に続くのではないかと思っている節がある。しかしそんな上手い話などない。状況は刻々と変化していく。日本が変化しなくとも、日本の周囲の国は変化し続けていくのだ。それに追いついていけなくなれば、いずれ日本は滅ぶ。それは百年も二百年も先の話ではあるまい。

※ 2年前の今日は、こんな感じでした。この時点ではまだ天皇陛下の退位の日程は決まっていませんでしたね。これから2年後、今日の日を振り返ったとき、どんな思いが心をよぎるのでしょうか。
 それにしても、日本人は変わる事を嫌がります。リベラルを自称する人たちまで保守的なんですから始末に負えません。あまりにも柔軟性に欠けると思うのですがねえ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?