二年前の日記 3/24

2017/03/24

 通り過ぎて行ったと思っていた厄災が、まだ残っていた。フィクションの中でなら絶望感の演出としてはなかなかのものであろうが、現実にやられるとキツイ。

 千葉県と宮城県とで「H5型」の鳥インフルエンザが確認された。もう今年の鳥インフルエンザは終った、と誰もが思っていたタイミングでこれである。

 千葉県で6万8千羽、宮城県では22万羽のニワトリの殺処分が決定され、既に作業は始まっている。

 ニワトリの一生は過酷なものである。卵から産まれた瞬間にオスとメスは選別され、オスは肉食動物の餌に使うために殺して冷凍保存されるか、さもなくばミキサーにかけられて肥料として使われる。メスは卵が産めるようになるまでの数か月間ただ餌をついばんで暮らし、卵が産めるようになると産卵用のケージに押し込まれ、あとはベルトコンベアで流れてくる餌を食べては卵を産み続ける。しかし卵を産めるのは、長くて2年が限界だ。卵を産めなくなったメスのニワトリは、殺されて食肉となる。一般的な採卵用のニワトリがこれで、一方肉専用のいわゆるブロイラーと呼ばれるタイプのニワトリならば、生まれて数カ月で食肉として出荷される。

 つまり何にせよ、生まれてから短期間で殺されてしまうのがニワトリの宿命だ。そのために人間に飼育されているのだから、それは仕方のないことなのかもしれない。だが、それでも殺処分されるニワトリには胸が痛む。合理的ではなくとも、痛むものは痛むのだから仕方ない。ニワトリは際立って知能の高い鳥ではない。だが感情豊かな生き物である。喜怒哀楽もある。一緒に暮らせば人間を好きになってくれる、そんな命である。せめて最期の苦しみが少なからんことを祈る。


 何事も素直が一番だと思う。「拗らせ」て良いことなど何もない。

 さいたまスーパーアリーナで行われていたアニメソングのライブ中に、ゴキブリを撒いたとして、東大阪市の33歳の男が威力業務妨害で逮捕された。容疑を認めているという。

 自分だってアニメソングは大好きである。もちろん古い歌に限るが。しかしライブ中にゴキブリを撒こうという発想は、どこからも出てこない。何がどうなったらこんな発想になるのか、知りたいものだ。

 それが何かは知らないが、この男もおそらく何かを「拗らせた」のではないか。そうでなければ、わざわざ33歳のいい歳した男が、東大阪から埼玉まで、ゴキブリを持って遠征したりはしないだろうから。ただ、当日は同じ会場の別の場所で、爬虫類関連の展示が行われ、餌用のゴキブリ(デビュアであろう)も販売されていたというから、ゴキブリは現地調達したのではないかという話もある。

 もしかしたら自宅で飼育している爬虫類のために餌のゴキブリを購入し、そのあと偶然アニメライブを訪れ、興奮してゴキブリの入った容器を振り回していたらゴキブリが飛び出てしまった、という可能性もない訳ではないが、なんとも出来過ぎな気がする。だいたいデビュアなど、通販でいくらでも手に入る。東大阪の人間がわざわざ埼玉で購入するメリットなど、普通に考えて何もない。

 自分の好きなアニメ作品に『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 地球最後の日』があるが、この作品の後期主題歌が『HEATS』という曲だ。その歌詞にこうある。

「何かが胸で叫んでるのに気づかぬ振りで過ごしてた」

 この男も胸で何かが叫んでいたのだろうとは思う。思うが、それは「アニメのライブでゴキブリを撒きたい」という叫びではなかったのではあるまいか。自分の胸が一体どんな叫び声をあげているのか、一度じっくり真正面から向き合ってみてはどうだろう。何かを拗らせた心を解き放つには、それしかないと思うのだが。

※ この冬は幸いなことに――もちろん関係者の不断の努力があってのことなのですが――日本国内で鳥インフルエンザの大流行はありませんでした。その代わりという訳ではないのでしょうが、豚コレラが流行ったりしましたけど。伝染病の侵入ルートは一つではありませんからね。対策は本当に大変だと思います。
 アニソンライブでゴキブリをバラ撒くのは、結局のところ何が理由だったんでしょう。ちょっと私の想像力の範囲外にあるので、何とも言えません。

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