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あり得ない日常#16
カバンから上衣を取り出し、前のジッパーをあげて身を包む。
家でジーンズに履き替えてきたので動きやすい。
肩までの茶髪を後ろ一つにまとめる。
なんだか学校に行く朝より気合を感じる。
住宅街の中の店舗なので、繁華街や駅前の店舗と比べて静かではあるが、道路沿いであることもあって、店舗前の駐車場の見通しが良くなるのは深夜帯から早朝にかけてくらいだ。
シフトには、ここ二日入っていなかったので久しぶりの感覚だ。
アルバイトでもノルマがあるらしい。
クリスマスケーキか。バックヤードの事務室に入ると駅前の店舗から様子を見に来たオーナーから、そんな話をされた。
1個でいいらしいので、自分の家の分だけで済みそう。
その程度ならたすかる。
そういえば、昨日は学校で同じグループに居るあの子が入っていたはず。私とほぼ入れ替わりのシフトになっている。
一昨日は珍しかったんだな。
トイレを見に行こうとフロアに入ろうとすると、裏で飲料の補充をしている人がいる。
なるほど、ちょっと気合を入れて身だしなみを整えていたのは。
この人がその大学生の先輩だ。
挨拶すると軽く会話する。
学生期間を抜けて歳を重ねるほど、数年の年の差なんてほぼ関係なくなってくるが、高校生から見て大学生や25歳くらいの人はとても大人に見える。
この先輩のように学生でひとり暮らししているなんて、憧れも相まって輝いて見えるものだ。
始めてシフトに入ってからしばらくは店長に仕事を教わったが、先輩もレジのことについて教えてくれた。
距離の近さと良い香りがすることも相まって、あまり内容が入っていなかったのはここだけの話だ。
あれから1年近くにはなる。
そろそろ、商品搬入のトラックが到着する時間だ。
昨日、一昨日といなかったねという話から、シフトが入っていない時はどんな風に過ごしているのかという話になりかけたところで、他のパートさんから注意される前にトイレを見てきますと言って離れる。
お客さまがレジに並びだす忙しくなる時間を控え、搬入された商品を速やかに商品棚に補充していく作業を控えている。
ゴミ出しはパートさんが15時くらいにやってくれているので、次は帰る前にやればいいだろう。
お客さんの多い時間帯はこの後だ。
サラダやお弁当、多少の冷凍食品の補充を行っていく。
店長がレジまわりで作業をしているので、お客さんがレジに来ても対応は問題ないだろう。
大学生の先輩とともに商品補充作業が始まった。
周囲の目と耳を気にしながら。
なるほど、これを楽しみにしていたのか。
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この物語はフィクションであり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。
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