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あり得ない日常#28

 意味のない権威をちらつかされても言葉に困る。

 この先輩でも、一応大学レベルの教育はこなしたらしい。私の言葉の端々に毒があるのはお察しである。

 そういう人間でも食うには困らない社会になって本当に良かったのではないだろうか。

 なぜかって?
それは簡単、実務でボロが出るからだ。

 そして、そんな人に限って、やたらとプライドが高い。

 するとどうなるか。

 例えばインターネットが普及する前、それこそ昭和の時代にはお年寄りをはじめ、地域の人を集会所に集める。

 そして、数々の商品がいかに素晴らしいか、根性と気合に満ち溢れたスーツに法被はっぴを着た人たちが延々と訴えかけてくるわけだ。

 それに気圧けおされつつ、何か買うまではばかられてとても会場を後にできないという、およそ真っ当な商売とは言えない、押し売りが始まるわけだ。

 商品も様々、蜂蜜のセットに布団、さらにはネックレスなど、街のデパートで買った方がまだ安く済むはずのものが売れる。違うな、買わせる。

 じゃあなぜみんなそこに集まるかって?

 それも簡単、来場すれば砂糖1kg無料、卵1パック無料でもらえるというチラシと口コミが人を集めるのだ。

 何しろ、地域の人々のつながりを裏付けた口コミほど強力なものはない。
え?あなたは行かないのと白い目で見られる。

 裏でキックバックか何か貰っているのではないだろうか。

 似たような方法で、新興宗教も拡がるわけだ。

 法律はいつも後、何か命や財産に損害があってから、つまり事件が起こってからしかほぼ対応しない。いわゆるねずみ講と呼ばれる連鎖販売取引、霊感商法や、いかがわしいマルチ商法もそこに含まれる。

 消費生活センターなんて、新しい組織の時代だ。

 まだ若い、そんなものに流されることだってあるだろうって?

 それはそのとおりだが、一度流されて甘い汁を吸ったら最後。逃れられなくなってしまう、麻薬みたいなものだろう。

 逃げを図ろうとしても、弱みを握られているほど抜け出せなくなる。

 ケータイが普及し、流行り病が世界を脅かした最近の時代まで、地方ではまだそんな商売をギリギリやっている人たちもいた。

 妙なものを売る人がいなければいい話だが、残念ながら人を犠牲にしてでも食い扶持を稼がなくてはという時代では、いくら法を整備したところで所詮はイタチごっこだ。

 21世紀初頭では?
光で通信ができる時代には、そんなものはもう無かったと?

 暗号資産はどうだった?

 メジャーなビットコインならまだいい。よくわからない存在するか確かめようもないローカルコインはどうだろうか。

 それを未来に対する事業の裏付けだとして、それらに投資を募る人間も少なくなかったという。

 もう、買う人間が悪いで済まされてしまうだろう。

 一方で調達方法にもよるが、在庫を抱える場合、買う人間がいさえしなければ、売る側は破産して終わりである。

 このことは転売にも同じことが言える。

 このように、欲深い人間は別として、最低限の食い扶持を稼ごうと、そうした手法に走る人間を、少なくとも現代では無くすことが出来たわけだ。

 友達が多いのはいい事だが、似たような人間の集団ではしょうもない。

 勝手な偏見かもしれないが、普段の言動から隣人である先輩をそのような目でしかどうしても見れないのだ。

 早くどこかを任せてもらえないかな。十分技術がある人間は、単独で拠点を任せてもらえるようになるらしい。

 

 さて、女性はよほど好きにならない限り、自分からアプローチする攻め手になることは珍しいだろう。

 一方で男性は、仮に恋人がいたとしても、自分に自信がある人ほど本能が行動に移させるらしい。

 声を大にして言いたい。
モテるためにあなたがやっていることは、たいていイタい。

 いい車に乗りたい、それは別にいい。
自分の純粋な趣味と目的であって、下心が無いのであればの話だ。

 街中で爆音をまき散らして、人の迷惑も考えずオレイケてる!がどれだけイタくて、とんでもなく迷惑なことか考えたことがあるのだろうか。

 吐き気さえしてくる。

 SNSだってそうだ。
その人がどんな人をフォローしているのか、傾向を探ってみたらいい。

 淡々と自分が学んでいることをただ投稿しているだけのように見えて、その実、興味を持ってもらいたい女性ユーザーをフォローし漁っているなんてよくある事だ。

 意味があるのかよくわからない研究で論文を書いて、所属する大学で賞をもらったとしても、ただの身内ネタの範囲に過ぎない。

 後輩が自分の研究を根拠に論文を書いてくれたら、そりゃ嬉しいだろう。

 キャバクラのお姉ちゃんならきっと、手放しでスゴイって言ってくれるさ。商売だからな、よかったな。

 そうして、仕事しながら自慢話を延々と聞かされる、ある意味ものすごく大変なスキルを身に着けているような気がする毎日に、とことん嫌気がさしていたのだが、ある拠点を任されていた人が妊娠して子供を育てるために辞めるという話を聞いた。

 どうやら、うまくいけばそのポジションに食い込めるかもしれない。

 ただ、そのためには新しい機材を発注して、搬入、検品して据え付けまで一人でできるようにならないと難しそうだ。

 まだ入社して半年ちょっと過ぎたくらい。

 私と同じようなことを目論もくろんでいる人はきっと他にもいることだろう。

 この自慢話ばかりの先輩を除いて。

 今の時代でも、キャバクラという水商売は繁華街に存在する。

 脂ぎったおっちゃんたちの相手をするお姉さんたちもさぞ、大変なんだろうなと心から尊敬の念を抱かずにはいられないのだった。


この物語はフィクションであり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

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