見出し画像

禁虐の奴隷ホテル


 プロローグ

 四月末の金曜日、新緑が眩しい校庭を見下ろす教室に、夕暮れの柔らかな光が差し込んでいた。桜の花びらはすでに散り、若葉の香りが風に乗って窓から漂い込む。まもなくゴールデンウィークを迎える高揚感が教室内に満ちていた。
 窓際の机に座る蒼井悠【ルビ:あおいゆう】は、その柔らかな光に包まれ、より一層美しく見えた。
 黒い学生服がその小柄な体にぴったりと馴染み、白いワイシャツの襟元が清楚な印象を与えている。細身の体つき、柔らかそうな黒髪、大きな瞳と整った顔立ち。まるで少女のような美しさだが、どこか凛とした雰囲気を醸し出している。
「悠、今日もテニス行こうぜ」
 がっしりとした体格の石田皇大【ルビ:いしだこうだい】が声をかけてきた。
 彼もまだ冬用の黒い学生服を着ているが、悠とは対照的に逞しい体つきが制服を引き締めている。短く刈り上げた髪と日に焼けた肌が、テニス部のエースらしい印象を与えていた。
 悠は鞄にノートを丁寧に詰めながら、申し訳なさそうに答えた。
「ごめん、今日も……用事があるんだ」
「またか? 三年になってから、週末になるとよく抜けるよな」
 皇大の声には不満と心配が混じっていた。彼の眉間にしわが寄る。
「キャプテンとしても、親友としても心配なんだよ。ほら……冬は大変だっただろう」
 この冬に悠は、最愛の母親を亡くした。
 悠は無理に明るく振る舞おうとした。瞳に影が落ちるのを必死に隠している。
「悪い。来週は必ず行くから。約束する」
「……わかった」
 皇大は納得していない様子だったが、それ以上は追及しなかった。
「でも何かあったら言えよ。一人で抱え込むなよ」
「サンキュー」
 悠は小さく頷き、教室を出て行った。その後ろ姿には、何か重いものを背負っているような雰囲気が漂っていた。

 皇大が悠を見送った後、長い黒髪を揺らしながら竹内【ルビ:たけうち】ほのかが近づいてきた。紺のブレザーに白いブラウス、チェック柄のスカートという制服が、彼女の愛らしさを引き立てている。
 大きな瞳と愛らしい顔立ち、整った体型の彼女は、学年一の美少女と呼ばれている。
 皇大とほのかは幼稚園から幼馴染だった。
「また、振られちゃった?」
 ほのかが軽くからかうように笑ったが、その声音には、悠への気がかりが隠されていた。廊下ですれ違ったのだろう。チラチラと廊下を振り返っていた。
 皇大は溜息をつきながら答えた。
「ああ……悠のやつ、最近なんだか様子がおかしいんだ。何か俺らに隠してるみたいなんだよな……」
「確かに、最近元気がないように見えるよね……」
 窓の外では、新緑の木々が風に揺れ、下校する生徒たちの賑やかな声が聞こえていた。教室内の空気だけが、妙に重く感じられた。
 皇大がほのかに向かっていった。
「おまえ、さっさと悠に告白しろよ」
「はぁ? はぁぁぁあ? いきなり何いいだすのよ」
 ほのかは慌てて否定しようとしたが、頬が見る見る赤く染まり始めた。
「何その反応? もしかして、隠しているつもりだったの?」
 皇大は片眉を上げて、からかうように言った。
「わたし……もしかして、わかりやすい?」
 ほのかが小さな声で聞く。制服のスカートの端を握りしめている。
「そりゃ、去年、あのイケメンの先輩から告白されて断ってたくらいだし、悠の前だと顔がにやけてるからな」
 皇大は腕を組んで、にやりと笑った。
「うそ……」
 ほのかは顔を両手で覆った。
「驚くほど、顔に出てる」
「マジかぁ……」
 ほのかは顔を赤らめたまま、チラリと皇大を見上げた。
「でも、悠は私のこと、どう思ってるのかな?」
「さぁな。あいつの気持ちはよくわからんが、おまえのプレイは無駄がなくてお手本になるってよく見ているよ。少なくとも他の女子よりはリードしているだろう」
 皇大は腕を組んで考え込んだ。
「本当? 本当?」
「どうでもいいから、さっさと恋人になって繋ぎ止めてくれよ」
「え?」
「だから、告白して付き合えよ」
 皇大は真剣な表情で言った。
「最近の悠を見てると、何か良くないことに巻き込まれてるんじゃないかって気がするんだ。お前なら、あいつを支えられるんじゃないか?」
 ほのかは驚いた表情を見せたが、すぐに決意に満ちた顔つきになった。
「……わかった。考えてみる」
 二人は互いに視線を交わし、悠への心配と不安を共有した。教室の外では、悠が重い足取りで下駄箱に向かっていた。
 彼は靴を履き替えながら、スマートフォンを取り出した。画面に映し出された短いメッセージを読む。
 父親からだった。
「今日は例のホテルだ。会長さまにはくれぐれも粗相がないようにしてくれ」
 悠は深く息を吐き出し、スマートフォンをポケットにしまった。
 彼の胸の内には、誰にも言えない秘密が重くのしかかっていた。校門を出る彼の姿は、夕陽に照らされて長い影を引きずっていた。新緑の並木道を歩む悠の後ろ姿は、学生服姿でありながら、どこか大人びて見えた。

 第一章

 1

 金曜日の夕暮れ時、渋谷駅の雑踏を抜けて歩く一人の少年がいた。
 中学三年生の蒼井悠だった。整った顔立ちと小柄な体つきは、一見すると少女と見間違えてしまいそうで、すれ違う若い男やサラリーマンが思わず足を止めるほどだった。
 悠は人混みをかき分け、駅から少し離れた雑居ビルへと向かった。外観は古びて特徴のない建物だが、その中に隠された世界を悠は既に知っていた。
 エレベーターで五階に上がり、メディカルビューティークリニックと書かれたドアの前で立ち止まる。深呼吸をして、おずおずとドアを開けた。
 中に一歩踏み入れると、雑居ビルの外観からは想像もつかない豪華な内装が広がっていた。白を基調とした清潔感のある内装に、柔らかな間接照明。高級ホテルのような雰囲気だ。
 受付には、白衣ではなく、露出度の高いナース服を着た若い女性が座っていた。
「あら、蒼井悠香【ルビ:ゆうか】ちゃん。いらっしゃい」
 受付嬢が甘い声で迎え入れる。
 悠は小さく頷いた。ここでは「悠香」と呼ばれる。その名前を聞くたびに、胸が締め付けられる思いがした。
「先生が診察室で待っていらっしゃいますよ」
 悠は無言で頷き、診察室へと向かった。ノックをして中に入ると、消毒液の臭いと甘い香水の香りが混ざった独特の匂いが鼻をついた。部屋は思ったより広く、最新の医療機器が並んでいた。壁には解剖図や美容術の前後比較写真が飾られ、診察台の横には大きな鏡が設置されている。
 そこには三〇代くらいの女医と、先ほどとは別の看護婦が待っていた。
 女医は黒縁の眼鏡をかけ、白衣の下にはきっちりとしたスーツを着ている。長い黒髪を後ろでまとめ、真っ赤な口紅が白い歯を際立たせていた。端正な顔立ちだが、その表情には冷たさが漂い、鋭い眼光が悠を射抜くようだった。
 看護婦は二〇代前半といったところか。受付嬢同様、身体のラインが浮かびあがるナース服に身を包んでいる。胸元が大きく開いた白いミニワンピースは、スカート丈が極端に短く、網タイツを履いた長い脚が目を引く。栗色の巻き髪を揺らし、悠に向かって優しげな笑みを浮かべていたが、その目は何か企むような輝きを湛えていた。
「よく来たわね」
 女医が口を開いた。その声には暖かみがなかった。診察台の横に立ち、腕を組んで悠を見下ろしている。
 悠は黙ったまま、冷たい金属の感触が伝わる診察台に座った。部屋の隅には大きなワゴンが置かれ、その上には注射器や薬品の瓶、そして見慣れない医療器具が並んでいる。それらを見るたびに、悠の心臓が早鐘を打つ。
「今週末もとびっきり可愛い女の子に変身しましょうね」
 女医が続ける。看護婦がクスクスと笑う声が聞こえた。
 悠は俯いたまま、何も答えない。診察室の壁に掛けられた大きな鏡に映る自分の姿が、徐々に歪んでいくような錯覚を覚えた。
「お返事は?」
 女医の声が鋭くなる。
「悠香ちゃん、お医者さんは患者さんが嫌がることはできないのよ。悠香ちゃんは女の子になりたいって当クリニックに来ているんでしょ?」
 悠は歯を食いしばった。女子に間違えられるのが何より嫌いだった。小学校の頃から、そのことでからかわれ、喧嘩もしてきた。それなのに、今ここにいる。
「……はい」
 やっとの思いで返事をする。
 悠の脳裏に三月末の出来事が蘇る。父親の横領。その事実を知った会社の上層部。そして、その代償として悠に課せられた悲惨な「義務」。
 女医の冷たい視線に耐えながら、悠は目を閉じた。
 これから始まる「変身」の時間。心の中で、悠は叫んでいた。
(なんで、僕がこんなことを……)
 しかし、その叫びを聞く者はいなかった。診察室のドアが静かに閉まり、悠の週末が始まろうとしていた。

 2

「まずは身体のチェックをするわね」
 女医の冷たい声が診察室に響き渡った。その声に、悠は思わず身震いした。
 部屋の空気が一気に重くなったように感じる。壁に掛けられた時計の秒針の音が、異様に大きく聞こえた。
 悠は震える手で制服のボタンに触れた。指先が不自然なほど冷たい。ボタンを外そうとするが、緊張で思うように動かない。
 看護婦が近づき、手伝おうとする。その甘い香水の香りが鼻をつく。上半身が裸になった。
「両手を上げてみて」
 女医の指示に従うと、女医が悠の腋窩を覗き込んだ。
「……」
 指で触れられ、皮膚を摘まれる。
「腋窩の脱毛は完璧ね」
 女医の言葉に悠は顔を赤らめた。自分の体に起こっている変化を、こうして第三者に指摘されることの屈辱感はひとしおだった。
「次はパンティを脱いで」
「……」
「素直な女の子になりたいなら、お返事は?」
「……はい」
 下着を脱ぐよう言われ、返事をしたものの悠は躊躇した。
 女性用の下着。これを着けることを強いられていることに、深い屈辱を感じていた。
 彼は授業中もパンティの感触に戸惑い続けていた。それは、柔らかく、滑らかで、そして、蒸れて、少し湿っていた。パンティが自分の股間に密着しているのを常に感じ、惨めな気持ちを一刻も忘れることができなかった。
 パンティはコットン素材で作られていた。色は白で、裾にはピンクのレースが飾られていた。中学生らしい可憐なデザインだったが、股間部は不格好に膨らんでいた。
 悠はパンティを脱ぎたいと思った。しかし、彼はそれを脱ぐことができなかった。家には男物の下着はすべて捨てられ、色とりどりのパンティが用意されていた。
 肉棒にぴったりとフィットしたパンティの感触に、男性としての矜持がパンティの中に閉じ込められているような感覚を覚えた。
 しかし、悠に課された「義務」を果たさなければ、父親が捕まってしまう。そう思うと、悠は歯を食いしばった。
「悠香ちゃん、急がないと遅れますよ」
 看護婦の甘ったるい声で、悠香という呼ばれるたびに、悠の心を刺した。それは自分の名前ではない。しかし、ここではその名前で呼ばれることを強いられている。
 診察台に横たわりながら、悠の心は春休み前の雨の日に遡っていた。
 母の葬儀の日だった。
 黒い喪服に身を包んだ悠は、参列者たちの悲しみの表情の中に、ある違和感を覚えていた。
 葬儀が終わり、参列者たちが去った後、父の会社の会長が悠に近づいてきた。
「君が悠君だな……少し話がある」
 会長の声は錆びた金属が低く軋むようだった。
 齢は七〇前後だろうか。会長は洗練された黒のスーツに身を包み、鋭い目つきで場を見渡していた。その姿からは絶対的な自信と権力を滲み出ていた。身長一七〇センチほどの中肉中背で、年齢の割に若々しい容貌を保っているが、目元の皺が狡猾さを際立たせている。
「橋田会長さま……こちらにお席を」
 父親が別室に橋田を連れて行った。
 悠は葬儀場の一室に案内され、会長の前の席に正座させられた。
 橋田の傍らにはセーラー服姿の娘が控えていた。一〇代後半といったところか、清楚な表情を曇らせて、会長の横に正座している。美しい顔立ちも印象的だったが、セーラー服の胸元を盛り上げる乳房の実りが目立っていた。会長は時折彼女のお尻や胸を揉みながら、何かを囁いていた。その仕草には明らかな力関係が感じられ、悠は不快感を覚えた。
 父親は少し離れたところで、うなだれるように正座していた。
 かつては威厳のあった姿も、妻を失った深い喪失感と恥辱に満ちていた。黒い喪服が、その姿をより一層惨めに見せている。
 悠はこの光景を見て、胸が締め付けられる思いがした。会長が少女に対する冷酷な態度、父親の惨めな様子、そして自分の置かれた状況が把握できない不安。全てが悠の心に重くのしかかっていた。
「君のお父さんのことだ」
 橋田会長は口を開き続けた。
「実は大変な問題を起こしてね……蒼井専務。自分の口で説明するかね?」
「い、いえ……」
 背後から聞こえる父親の気落ちした声に、悠は息を呑んだ。
 橋田会長は白い顎髭を撫でながら、淡々と説明した。父が会社で大きな横領を働いていたこと。その金額は莫大で会社が刑事告訴すれば父は必ず逮捕されること。
「その金は、君のお母さんの治療費に使われていたんだ」
 悠の頭の中が真っ白になった。
 母の闘病、高額な治療費、父の横領事件。
 全てが繋がった。
「だがな……方法はないことはない」


 会長は机を叩いて、隣の美少女の名を呼んだ。
「愛莉【ルビ:あいり】」
 橋田会長の冷たい笑みが、薄暗い部屋に不気味な影を落とした。その長い指が愛莉の肩から首筋へとゆっくりと這う様子に、悠は思わず目を背けそうになった。
「よく見ておくんだ」
 橋田は美少女の冬用のセーラー服を捲り上げる。濃紺のセーラー服の裾から、白のブラウスが覗き、ボタンを一つずつ外していく。
 お椀型の巨大な乳房がまろび出た。愛莉の薄桃色の乳輪は、少女らしくほどよくふっくらと膨らんでいた。
「くぅ」
 愛莉の表情が一瞬歪む。その瞳に浮かぶ感情の奔流―― 恐怖、諦め、そして何か別のもの―― を目にして、悠の胸に重い鉛が沈んでいくような感覚が広がった。
 橋田の指が愛莉の乳房を遠慮なく揉みしだいた。瑞々しい膨らみに食い込む老いた指から、明らかな所有欲が滲んでいた。桃色の乳首が転がされる。悠は喉の奥に胃液の苦みを感じる。
「おまえの仲間になるかもしれない後輩に、挨拶をしてやれ」
 促された愛莉は、少年を潤んだ瞳で見てくる。
「……小町【ルビ:こまち】愛莉です。白薔薇女子学院……高等部二年のしょ、処女奴隷としてご主人さまに飼って頂いております。あ、あうぅ」
 橋田が愛莉の股間をスカート越しに弄り回した。
「君もこうなれるんだ。いや、ならなければならん」
 老人の軋む声が、鋭い刃物のように悠の心を切り裂く。
 愛莉が小さく震えるのが見えた。その姿に、悠は自分の未来を重ね合わせる。逃れられない運命。選択の余地など、初めからなかったのだと悟った瞬間だった。
 橋田が愛莉の耳元で何かを囁くと、愛莉の頬が赤く染まり、目を伏せる。
「ゆ、悠香ちゃん……わたしの妹になってください」
「い、妹だって⁉ 僕は……」
「女として扱ってやるし、立派な牝奴隷になれるように躾てやる」
 会長の酷薄そうな唇が歪んだ。
「……」
「悠香。おまえの新しい人生の幕開けだ」
 悠は震える身体を抱きしめた。目の前で繰り広げられる光景と、これから自分が歩む道。その全てが、悠の中で激しい嵐となって渦巻いていた。
 父親の姿が視界の隅に入る。うなだれ、肩を落としたままで、一言も発しない。
 部屋の空気が重く、悠の呼吸を押しつぶすかのようだった。逃げ出したい。だが、行く宛などどこにもない。

 3

 悠は目を閉じ、ゆっくりと女物のパンティを脱いだ。冷たい空気が肌に触れ、悠は身震いした。全身の毛穴が開いたような感覚に襲われる。
「足を開いて」
「……はい」
 女医の冷たい指が悠の恥丘部に触れる。その感触に、悠は思わず身をすくめた。
「いいわね。ツルツルのままね」
 悠は唇を噛んだ。
(夏が来て、プールの授業が始まったら……僕はどうしたらいいんだ)
 不安が胸を締め付ける。クラスメイトに見られたら、どう説明すればいいのか。考えるだけで胃が痛くなる。
「じゃあ、お尻を向けて」
 女医の声に、悠は震える足で体を回転させた。診察台に手をつき、背中を丸めた姿勢になった。これ以上ないほど無防備な状態だ。悠は目を強く閉じた。
 看護婦が注射器を手渡す音が聞こえた。
「可愛い女の子へ性徴するための女性ホルモン注射よ」
 女医の言葉に、悠の心臓が激しく鼓動した。自分の意思とは関係なく、女体へと変えられていく。その恐怖が、悠の全身を包み込む。
「あ、ああぁ……」
 注射の痛みよりも、自分の体が変えられていくことへの恐怖が大きかった。冷たい液体が尻肉に入っていく感覚があった。それは、悠の人生そのものを変えられていく悪魔の薬液だ。
 これで三回目の投薬だった。
 恐れていた身体の変化が先週から現れ始めていた。肌の質感が変わり、胸の内側が疼くような違和感を覚え、乳首のサイズも大きく膨らみ始めていた。悠は目を閉じ、涙をこらえた。
(なぜ僕がこんなことを……)
 心の中で叫んだ。しかし、その叫びを聞く者はいなかった。静寂な診察室に、悠の抑えた息遣いだけが響く。
「あ……あくぅ」
 診察室の冷たい空気が、悠の肌を這うように感じられた。消毒液の刺激的な匂いが鼻をつく。
 女医が冷たい目で悠を見下ろした。その眼鏡の奥に潜む冷酷さに、悠は身震いした。
「準備はいいかしら」
 その声に、悠の全身が緊張で強張った。これから行われる処置への恐怖と、自分の意思とは関係なく女体へと変えられていく変化への絶望感が押し寄せてくる。
「お願いです……やめてくれ」
「女の子が男言葉を使ったらダメよ」
 悠の声はか細く響いた。しかし、女医と看護婦の表情は変わらない。彼らにとって、これは単なる仕事なのだ。人間の尊厳や感情など、この部屋では何の意味も持たないことは痛いほど知っていた。
 看護婦が器具を準備し始める音が、悠の耳に鋭く突き刺さる。金属の冷たい光が目に入り、悠は思わず目を閉じた。
「今回は特別よ」
 女医の声に、何か期待のような感情が混じっている。
「会長さまのご要望だもの」
「うぅ……」
 その言葉に、悠の心臓が早鐘を打つ。
 橋田会長。悠の人生を根底から覆した張本人。父の過ちの代償として、悠は自由を奪われ、この非人間的な扱いを受けている。
 悠は天井を見つめ、目に涙が溢れるのを感じた。白い天井が、悠の視界でぼやけていく。この状況から逃れる術はないのか。そう考え続けているが、解決策は何一つない。
 看護婦が悠の胸板を消毒する。
「先生、用意ができました」
「では、始めましょう」
 女医の声と共に、悠の体に触れる冷たい手袋の感触。悠は目を強く閉じ、歯を食いしばった。
「痛いかもしれないわよ」
「今日は少し違うものを使うわ」
 女医が続ける。
「今までの生理食塩水じゃなくてね」
 悠の目が恐怖で見開かれる。いつものように点滴台が用意されていなかった。慣れ親しんだ恐怖でさえ、ある種の安心感があったのだ。しかし、未知のものは新たな不安を呼び起こす。
「ヒアルロン酸ですよ」
 看護婦が説明し、薬液が入った注射器を何本も並べてみせた。
「変なものを入れないで……」
「女性もプチ豊胸で使うものですし、このヒアルロン酸は新開発の高級品で自然な思春期の弾力ある乳房になるんですよ」
 その説明に悠は眉間に皺を刻んだ。知らない言葉だったが、少なくとも「酸」という単語は聞いたことがある。きっと、これも生理食塩水と同じように、一時的なものなのだろう。悠は心の中でそう自分に言い聞かせた。
(……一週間後には、きっと元に戻る)
 その小さな希望が、悠の心の支えとなった。たとえ今は辛くても、いつかは終わる。そう信じることで、悠は目の前の現実に耐えようとした。
「効果は生理食塩水より長続きするわ」
 女医が無造作に付け加えた。
 その言葉の真の意味を、悠はまだ理解していなかった。無知が生んだ希望は、時に残酷な結果をもたらす。しかし今はまだ、その事実から目を背けることができた。
 処置が始まった。
 悠の薄い胸板が、少しずつ膨らんでいく。内側から盛り上がり、乳輪も前にぷっくりと押し出され、乳首も尖っていく。
(一週間……ゴールデンウィークが終わったら、また元の僕に戻るんだ)
 目を閉じて願ったが、胸に少年にはない重みを感じだす。時間が経つにつれ、悠は現実から少しずつ遠ざかっていくような感覚に襲われた。自分の体が自分のものではなくなっていく。それは、まるで悪夢のようだった。しかも、目を覚ませば元に戻るような甘い現実ではない。
「終わったわよ」
 女医の声が遠くから聞こえてくるように感じた。悠はゆっくりと目を開け、天井を見つめた。何かが決定的に変わってしまった。それを、体の感覚で痛いほど感じ取れた。
「鏡を見てみる?」
 看護婦が甘ったるい声で言う。
 悠は首を横に振った。自分の姿を見る勇気はなかった。それを見てしまえば、全てが現実のものとなってしまう。今はまだ、わずかな現実逃避の余地が欲しかった。
「見てみたほうがいいわ。ほら、今まで一番女の子っぽいわよ」
 悠の前に姿見が持ってこられた。
 そこには診察台に座った見知らぬ少女がいた。顔立ちが整った少女は裸だった。耳が見え隠れする髪を揺らし、何かを否定するように顔を左右に振っていた。
 そのたびにお椀型に膨らんだ見事な乳房が揺れていた。見事なまで白い乳房に桜色の乳頭が起きていた。そこには少年の面影はなかったのだが、股間には悠の象徴が縮こまっていた。
 悠は自分の体を見た。そこには悠が密かに恋する同級生のほのかよりも可憐な美少女がいた。
 名を悠香という。
 今晩、セックス用の奴隷となる。

 4

 渋谷のバスターミナル。
 ゴールデンウィーク目前の喧騒が渦巻く中、悠香はひっそりと立っていた。周りの人々の楽しげな会話や、休暇への期待に満ちた表情とは対照的に、悠香の目は虚ろで、肩は重く落ちていた。
 長距離バス乗り場には、様々な目的地へ向かうバスが並んでいる。家族連れ、学生グループ、カップルたちが、それぞれの旅への期待に胸を膨らませている。その日常の光景が、悠香の置かれた状況をより一層異質なものに感じさせた。
 奥まった場所に、他のバスとは明らかに異なる高級感を漂わせたバスが止まっていた。外観は洗練され、ブラックフィルムで内部が見えないようになっている。それは、悠香の目的地である軽井沢の会員制ホテルへ向かうバスだった。
(ここで違うバスに乗って、どこか遠くに逃げられたら……)
 一瞬、そんな考えが悠香の心をよぎる。しかし、それが叶わぬ夢であることを、悠香は痛いほど理解していた。重い足を引きずるように、指定のバスへと向かっていく。
 バスの入り口に近づくと、中年の男性が立っていた。運転手らしい。
「新入りはお嬢ちゃんだな」
 その視線に悠香は身震いした。自分が着ているのは、通っている中学の女子用制服だ。ネイビーのブレザーにチェック柄のスカートという姿である。ブラウスの胸元は双つの膨らみが作られていた。
 完全に女子として認識されている証拠だった。
「名前は?」
「蒼井……悠香です」
 かすれた声で答えた。
「へぇ。十四歳か……金持ちの殿方は、因果なことをなさる」
 名簿を確認する運転手は、言葉とは裏腹に卑屈な視線を向けてくる。
「……」
「ほら、お嬢ちゃんで最後だ。入んな。入んな……天国に連れて行ってやるよ」
 バスの中に足を踏み入れると、薄暗い内装が目に入った。高級感のある内装、柔らかな座席。そして、すでに乗り込んでいる人々の気配を感じた。
 悠香の目が慣れてくると、十代前半から二〇代後半くらいまでの、美しい女性たちの姿が見えてきた。人数は十名ほどだろうか。彼女たちの表情には、悠香と同じような影が落ちていた。
(ぜ、全員……女性だよな……僕だけが……)
 ランドセルを抱えた美少女も座席にいて、啜り泣いていた。
 空いている席を探して悠香はバスの後部へと向かった。足取りは重く、まるで鉛の靴を履いているかのようだった。
 後部のボックス席に近づくにつれ、そこに座る人々の姿がはっきりと見えてきた。最初に目に入ったのは、異彩を放つ少女だった。
 圧倒的な美貌の持ち主で、ハーフのように彫りが深かった。大きな瞳、優雅な鼻筋、艶やかな唇。その美しさは、まるで人形のようだ。金髪に近い明るい茶髪は、美しく波打っていた。
 異質だと思ったのは、彼女だけが座席にふんぞり返り、長い脚を組んで座っていたからだ。
「新入りちゃん、こっちこっち」
 予想外に明るい声に悠香は一瞬戸惑った。
 声の主である美しい少女の口調には、微かな皮肉が感じられた。優雅な仕草で悠香を招き入れる様子に、どこか高慢さが漂う。
 その隣には、悠香が一月前に会ったことのある可憐な女子高生が座っていた。確か名前は愛莉だったはずだ。母の葬式に参列していた彼女の姿を、悠香は鮮明に覚えていた。黒髪が特徴的な日本人離れした美少女。大きな瞳には深い悲しみが宿り、肩を落として項垂れている姿が、辛酸な人生を歩んできたことを物語っていた。
 悠香がボックス席に腰を下ろすと、柔らかなシートが体を包み込んだ。しかし、その快適さとは裏腹に、心の中は氷のように冷たかった。
 座ると同時に、もう一人の存在に気づいた。大人の女性だった。二〇代半ばといったところか。知的な雰囲気を漂わせる美人だが、その表情には愛莉と同じ種類の深い諦めが刻まれていた。
 彼女は白いブラウスを着ていたが、その胸元はボタンが弾け飛びそうなほど前に突き出し、ブラジャーの柄まで浮かび上がっていた。また、ブラウスのデザインは体の線に沿って張り詰めており、窮屈そうに見えた。ベージュ色のタイトスカートは股下数センチで、動きを制限しているようだった。そして、ハイヒールというファッションだった。全体的に、その服装は彼女の立場を暗示するかのように、不自由さを感じさせるものだった。
 バスのエンジンが始動し、ゆっくりと動き出す。悠香は目のやり場に困り、窓の外を見た。渋谷の街並み、行き交う人々の姿。日常の光景が、まるで別世界のように感じられた。
 女子高生の集団が楽しそうに話しながら帰っていく姿が目に入る。
 美しい少女が、その光景を見つめながら呟いた。
「あの娘たちって、きっとカフェとかで遊びにいくのよ。それで家に帰ったら、家族が温かいごはんを用意しているんだわ」
 その言葉に、悠香の胸が締め付けられた。もう二度と戻れない日常だ。失われた家族との幸せな週末の時間。それらが、一瞬にして悠香の脳裏を駆け巡った。
「ほらほら、みんな辛気臭い顔しないのよ」
 ボックス席には悠香を含めて四人いた。机の上には、まるで普通の旅行でもあるかのように、ジュースが置かれている。その日常的な光景が、かえって状況の異常さを際立たせていた。
 美しい少女が自己紹介を始めた。
「私は夏帆【ルビ:かほ】。愛莉とは同じクラスで、こっちの大人の女性はうちの学校のセンセー。ほら、ふたりともぼさっとしてないで自己紹介なさいよ」
 夏帆の命令口調に、愛莉と大人の女性は身を縮めるように小さくなった。夏帆の目には、他者を支配することへの喜びが浮かんでいる。その視線が悠香に好奇として向けられているのを感じ、悠香は背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「……奴隷教師の水原夢子【ルビ:みずはらゆめこ】です。奴隷番号六百三十八号……二十四歳の……牝ブタです」
 夢子の声は震え、言葉の端々が途切れがちだった。
「愛莉です……悠香ちゃん……ひと月ぶり……ね」
 愛莉は悠香の顔を見て、驚いているようだったが、それ以上のことは言わなかった。
 夏帆が再び口を開いた。その言葉一つ一つに、意地悪な響きが含まれているようだった。
「二人はセックス用の奴隷……と言っても愛莉は、ホテルで数人しかいない処女奴隷。悠香ちゃんと初めてだから教えてあげるけど、奴隷には二種類いるの」
「二種類……」
 思わず聞き返してしまうと、夏帆が説明を加えた。
「愛莉のように特定の御主人さまに使える所有奴隷。悠香ちゃんもそうなるんでしょうね。橋田会長さまはとってもアブノーマルな方だから、悠香ちゃんはどんな恥ずかしい肉人形【ルビ:セックスドール】に躾けていただけるのかしらね?」
「……」
 絶句するしかなかった。
 しかし、夏帆の説明は止まらなかった。
「そして、所有奴隷に対して、夢子センセーは特定の御主人様を持たない貸出奴隷。毎回、オークションで落札されて、毎週違うご主人さまにお使えするの。そして、私も貸出で会員さまのサポートをするけど、二人のようにセックスもするけど、メインは調教補佐の女王様候補生だから、悠香ちゃんだっけ? たっぷりとイジメてあげるチャンスあると思うわ」
「ひぃ!」
 悠香は思わず悲鳴をあげそうになった。喉まで出かかった声を、必死に押し殺す。
 バスは高速道路に入り、軽井沢へと向かって走り出した。車窓から見える景色が少しずつ変わっていく。都会の喧騒が遠ざかり、緑が目に入るようになってきた。しかし、その美しい風景さえも、悠香の心を慰めることはできなかった。
「乾杯しましょう」
 夏帆が悠香に無理やりコップを持たせた。
 悠香の心の中で、不安と恐怖が渦巻いていた。これから自分がどんな目に遭うのか。どんな屈辱を味わうことになるのか。考えれば考えるほど、恐怖が増していく。

 5

 バスは軽井沢の山々を縫うように進み、やがて隔絶された場所にある会員制ホテルに到着した。
 悠香には収容所のように思えた。ここが自分の週末の「生活」の場所になのだと思うと、息が詰まりそうだった。窓の外に広がる美しい自然の景色とは裏腹に、バスの中の空気は重く、張り詰めていた。
 駐車場にはすでに同じようなバスが八台ほど停まっていた。その光景に、悠香は自分だけがこの状況に置かれているわけではないことを痛感した。夏帆が冷たい笑みを浮かべながら説明を始める。
「各地から同じように週末になると、私たちのような人たちが運ばれてくるのよ」
 その言葉に、悠香は背筋が凍るのを感じた。全国規模で行われているこのシステムの規模の大きさに恐怖を覚える。自分がいかに小さな存在で、この巨大な仕組みの中でいかに無力であるかを思い知らされた。
 バスから降りる際、悠香は足がすくむのを感じた。新鮮な山の空気は都内よりもずっと冷たかった。
 夏帆が意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
「じゃあ、私たち貸出組の入口は裏口だから、所有奴隷のお嬢様さまがたは、正面エントランスより入って受付をしてくださいませ」
 その言葉に含まれる皮肉と優越感に、悠香は胸が締め付けられる思いがした。自分たちが「所有奴隷」と呼ばれる存在であることを改めて突きつけられたのだ。
 悠香と愛莉は、言われるがままに正面玄関へと向かった。足取りは重く、まるで処刑場に向かうかのようだった。しかし、目の前に広がるホテルの外観の美しさに、一瞬だけ現実を忘れそうになる。
 ホテルはまるで絵画から抜け出してきたかのような美しさだった。ヨーロピアンスタイルの建物は、周囲の自然と見事に調和していた。しかし、その美しさが、これから起こる出来事の残酷さを際立たせているようにも感じられた。
 エントランスに近づくにつれ、その広さに圧倒される。大理石の床、シャンデリア、優雅な調度品。しかし、その豪華さとは裏腹に、悠香の心は沈んでいった。この豪華さの裏に隠された真の目的を考えると、吐き気を催しそうになる。
 エントランスには、すでに何人もの少女たちが列をなしていた。悠香は驚いた。そこにいる全員が、様々な学校の制服を着ている。全国の名門校の制服が勢揃いしているかのようだった。その光景は、一見すると修学旅行か何かの集合のようにも見えたが、少女たちの表情には明らかな恐怖と緊張が浮かんでいた。
 悠香は自分の姿を見下ろした。自分も女子の制服を着ている。周りを見回しても、男子の制服を着ている人は一人もいない。その事実が、悠香の心にさらなる重荷を与えた。自分が男であることを隠さなければならない状況に、深い屈辱感を覚えた。
(もし……男だってバレたら……)
 愛莉に倣い列に並びながら、悠香は周りの少女たちの表情を観察した。みな美しかったが、その目には深い影が宿っていた。笑顔を浮かべている子もいたが、それが作り物だということは一目で分かった。その偽りの笑顔の裏に隠された恐怖と絶望を、悠香は痛いほど理解できた。
 そして、視線を感じ見上げると、半円状に二階が吹き抜けになっていた。
 エントランスを見下ろせる二階部分にはカフェスペースがあり、すでに会員たちの姿が見えた。中年や初老の男が八割で、何名か着飾ったマダムもいた。その光景に悠香はますます不安を感じる。会員たちの中には、すでに自分の「所有物」を従えている者もいた。
 テーブルの上で開脚させて座らせ、秘部をチェックする者。
 エントランスを見ながら、裸の女を床に座らせ股ぐらに奉仕させる者。
 その様子に、悠香は目を背けたくなった。
「……」
 悠香は震えてしまう。その時、愛莉がそっと手を握ってきた。その温もりが、わずかな慰めとなった。
「これから……僕たちどうなるの?」
 悠香の声は震えていた。
 愛莉は直接的な回答こそしなかったが、小さな声で言った。
「今回はゴールデンウィークで長いけど……普段の週末は三日間。三日間の我慢だから、我慢はできるわ……」
「ぼ、僕……怖いよ」
「悠香ちゃん。これからは自分のことは、私か自分の名前で言うのよ。私も処女奴隷・愛莉みたいな蔑称が何個かあるから……ご主人さまには、そう自分のことを言うの……いい?」
「うぅ……嫌だよ」
「嫌なんて言ったらダメだからね。私たち奴隷に嫌なんて権利ないから……ね。いい子だから、慣れるしかないのよ」
 愛莉は懇切丁寧に悠香に語りかけてくれた。
 それはまるで自分に言い聞かせるようだった。悠香は愛莉の手をきつく握り返した。二人の間に言葉はなかったが、互いの不安と恐怖を共有していた。その沈黙の中に、これから待ち受ける試練への覚悟が垣間見えた。
「次、渋谷発組」
 その呼び出しの声に、悠香と愛莉は身震いした。二人は震える足で受付に向かった。受付には、美しい女性が立っていた。しかし、その目には感情が欠けていた。まるで人形のような、冷たい美しさだった。
「奴隷番号と、お名前は?」
「奴隷番号七〇四号・藤枝【ルビ:ふじえだ】愛莉。こっちは私の妹奴隷になる奴隷番号七二一号・蒼井悠香です」
「自分で答えてください」
「……蒼井……悠香です」
 その瞬間、自分の本当の名前を失ったような感覚に襲われた。
 受付嬢は二人の写真をタブレットで撮ると、他の受付嬢がトレイに載せた物を持ってきた。
 革製の首輪が載せられていた。太くてゴツく、まさに家畜の首輪であった。純金製のプレートが打ち付けられており、そこには、『AIRI』、『YUUKA』とそれぞれの名前と奴隷番号が刻まれていた。
「お間違えありませんか?」
 受付嬢の問いに悠香は小さく頷いた。
「では、奴隷会員登録をしますので、一度手に持ってご確認ください」
 差し出された首輪は、ずっしりと重みがあった。その重さに悲しくなり、すぐにトレイに戻した。
「……」
「では、登録を読み上げます」

 奴隷情報
 奴隷番号:721号
 所有者:橋田重蔵さま
 奴隷:蒼井悠香
 年齢:十四歳
 所属:私立小石川学園中等部三年
    テニス部
 ホテル施設利用制限
 一般トイレ:使用禁止
 牝奴隷用公開トイレ:使用可
 貸出:応相談(決定権は所有者が有する)

「続きまして、愛莉お嬢様もご確認ください」
「……はい」

 奴隷情報
 奴隷番号:704号
 所有者:橋田重蔵さま
 奴隷:藤枝愛莉
 年齢:十七歳
 所属:私立白薔薇女子学院高等部二年
    新体操部
 ホテル施設利用制限
 一般トイレ:使用禁止
 牝奴隷用公開トイレ:使用禁止
 貸出:応相談(決定権は所有者が有する。ただしアナルセックスのみ)

「では、愛莉お嬢様は当施設のすべてのトイレの仕様は禁止なので、隠れて入ろうとすると首輪から電気刺激が走りますのでお気をつけくださいませ。いつものようにオマルをお部屋にご用意しております」
「あ、ありがとうございます」
 愛莉は頬を赤く染めて頷いた。
「では、登録を完了します」
 受付嬢がタブレットを操作する。
「これで、愛莉お嬢様に続き、悠香お嬢様も正式に奴隷会員となりました。首輪はお嬢様たちの身分証明書となりますので、当ホテルをチェックアウトするまで着用を義務付けます」
 愛莉と悠香は首輪は嵌められると、南京錠で外れないように施錠されてしまった。





追記
リハビリ作品。あと、消されるかチェック中。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?