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両手を合わせて宙を拝む

仕事が休みだった先週の水曜日に、実家の掃除に行き、そのあとで姉と一緒に母のお見舞いに行きました。

去年の終わり頃から認知症が進み、もう一人で暮らせませんと認定されてすぐに施設を見つけて入ったのが3月。
「施設の人はとても親切だ」
と喜んでいたのも束の間、わずか3週間で救急搬送されてしまった。
肺の半分くらいに膿があり、その他諸々あって。
もう退院することは難しいと医師に宣告されていて。

だけど水曜日の母は違った。
あれ?
もしかして退院できるんじゃない?
とこちらが驚くほど元気で。
私たちの顔を見るなり、
「看護婦が意地悪をする。ここを出たい」とのたまった。

「うむ。そうか。それはまあ君の体が悪くて治療したいがためにしていることであり、看護婦さんに悪意はないのだ。よって我慢したまえ」
と諭す娘二人。
だいたい一時は声も出せなくなっていたのに、そんなに暴言を吐けるくらい元気にしてくれたのはこの病院の人達ぞ!
である。

そのうち機嫌が治ったので、12年前に亡くなった父が手入れをしていた庭が荒れ放題だったのを、鎌を手にかなり手を入れたら、雑草やら蔦植物に覆われた庭から、藤や躑躅や石楠花や芝桜などが発掘(本当に何重にもなっていた蔦植物を刈りまくって見つけ出した)した話を伝えた。

すると途中から、明らかに母が私の上方を見始めて。そのうちだんだん遠い目になって。
私たちは何も話していないのに、まるで誰かの話を聞いているみたいに静かに宙に向かって、こくん、こくんと頷きはじめた。

んん?
これはもしや?
とそっと見守る。

そんなふうに母は数回宙に頷いたあと、急に強い目になって私たちのことを見るなり、
「巡り合わせ」
と唐突に言ったのです。

なに?
どう言う意味?
と聞くと、
「出会ったこと」
とニヤリって感じで答えてきて。
「誰と誰が出会ったこと?」と聞いたのですが、ニヤリとするだけで答えてくれなくて。
あのニヤリ顔をしている母は意地悪バージョンなので、絶対に質問には答えない。
なので私たちはそれ以上聞くのはやめまして。

これは憶測ですが、その前に私が話していたのは、
「前回庭の枯れ木を片付けておいたら、今日は庭にきれいに花が咲いていたよ」ということ。

それを話したときに、ニコニコわらって「ありがとう」みたいな言葉を発してから宙を見つめだしたので、
荒れた庭の手入れをするよう子ども達と出会ったのは、「出会うべくして出会った巡り合わせなんだよ」とかなんとか神様的な存在に言われたのかな、と。

都合のいい勝手な憶測ですが(笑)

普通に戻ったのでまた別の話をしていると、再び遠い目になり宙に向かってまた頷きはじめて。
これは、私たちの後ろに立っているどなたかが、母に何かを伝えているんだなーと、そっと見守りまして。

するとしばらく、そのどなたかとやり取りした後、母は恍惚とした顔をしたかと思うと、やにわに両手をすーーーっと上に上げてきて。

何をするんだ?
(まさか、この角度は???)

とドキドキしながら見ていると、両端から真ん中に向かって手のひらをどんどん近づけて、最後はゆっくりと少し高い位置で両手を合わせて、何かに拝むように静かに目を閉じました。

ああ、やっちまった!

これは、ガチで現実界と向こうの世界が同じ世界線になっている人だ!と。
いわゆるお迎えが来ている人がしちゃう現象ですよね?的な。

うむ。

体はここにあるけど、意識は半分くらい向こうに行っているのかなぁと。

後ろにいるのは祖父や父などの身内なのか、守護霊なのかなんなのか聞いておこうと
「神様みたいな人がいるの?」
と聞くと、母は向こうの世界にいる意識の顔のまま、こくんと頷きます。
「その人は何かを話しているの?」
と聞くとまた、こくん。

で、
「その神様みたい人は,なんて言っているの?」
と、聞いた途端に、
はっ!!!!!
と擬音が聞こえるくらい我に返った顔をして。

あ、今の質問で現実に帰ったなーと(笑)

現実に戻った顔をした母に改めて、
「その人は何か言ってたの?」
ともう一度聞くと、

え?
何のこと?
みたいな顔をしていて。

あ、覚えていない的な?

なんだか不思議な現象だったな。

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