樫 櫻月

好きなものを書きます。不定期更新となりますがよろしくお願いいたします。(※noteに投…

樫 櫻月

好きなものを書きます。不定期更新となりますがよろしくお願いいたします。(※noteに投稿した創作物すべての無断転載、自作発言等を禁止します) アイコンはノーコピーライトガール様よりお借りしました。

マガジン

  • 日記のようなもの

    備忘録です。

  • 自作の詩をまとめています。

  • 創作小説

    3000字くらいの短編小説です。

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学生生活が終わってしまったね

春の匂いがしたから無性に泣きたくなった。窓辺に置かれた勉強机に座って私は今、この文章を綴っている。小学校への入学と同時に買ってもらった一式の机とランドセル。重たい教材をはち切れそうなほどに詰めていた通学鞄は年齢を重ねて学校が変わるたびに新調されていったけれど、木材で作られたこの机はいつまでも部屋に鎮座している。 窓辺から差し込む陽光のあたたかさに絆されていたい。細かな傷が刻まれた木の表面を撫でてみる。これまでの生活を振り返るのに、今日という一日はあまりにも最適です。 太陽

    • 本棚の隙間で眠る

      本を読む行為と同じくらい、本の背表紙を眺めたり、書影を観察することが好きです。だから本屋や図書館に行くときはひとりがいい。 棚を何周も繰り返し往復して、感性のアンテナに従ってひたすら歩く。 「これしかない」と思えるような一冊と出会えるまで誰もわたしを止めないでくれ。視界の端に映った小さな信号を絶対に見逃したくないと思いながら彷徨っています。 イヤホンで雑踏を遮断して本棚の間で呼吸をすると、世界から切り離されていく気がする。手足の感触や支離滅裂な思考が沈んでいく過程は冷凍睡

      • わたしだけの言葉を獲得する

        最近、Instagramの投稿を始めました。最近といってもアカウントを作成したのが10月の半ばだったので、稼働してからは約三か月が経過したようです。 いつも投稿をみてくださる皆さま、改めてありがとうございます。 何かにつけて文章を書きすぎてしまう悪癖があるせいで、限られた感想欄を言葉で埋め尽くす満足感にいつも飢えていました。読み聞かせの感想を求められたとき、先生に止められるまで話し続けるような子どもだったし、読書感想文を書くのが楽しくて堪らなかった。誰に求められていなくても

        • 思考の渦に揺蕩う

          浴槽に沈む肉体を眺めるのが苦手です。だから入浴剤に縋って、喩えようのない気味悪さを溶かしている。鏡に映る裸体を見ても別に嫌悪感などなく、ただぼんやりと「これが自分の身体なのだ」と思う。思うのに、剥き出しの肉体が湯船に浸かると何故だめなんだろう。自分でも不思議です。 手のなかで炭酸を撒き散らす塊はとめどなく泡を吐き出して、溺れるみたいにその形を崩していく。陶器のようなまろやかさで包んでくれてありがとう。おかげで今夜も風呂に入れました。心の内でそう呟くたびに胸がきゅっと詰まる。

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        学生生活が終わってしまったね

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        • 日記のようなもの
          20本
        • 12本
        • 創作小説
          3本

        記事

          誰かの人生の背景になりたい

          年末のスーパーは賑やかな喧騒で満ちている。鮮魚コーナーで流れている謎の歌とか、買い物カゴにビール缶を積んでいるカップルの後ろ姿とか、長蛇の列を形成するレジを捌いていく店員さんの手際の良さだとか。そういった年末を構成する何気ない要素が、やけに眩しく映る一日でした。 名前も知らないすれ違っただけの誰かにも生活や思想があって、その人の日々の営みの一コマに「わたし」という人間が端役として、もしくは風景の一部として登場している事実を改めて考えると不思議な気持ちになります。 肌を刺す

          誰かの人生の背景になりたい

          血まみれになって生きる

          年末の大掃除をどうにか始められたのに未だ半分も片付けが終わっていません。三日坊主で終わったエッセイ(のようなもの)を続けたいと思ってはみたものの、気づけば昨日はとうに過ぎています。仕方がないので、本棚から引っ張り出してきた漫画と小説が無限に蔓延る部屋の床で文章を書いていこうと思います。 捨てる、という行為に付随するすべてが苦手です。切り分けたピザの最初の一枚をどれにするか。コンビニに並んだ二つの新商品のうちどちらを選ぶか。日常のありとあらゆる場面で一方的に与えられる選択肢の

          血まみれになって生きる

          一過性の愛着

          「ふしぎ時間」という名前の響きがとても好きでした。小さなゲーム画面の向こう側に存在する愉快な世界。その世界のすべてが紫色で埋め尽くされるたびに町中を全速力で駆けていた。現実と切り離された魔法の365日は、今でも変わらずにわたしを受け入れてくれるだろうか。 売ったカセットを取り戻したくなった。あの非日常があんなに大好きだったはずなのに、どうして簡単に捨ててしまえたんだろう。 思い出ばかりが懐かしく蘇るせいで、当時の心境を全く覚えていない自分に上手く気付けなかった。広場で歌った

          一過性の愛着

          でもそれなりの才能で、俺は俺を救ってやろう

          さよならポエジーというバンドの「二束三文」という曲に、youtubeで偶然出会ってしまったその日から、わたしの脳内でずっと、この歌詞が、歌声と音楽が、繰り返し繰り返し流れている。心臓の鼓動みたいに絶え間なく。 どうしようもない自意識の捨て場所を探して東京の街を歩き続けている、というような一文をピース又吉さんのエッセイで読んだ気がしたのだけれど、どの本だったのかを未だに思い出せない。 自己の内面を持て余して、上手く飼い慣らせないままに苦しみながら生きている人間の強さがとても

          でもそれなりの才能で、俺は俺を救ってやろう

          会いに行く。

          旅行先の、どこかの喫茶店で注文したらしいクリームソーダとモンブランを投稿している人が居て、私と同じ大学にいてSNSで繋がっているのに一度も話したことのないその人と卒業するまでに直接会ってみたいなあ、と最近はよく思うようになった。 厳選された日常をこまめに投稿している人だった。そんな風に、本人の手によって区切られた日々越しに人間性を垣間見ることが私は結構好きだ。丁寧に加工された写真を通じて、勝手にその人のことを知ったような気分になるのは面白い。外界に向けて、この人はこういう自

          会いに行く。

          【詩12】縫合

          前世を硝酸に変えている。頬骨に透き通ったネジ穴があるせいで、その隙間を満たすための宝石を何光年も見失ったままだ。くらげが宙を泳ぐ日にきみは生贄になる。わたしの嘴は嫋やかに脊椎を裂いて、それでも決して、ここから溢れ出る花束を抱えることができない。だから代わりに口付けをする。 生き別れの双子みたいに、散り散りの小指を縫い合わせよう。乾燥した鼓動からは波の音がするし角の生えた虻は王様になれない。人類はきっと世界に殺されていくんだ。きみも、わたしも、愛の粒を飲んで産まれたから。

          【詩12】縫合

          祈りながら笑っています

          ひとりぼっちを咎められない環境がきちんと用意されていることに、心の底から安堵している。 プール終わりの教室の雰囲気や正午の郵便局の様子を、とても素敵な文章で書いた呟きを以前読んだことを思い出して大学の空きコマの空気感もそれらに近いものがあるなと改めて感じた。 あの文章を書いた人が誰だったのかを私は知らないし、おそらくその人も誰かがこんな風に呟きを話題にしているとは思っていないはず。 私の言葉もいつか誰かに届くだろうか。届いてくれたら幸せだと思う。 色んな理由を付けて遠ざけ

          祈りながら笑っています

          瞼を閉じて歩く

          出来ることなら毎週カラオケに行きたい。誰かとじゃなく、ひとりで。好きなバンドのライブを爆音で流してスピーカーから伝わる振動が壁越しに私を揺らす、あの感覚。あの感覚をいつでも胸の中に飼っていたいと思う。 公共図書館の窓から見える風景は、どこかのっぺりとしている気がする。 パソコンのタッチ音や秒針の音がやけに響くせいで、音楽を聴かなくたって余計な思考で脳が溶けていかないのが嬉しい。淡白な日常にはBGMが必須だし、脳内のひとりごとを掻き消すような瞬間ばかりを集めていたい。 家か

          瞼を閉じて歩く

          日記のようなもの

          両目に突き刺さる太陽の眩しさは何年経っても衰えてくれない。むしろ歳を重ねるごとにその光は暴力性を増して私の肌と心を容赦なく焦がしていく。今日も電車に乗れませんでした。玄関を開けて、足を一歩踏み出した途端に失われてしまう安全地帯を惜しむ間もなく脳の喧騒がやまない。 つい先週新調したばかりのBluetoothイヤホンを装着しながら、御守りのように音楽を聴いている。変身ベルトみたいなものなんだ。それがあればほんの少しだけ強くなれる気がする。充血した瞳に無理やり入れたコンタクトや、

          日記のようなもの

          【詩11】埋まらない虫

          言葉が埋まらないから虫だ。大好きの意味を知りたいわたし。 ひっくり返しています砂漠を。 蒼色が濃くなる春の空。十代を費やしてスカートを汚す。 血まみれになってまで笑っていないといけないんですか。免罪、免罪、免罪です。それもきっとぜんぶ詭弁。埋まらないから虫のまま。あなたたち一生虫のまま。深海の底で若木を切る、十代を費やして呪ってくれ。 あなたの孤独は消耗品。美しくないから摩耗する。それでも確かに色付いて、生きているなら永久歯。 溺れなくてもいいんだよ、の、ひとことがなくた

          【詩11】埋まらない虫

          【詩10】祈りは投影、そして透明。

          許されないから、花を食む。 澱んだ空と瞳の奥で無機質な涙に色を付けるのは君の仕事。夜明けを忘れた街。思い出を飼い慣らしているせいで指先が喉元を巣食っているのです。 祈りは投影、そして透明。 狂い続けていないと正気を保てない。世界の終わりを待ち望んでいるのに、散っていくものばかりが綺麗に光ってずるいよ。 人間の体温は生温く。研ぎ方を忘れた鋏みたいな鼓動を持っている。 教室の隅から逆襲を始めます。 仮面の底まで墜ちる勇気を聴かせて。君の悲鳴はいつでも美味しい。崩れた果実のよう

          【詩10】祈りは投影、そして透明。

          【詩9】神話になるまで

          かわいい闇を抱いて眠るのです。世界の人称は未だ誰も知らない。 網膜に張り付いた焦燥を、いちまい、いちまい、剥がすように魂が窒息。 転げまわる昨日の道標には石を。からんころんと心が鳴る。その音に耳を、すませば、きみは今すぐにでも地球の呼吸を止められるのだって。 文字を泳ぐように歌う人の瞳。唆された蠍が住んでいる。毒を吐いているのは、ほんとうは言葉でも唇でもなくて、その眼差しだった。産まれた瞬間から轟く鍵盤を撫でるように血液を飲み干した。人を刺すのは楽しい? 爪先は甘く、頬骨に

          【詩9】神話になるまで