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痺れちゃうくらいに怖くてさ

2.40m
ぱっと見はただ規則性なく数字が並んでいるようで。
でも、その高さのネットと向き合った人には、見慣れた数字。
2.43m
これもまた、ピンと張られる白帯の高さ。
それを挟んで繰り返されるボール1つの攻防。
けど、この高さは全国の舞台でしか、使われない。

このわずかな3cmの違いに、汗と涙と、それから青春が詰まってる。

壁井ユカコ原作TVアニメ「2.43 清陰高校男子バレー部」


実は原作小説からのファンだったもので、アニメ化決定してからずーーーっと楽しみにしてた作品でもありまして。

福井の高校を舞台に、男子バレー部が全国大会を目指すストーリーは某少年ジャンプのマンガを彷彿させるけど、キャラクター設定がちょっと変わってて面白いの。主人公は黒羽祐仁、恵まれた体格と高い身体能力を持ったプレーヤーなのに所謂「本家のお坊ちゃま」の生まれの故、極度のあがり症。本番で全く実力が発揮できないっていう致命傷を抱えている。
そしてもう一人の主人公、灰島公誓。黒羽の幼馴染で、一度東京に引っ越してバレーボールを始めるとセッターとしての圧倒的な才能が開花。ただ、部内で起こったある事件をきっかけに祖母の実家がある福井に戻ってくることになる。

この2人「ユニチカ」コンビをメインに清陰高校のメンバーが春高バレー目指して奮闘していく小説をアニメ化した今回の「2.43」だけど、今回紹介したいのはアニメOP曲になっているyama「麻痺」

一度上の動画再生して聞いてみてくださいこの曲。yamaといえば「春を告げる」で知った人多いと思うんですが、この歌いだしもなかなか病みつきになりませんか?そして原作ファンからみてこの歌詞、正直シビれちゃいました。一つ一つ物語とリンクして、キャラクターの心情と共鳴して。OP曲としてこの上なくがっちりハマっているんだよね。

この感動を、みんなと共有したくて、note書いちゃった。
さっそく歌詞を一緒に追っていこうか。

どうしようか 逆境は慣れてないから
曖昧な覚悟しか出来てないよな
細胞が硬直し始めては
あんまりな未来を見せてくんだな

まずは黒羽サイドから始まる。「本家のお坊ちゃま」らしく、いざコート上に立った時のプレッシャーに押しつぶされそうな弱気が滲み出てる。

あの頃の僕ら ただ人を羨んでは
見えない何かに怒ってさ
片足で跨げる様な 段差をずっと睨んで
言葉も出なくて掻きむしっていた

続く歌詞は黒羽・灰島2人の中学時代が登場。「ユニチカ」コンビ結成前のひと悶着のエピソードが入ってくる。これまで何かに真剣に打ち込んだことがなかったから灰島を異質な存在に思えてしまう黒羽、東京の学校でバレーへの熱量の違いから仲間に見放されてしまい心に傷を負う灰島。言葉が足らずに衝突する2人が丁寧描かれてる。

残響が耳の奥でなってたんだな
苦しいよな独りで立ち向かうのは

よれたTシャツの裏 隠した弱い心
見えないフリをしていたよな
そこに刻まれたそれぞれの傷を
奈落の底まで連れて行かないか

サビを挟んだ部分は高校生になった黒羽から灰島へのメッセージ。2人が東京の学校での過去の真相を知る場面と重なる。難しい性格から誰に頼ることも出来なかった中学生の灰島の心境がここで明かされる。

壊れちゃうくらいに脆くても
強く愛を求めていた
このステージに立ってる意味を
今も忘れたくないよな

遥かに遠く飛んだ丸い太陽
紅蓮に光ってたいと願う僕らの様だな

サビのメロディにのせた歌詞は清陰高校のメンバーと共に再び「ユニチカ」コンビがコートに立ったシーン。今までいろんなことがあって、それぞれ倒れたり怖気づいたり。それでも一緒にバレーがしたいという純粋な気持ちで立ち上がった逞しい背中が見えてくる。

通り雨 貴方の頭上に落ちていく
「助けて」と聞こえた
それが嘘か誠かなんて

クライマックスに向かうこの歌詞は黒羽が「お前のエースになりたい」と宣言するシーンを思わせる。他人とのコミュニケーションが苦手で、誤解ばかり招いてきた灰島が、黒羽からまっすぐ手を差し伸べられる。

痺れちゃうくらいに怖くてさ
足が竦んで竦んでいた
その時 落ちた涙が今も忘れらんないよな

そしてこれまで触れてこなかった肝心のサビの部分だけど、冒頭・中盤・ラストの3回登場する歌詞はそれぞれ黒羽・灰島・2人の視点で歌われていると解釈した。黒羽は「コートに立ち人生初めての”緊張”を味わって、体が言うとおりに動いてくれない」様子。灰島は「過去のトラウマが思い出される状況で、チーム・相棒から見放されたくない」気持ち。そして2人はお互いにお互いの痛みを理解しあって「落ちた涙が今も忘れらんないよな」と確認しあい、前を向こうとする掛け声。

私を強くさせた貴方に捧げる
可憐なアタックに込めた素敵なバラードを

このワンフレーズは黒羽と灰島がお互いに送りあった言葉におもえる。いいよね、この「可憐なアタックに込めた素敵なバラード」。あくまで想いを込めるならプレーで、ってところが言葉足らずですれ違いを繰り返した2人がコミュニケーションの最適解であると気が付くの。

嗚呼 今 静かに心が燃えてたみたいだ

サビで曲がクライマックスに向かうと思いきや、ラストにセリフのようなささやきが残される。そうか、これは黒羽と灰島が2.43mのネットにたどり着くまでを歌っていたのだと、ここで明かされる。さあ、静かに心を燃やして2人は、いや清陰高校男子バレー部は緊張で埋まる体育館のラインに整列するのだろう。この一節があってこそ、ここから戦いが始まるんだと宣言されているようで、気が引き締まる思いがする。(アニメOPでは流れない部分だけど笑)

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てまあここまで歌詞をみてきて、黒羽と灰島のコンビが主人公なのは言わずもがなで伝わったと思うんですけど、「2.43」は他のキャラクターの物語も一人一人濃くて深くて面白いので、気になったらアニメでもよし、小説でもよし、マンガもあるのでそちらでもよし。ちらっと覗いてみてくれたら嬉しいです!

スポーツって、やっぱりいいよね。


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