ひとつ、唯一を除いた欲望の宮殿で.
金、金、金.
さぁ、楽して大きな富を得よう.
そして上限も底もない欲望ダンジョンへの扉を開放するのだ.
なんということだ、体が耐えられず、心が満たされない.
大した意気込みで無限オアシスに飛び込んだものの、何かが空回りしている感覚の中で、自分の生きがいは何かと自問し始める.
恋焦がれていた「あれこれ」を貪り食うことができるのようになったのに、結局心の幸福感を求めるようになってしまう.
ふと気づくと、まぶたの裏を見つめていた.
欲望の宮殿で、さもチベットの僧侶のように坐禅を組み、瞑想に没頭する.
なにもかもがある空間で、なにも映らないまぶたの奥を見つめる.
世界の広さを感覚的に悟り、自分の存在のちっぽけさ、幼さや未熟さを悟る.
自だけがあり、他だけがある世界.
欲望、それは自分が存在していることを自覚する信号.
自分だけが受け取ることのできる、一方通行のシグナル.
欲望の目的は何なのか、一体自分に何を伝えたいのか.
いつの間にか人格を持っている欲望の目的は何なのだろうか.
自分との感覚的対話の中で見つけた孤独感が、まぶたの奥にいる者、唯一存在している「自」のシルエットを浮かび上がらせる.
そしてちっぽけで未熟な自分の存在を認めたとき、ふと目を開くと、そこに自分はいなかった.
ただ自分以外の全てがそこにあった.
かつての自分が恋焦がれていた全てがあった.
ただ、自分以外があったのだ.
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