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うそつき

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路地裏の細い道に佇むその若い女は、軽く深呼吸をしてスマホを素早く操作する。発信音。ほとんど間を置かず、相手は応答した。

「あ、もしもし?あたし~」

                                                                            「!」

「今、大丈夫~?」

                                                                             「か、金なら今、かき集めている……」

「あ、ほんとー。それなら良かった」

                                                                             「あの…」

「え?なにー?」

                                                                             「息子は、ひろしは、無事なんだろうな?!」

「え? ひろしクン? 大丈夫だってば~」

                                                                            「声を、声を聞かせてくれ!」

「え~、ここには、いないよ~」

                                                                             「本当か!?」

「ほんとだって。あたしが信用出来ないの?お父さん?」

                                                                             「い、いや、心配で…」

「ふふ。心配性なんだから~」

                                                                           「む、息子が誘拐されて心配しない親がいるかッ!」

「!もう、どならないでよー」

                                                                           「早く、息子を返してくれ!」

「はいはい、その内、かえりますって」

                                                                         「それでっ、い、いつどこで受け渡しするんだ!」

「いつかって?う~ん。まだ考えてないしー」

                                                                          「ふ、ふざけるなっ!!」

「どならないでって!決めたら、また電話するから~」

                                                                        「何?お、おい、待て!」

プッ。

路地を抜けた先では、男が渋い顔をして待っていた。
「じゃ、行こっか」
女は、男の腰に腕を回し、寄り添う。
そうして、2人は夕暮れの街へと、ゆっくり歩いていった。

[終わり]

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