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フォーリン・ドリーミン

眠 さ に 耐 え 切 れ ず 外 に 出 た
レ イ ア ウ ト の 〆 切 が 明 朝
な の に 何 も 出 来 て な い
い っ そ 眠 気 覚 ま し に
夜 ど お し 歩 こ う と
駐 車 場 ま で 赴 き
車 止 め に 立 つ
場 景 は 澄 み
デ カ ダ ン
詩 的 な
人 々

と。
そこまで記憶はあるけれど
その先がすっぽりと抜け落ちている。
デカダン詩的な人々?なんだそりゃ。

いや、それ以前にここは何処だ。今は何時だ?
少なくとも、この眼前に広がる青空は、さっきまでの夜と思えない。

慌てて身を起こすと、後頭部に鈍痛。
咄嗟に手で擦ってみたが、血は出てない。
良かった。いや、良くない。
寧ろ、こういう時は血が出てる方が良いって言うじゃないか。救急車!
いや、待て待て、その前に。
ズキンズキンと響く痛みに耐えながら、現状を整理してみる。

昨夜、仕事に行き詰まりを感じて散歩。
駐車場で一休みしたら、強烈な眠気によりダウン。
そしてそのままKO、と。なるほど。

なるほどじゃねぇよ。

ポケットから取り出したスマホを確認してみると、午前8時ちょい過ぎ。大きく伸びをしてみた。
ぜったい、まにあわねー。

腕を降ろすと同時に、ぐんと襲ってくる虚脱感。
頭の中では何とかする方法をぐるぐる思い巡らすけど、もう一人の冷静な自分がロッキングチェアに座ってゆらゆらしながら『無理だよー』と優しい声を掛けてくれる。そうだよねー。

その揺れに同期しながら薄れ行く意識の下で、あぁ、いっそこのまま夢オチなら良いのに、と思ってみた。目が覚めたら、仕事場で突っ伏して寝てるさ。多分。

「主任!起きて下さい、主任!」
目覚めよと呼ぶ声が聞こえ。
「バイク便に渡す原稿、これで良いんですよね?」
ゆっくりと開けた目蓋の前で、黄色いA3封筒が揺れる。
「う、うん。OK」
それを聞くが早いか、封筒はひらりと身を翻して視界から消え去り、パタパタと軽快なスリッパの音が遠ざかる。

そうして沈黙が訪れ、何だよ夢オチかよ、と思いながらも、心底ほっとしてる自分だけが残った。

問題は、あの封筒に見覚えがないことだけど。
もぅいいや。

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