デバイス課金沼

「日頃から使う道具はケチらないべき」という考えには心底同意するし、実際そうしてきた。

「金額を使用時間で割る」という考えで自分を正当化すれば怖いものは何もない。

そんなデバイス課金沼に足を踏み入れたきっかけは高3の時に買ったリケーブル可能なイヤホンだったと思う。
昨今Bluetoothで繋ぐワイヤレスイヤホンが主流だが、わたしの中高時代はAirPodsが出る前で、みんな耳からケーブルを垂らして音楽を聴いていた。

わたしはモノの管理が基本雑なのでプロコンはもう7台目だしAirPodsのケースは3台目だし当然数々のケーブルを断線させてきた。

中2の時から500GBのポータブルHDDにmp3データを入れ、それを友人に貸し出して「中のデータを自由にコピーしていい代わりにあなたが持ってる音楽データでこのHDDにないやつを追加してね」というサイクルを繰り返すことで最強のHDDを育て上げてた。
そうして集めた古今東西の音楽をiPodやWalkmanで狂ったように聴いていたもんだから、やはり少しでもいい音で聴きたくなるわけで、それなりに背伸びして3,000円〜10,000円くらいの価格帯のイヤホンを使っていた。

そしてその全てを断線させてきた。

片耳からの音が途切れ途切れになるのに気づいた瞬間。なんて悲しい。

思い切って9,800円のイヤホンを買ったのにわずか3週間後にスキーバスの補助席にコードが引っかかっているのを知らずに思いっきり補助席をバコンとぶち上げたら断線どころか完全に切断されてしまった時は半泣きだった。

そんな時に友人に勧められたのがイヤホンの音が出る部分とケーブル部分が分離して好きに取り替えられるリケーブル可能なイヤホンである。

断線しても数千円とかでケーブルを買い換えれば何の問題もなく、本体部分を壊すことはまずないため長く長く使うことができる。
5000円〜10000円のイヤホンを1年経たずに何個も断線させてきたわたしからすると、3万円のイヤホンを買ってもそれを4年以上長持ちさせることができたら出費のペースは抑えられるわけである。
しかも普段から3万円相当の素晴らしい音が聴けると(←これとても大事)。

勇んで向かった新宿ヨドバシでイヤホンを吟味する時間も本当に楽しかった。
イヤホンは高かろう良かろう安かろう悪かろうの世界だが、そこに「音の好み」というのが加わると多少の金額差は覆してくる。
まだ見ぬ最高のイヤホンはないかと聴きまくり、最終的に購入してお店を出た時には入店した時から5時間経っていた。

あの日に買ったイヤホン。まだ良い音を出してくれる。
剥げた塗装がわたしの管理の雑さを物語る。

こういう時ほど都内に住んでいてよかったと思うことはない。
もちろんイヤホンなんていくらでもネットで買えるけど、やはり実物を視聴してこそである。

同じことはキーボードを探している時も思った。
大学でコンピュータサイエンス系の研究室に配属されるまでキーボードなんて気にしたことがなかったが、世の中には1万円、なんなら3万円越えのキーボードがあり、「心地よい打鍵感」というそれまで聞いたことも感じたこともない体験を提供してくれることを教わった。
その時もヨドバシカメラでしこたま叩いてベストのキーボードを探した。
わたしのベストはRealforce(静電容量無接点方式)、静音、荷重30gだった。

トラックボールを探す時も思った。
15万円するディスプレイを買った時も思った。
家に置くスピーカーを探す時も思った。
LPレコードでBeatlesのイギリス盤を探す時も思った。
秋葉原の秋月で電子工作部品を探している時も思った。
新宿の世界堂で額縁を探している時も思った。
美味しいラーメン屋や中華料理屋を求めて彷徨っている時も思った。

わたしは死ぬまで都内近郊に住み続けると思う。

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