CREATURE

保育園の頃の自分はとてもおとなしい子どもだった。
ずっと人の話をウンウン聞いて、自己主張はしない子どもだった。

家の外の人間がとにかく怖かった。
些細な不快感で突然泣いたり、ルールを破って大笑いしたり、感情的に動く同級生が怖かった。
そういう目立つ子の世話にかかりきりで、わたしのことは見ていないであろう先生も怖かった。
感情表現を咄嗟にできない分、とにかく周りが怖かったのだった。

そして、記憶上では、人生のうちその頃だけモテた。
クラスの男の子二人に挟まれて、交互に膝枕とかしていた。
親伝いに「●●くんあんたのこと好きなんだって」と何件か聞いたことがある。
たぶん、同い年の子が癇癪を起こさず機嫌よくいるだけで安心していたからだと思う。人の機嫌をとるのが上手かった。

今はというとまったくそんな感じではなく、たいして仲良くもない人を膝枕するなんて考えただけでダルいし不快。
どこで誰に膝枕を強請ってもいいけど、わたしだけにはしないでほしいと思う。
好きな人や親しい人でもあまりしたいと思わないし、無理やりされたら怒るかもしれない。
そういう強い気持ちがあるので、そんな誘いはまったくない。世間的には非モテと呼ぶのかもしれない。

どこで性格のスイッチングがあったか記憶を辿ると、ザックリと小学五年生くらいな気がする。
それまでは毎日不安で不安で仕方なかったが、その頃から徐々に他人をあまり気にしない能動的な性格になった。

女児で小五といったら、まあ普通に考えて二次性徴だろう。
わたしは人から怖がられやすいという性質があるのだけど、その頃以前はもっと周りからふんわりした生ぬるいものを感じていた気がする。その頃以降は、今現在も、ピリッとしたものを感じることが多い。

たぶんだけど、わたしって軽度の性癖異常なんだと思う。
古谷実のヒメアノ〜ルを読んだ時、森田があまりにも怖くて、どうか身近にいませんようにと思ったけど、たぶんわたしは普通の人よりは森田に近い。
森田っていうのは、性癖異常の快楽殺人鬼だ。

人を殺したことはないし、そういう衝動もないし、わりと理性が強くて道徳的なことに価値を置くので自分に危うさは感じないけど、なんか心の底に怖がられたいという願望がある。
怖がられたい。クリーチャーだと思われたい。人間を凌駕したい。みたいな気持ちがずっとある。

膝枕も、そのまま膝が割れて人を食えるなら全然する。むしろしたい。

人間ってつまらないな。

だから肉体との向き合い方や女体の尊厳とかに関する親切な指南にもそもそも興味がわかない。
学問としては面白いけど、わたし個人としてはつまらない肉体とジェンダーに向き合いたくないなっていう気持ちが大きい。


はあ。

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