CPTルール変更とレバーレス含むコントローラーについての雑感

CPTルールの変更

CPTのルールについて、ストVではレバーレスにて上下を同時入力した際の挙動が上優先もしくはニュートラルのいずれかを許容していましたが、スト6からは上優先はルール違反となり、ニュートラルのみ許容されるように変わりました。

抜粋すると以下です。

これは、前年採用タイトルであった『ストリートファイターV』における、コントローラー入力とキャラクター挙動の違いを考慮して、公平性を担保するために、コントローラー利用規定の見直しを行ったためであり、選手に対して重要となるのは“公平性の範囲:移動行動” の項目であろうと想定しています。

具体的には、下記の項目です。

– 上下方向が同時に入力された場合

両方の入力を維持、もしくは両方の入力を不成立とする必要がある。

– 左右方向が同時に入力された場合

両方の入力を維持、もしくは両方の入力を不成立とする必要がある。

これは、上下の入力が同時に行われた場合、キャラクターはジャンプ行動もしゃがみ行動もとらず、左右の入力が同時に行われた場合、キャラクターは前もしくは後移動行動をとってはならないことを意図します。

この項目は、レバーレスコントローラー自体を禁止するものではありませんが、広く認知されているレバーレスコントローラーを愛用している選手への影響は少なくないと考えおり、その重要性から「CAPCOM Pro Tour 2023公式大会ルール」の更新に先駆けてお知らせするものです。CAPCOM Pro Tour 2023公式大会ルールの更新については後日あらためてお知らせいたします。

https://www.capcomprotour.com/rules-2/?lang=ja

このことに関して、主に注目されているのはレバーレスの強弱の問題です。レバーレスがあまりに強いためとうとう規制が入ったのかという意見から、上下ニュートラルでもそこまでレバーレスの強さは変わらないという意見まで、様々な見立てがあります。

ちなみに私は上下ニュートラルでもレバーレスの強さは変わらない派ですが、ここでは上記のような変更による強弱の話はしません。

なぜなら今回の規定変更はコントローラーの強弱の調整を意図したものではなく、レバー・レバーレス・パッド・キーボードなど、各種コントローラーにおける入力操作のゲーム上での解釈を統一するために用意されたルールではないかと思っているからです。以下その内容について述べていきます。

SOCDクリーナー

レバーレスの上下・左右同時入力について語る際に外せない要素としてSOCDクリーナーというものがあります。SOCDとは Simultaneous Opposite Cardinal Direction (SOCD=反対方向同時入力)の略称です。詳細は以下のツイートに始まるハメコ。さんの一連のツイートに詳しいです。

つまりSOCDクリーナーとは、反対方向同時入力が行われた場合に、コントローラー基板に入力内容を渡す前に、同時入力の内容を整理する処理になります。図示すると以下のような形になります。

SOCDクリーナーあり上優先、ニュートラル、SOCクリーナーなしの説明図

PCによるゲームプレイが盛んになる以前(1990年代から2000年代初頭)の家庭用・アーケードの格ゲーは、基本的な操作デバイスが十字キーやレバーなど上下・左右がシーソーのように片方がオンになっている場合、かならず片方がオフになるものしか存在しなかったため、反対方向同時入力という操作はハードの都合上発生しませんでした。

そのためゲーム側では反対方向同時入力の制御は考慮しなくてよかったので、実は左右同時入力を行うと前に歩きながら溜めを継続することができたり、ガードをしながら前に歩くことができるというバグのような挙動になるゲームがありました。

当時のゲームのそのあたりの挙動のおかしさを確認したいのであれば、以下のような方向キーが独立しているコントローラーを使えば確認することができます。格ゲーをやりこんでいても、昔のゲームの反対方向同時入力の挙動がどうなるかを知っている人はあまりいないのではないかと思います。

つまり、Hitbox社がはじめてレバーレスコントローラーとしてHitboxを発売したときにSOCDクリーナーを導入したのは、ゲーム側で反対方向同時入力の解釈が適当だったので、コントローラー側で面倒を見てあげたという意味合いが強かったのではと推測できます。

ゲーム側の対応が適当だったからコントローラー側で面倒を見ていたのに、いまさらゲーム側での都合で仕様の変更を押しつけられた。という視点で考えると、今回のルール変更に伴うHitbox社の声明も理解できるところがあります。

ストVにおける各種コントローラーの反対方向同時入力の差異

ストVは上記のような昔のゲームと違い、反対方向同時入力を行ってもさすがにゲーム自体が破綻するような挙動はしなくなっています。その意味では特に、SOCDクリーナーがなくても問題がないゲーム(CPTルールに適合されるかという面はともかくゲームを問題なく遊ぶという意味において)になっています。

ただ、現状困ったことに反対方向同時入力が実施された場合、使用可能なデバイス間で解釈がばらばらになってしまっています。

  • レバーレス

    • SOCDクリーナー:あり、SOCDクリーナーにて解釈した後ゲーム側へ入力を渡す

    • 左右同時入力:ニュートラル

    • 上下同時入力:上優先もしくはニュートラル

  • キーボード

    • SOCDクリーナー:なし、ゲーム側に解釈を任せる

    • 左右同時入力:ゲーム内の前優先

    • 上下同時入力:上優先

  • パッド(十字キーとアナログスティックの同時入力)

    • SOCDクリーナー:なし、ゲーム側に解釈を任せる

    • 左右同時入力:ゲーム内の前優先

    • 上下同時入力:上優先

反対方向同時入力が可能なデバイスのうちレバーレスだけが、SOCDクリーナーによる対応が挟まってしまうため、他のコントローラーと挙動が合っていません。またキーボードとパッドの左右同時入力時の挙動について、レバーレスにおけるCPTルール(現行)基準だと違反になってしまう動きです。

こう整理すると、今後このまま放置してスト6に進むには問題を孕んでいるように見えます。この状況を解決するための手立てとして発表されたのが、今回のCPTルールの変更ではないかというのが私見です。

SOCDクリーナーを不要にしたい

カプコンとしては過去の経緯として生まれてしまったSOCDクリーナーという仕組み自体をなくして、反対方向同時入力に関してもひとまず全てゲーム(スト6)側で受け入れてゲーム内でSOCDクリーナーに相当する処理を行い、各コントローラーで統一した出力(反対方向同時入力はすべてニュートラル)にしたいという気持ちがあるのかなと思っています。

そのためには、レバーレスからSOCDクリーナーを排除してくださいという形が一番わかりやすい対応ではありますが、そうするとスト6以外の他メーカーのゲーム(格ゲー以外も含む)に与える影響が無視できません。

CPTルール上にもスト6を競技シーンで遊ばない人に関しては、CPTルール準拠でコントローラを設定しなくていいという一文が挟まれているのも、競技シーンが通常のゲームプレイに与える影響を小さくしたいという配慮に見えます。

なお、これはカプコンが主催する大会・競技シーン以外でのコントローラーの利用について制約するものではありません。

https://www.capcomprotour.com/rules-2/?lang=ja

ということを踏まえた上での妥協案が、今後パッド・レバーレスなどSOCDクリーナーが存在しないデバイスにて反対方向同時入力が行われた場合、ゲーム内での解釈にてニュートラルとなるように対応する。それに合わせる形で、レバーレスにてSOCDクリーナーが組み込まれている場合も、ゲーム内での解釈と同じになるように対応してください。というのが今回の上下同時入力をニュートラルとするルール変更の意図なのかなと思っています。

まとめ

まとめると以下です。

  1. 今回のCPTのルール変更はコントローラー間の強弱を埋めるためのものではない。

  2. これまでコントローラー間で差異があった反対方向同時入力の挙動を統一することを目的とした対応である。

  3. SOCDクリーナーの反対方向同時入力がニュートラルになったので、パッドとキーボードも同様になると思われる。

以上、個人的な推測混じりのお話ですが、そんなところです。

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