うまれてきてくれてありがと!|2023.12.31
しゅわしゅわの黒を注ぎ、グラスに入っている黄金(こがね)色の水面を揺らす。
冬にそなえて、ゴールド・ラムを入荷してみた。
お酒はほとんど飲めないけれど、ウイスキー好きがいるおかげでのんでみたいものをちょくちょく仕入れる。
カフェで出せないかなあ、と試作も兼ねている。
◇◇◇
コタツに隣り合わせで座り、肩を寄せ、息遣いを頬に感じるキョリでグラスを近づける。
彼は穏やかな目元の目尻にたくさんシワをよせ、
ただでさえ優しげな声によりいっそうの優しさと、ちょっぴり弾みの足された声で
そのキョリのまま目を合わせ、
チン、とグラスを鳴らして
「うまれてきてくれてありがと!」と言う。
初めてカンパイしたとき、びっくりして、嬉しくて、照れくさかった。
なんて素敵な言葉を使うんだろうと思ったのと同時に、返す言葉を思いつかなかった。
「うまれてきてくれてありがと」という言葉は、わたしに対してなんの負荷もかからない。
「生きててくれてありがと」だと、生きるのに疲れてしまっている相手だとすこししんどいかもしれないし、
「いつも𓏸𓏸してくれてありがと」だと、𓏸𓏸をしなくちゃいけない気がしてくる。
生まれてきたことはわたしの選択で起きたことではないから、わたしのどこの責任にも触れないまま、ただ存在を認め、抱きしめてくれる言葉だった。
最初の方は、照れくさくて目を逸らしてしまい、返す言葉がワンテンポ遅れた。
「いつもありがと」と返すのがせいいっぱい。
でもカンパイをする度に、すこしずつ固まっている照れくささや素直になれないところをほぐされていく感じがする。
今では、わたしの方も目を見て、
「いつも一緒にいてくれてありがと」とか、たまに「うまれてきてくれてありがと」と返すことができるようになってきた。
彼と飲むお酒は、いつも美味しいし楽しい。特別なことをしてるわけでもなく、ただダラダラと水曜日のダウンタウンを見たり、とりとめのないことを話すだけだけれど、
「うまれてきてくれてありがと」というカンパイの言葉が、お酒とその時間に、ふんわりと、きらきらとした、魔法をかけてくれる。
◇◇◇
ラムコークを気に入ったみたいで、何度ものんでいた。
ホットバタードラムを作ってみたけれど、暖かいのでアルコールが湯気と一緒にのぼってきて鼻の奥にくるのと、ラムの味も濃くてなかなかにキツめなカクテルだった。
ウイスキー好きでも濃すぎると感じていたので、もう少し飲みやすい作り方があったら知りたいなあ。
今年はモーツァルトリキュール、ベイリーズ・アイリッシュ・クリーム、アマレット、アイリッシュウイスキー、バーボンウイスキー、ゴールドラムをのんでみた。
(ジンジャエールとか何かしらでわってだけど。)
あとは日本酒数種類とかクラフトビールとか。
自家製の梅酒もとても美味しかった。
ほろ酔い1缶でまっかっかになり、2缶飲みきれないわたしにしては色んな種類をのめたかな。
大晦日の夜、実家でベイリーズミルクをのみながら、来年の彼との時間に思いを馳せる。
2024年は、言葉をすこしでも扱えるようになりたいな。
身近な大切な人を抱きしめることができるような言葉を使えたらさいこうだなあ。
来年が楽しみ!
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