わたしのすきなドラマのはなし④直ちゃんは小学三年生

大人も子どもも観るべきドラマ。

こんな辺境の地までありがとうございます、にわかドラマファンのちょと申します。こんにちは、こんばんは、おはようございます。

直ちゃんは小学三年生、観てましたか?
テレ東のドラマだったので放送がない地域もあったと思うのですが…

こんなビジュアルなんですよ。
うん、いい大人。なんなら髭も生えてる大人が、小学生を演じているんです。

最初ドラマの画像を観たときには、シュール系か懐かしい系のドラマかな、という印象を受けました。
実際その要素はあるのですが、そのターンはオープニングで終わります。スゲェドラマなんです。


同局のバイプレイヤーズを珍しくリアタイした夜、エンディングで竹原ピストルさんが「今宵もかろうじて〜♪あぁ歌い切る〜♪」と弾き語りをしていて、ああ面白かった…なんて余韻に浸っていたら突然始まったのが、直ちゃんは小学三年生。

リリーンリリーンと鳴るチャイムと共に、画面には
「おことわり このドラマの登場人物は 誰がなんと言おうと小学生です ご理解ください」
の文字。

えっ?と思っているとOKAMOTO'Sのめちゃくちゃかっこいい音楽と共にオープニングが始まった。
ギターのメロディにのせてキャストが出てくる…でかい!大人だ!でも動きが完全に小学生。
中にはさっき見た髭面の人もいる…竹原ピストルさんじゃん!!?
でも楽曲がめちゃくちゃかっこいいしキャストの様子も完璧に小学生なので、シュールというより、これがオシャレです!みたいな感覚さえ覚える。
…このオープニングが始まってからチャンネル変えられる人いる?いたら挙手してほしい。わたしはこのオープニングで完全に心を掴まれた。


オープニングが終わるとすぐに本編が始まる。
キーンコーンカーンコーン…という聞き慣れたチャイムのあとに俳優さんが映る頃には、もう彼らのことを完全に小学生として認識していた。そして即、カウンターパンチを食らった。

貧富の差があるのだ。
わたしが初めて観たのは3話。きんべとてつちんが歩いてきて、「給食おいしかったな〜」「そう?」「おれ大おかず3回もおかわりした!」なんて会話から始まる。
このシーンだけで、彼らの生活レベルの違いとか、それをお互い大して気にも留めずに仲良くしていることが伝わる。

まるで小学生の頃の自分たちのようだった。
そう、子ども心に、お金がたくさんあるおうちとあんまりないおうちがあることは、みんなわかっていた。
でも小学校で重視されるのは、かけっこの速さとかテストの点数とか。だから、おうちの経済状況に関わらず、普通に友達になれた。

一方で、これは後になってからわかったことだけど、なにかと親との関わりがあったり、制服がなくてみんなが違う服を着ている小学生の頃って、一番貧富の差が目立つんだよね。
大人がてつちんのズボンを見れば、彼の状況は一目瞭然。
そういう、あの頃の気持ちと今あの頃を俯瞰で見ている気持ちの両方が、バーッと押し寄せるようだった。

そういう、(あ、このドラマすごい!)って思うようなシーンがあったと思えば、アホみたいなシーンもあって、その塩梅がすごくよかった。
交通系ICカードを巡るいろいろとか、習い事のプールをサボったのをバレないように試行錯誤するとか、連絡帳の先生からの注意を親に見せたくないとか…思い出すだけでフフッと笑っちゃう。


感心したりクスッと笑ったりしているうちに、話の本筋へスルスルと導かれる。世の中のちょっと変なところが、小学生の純粋な視点で描かれるストーリー。
大人のドラマだといろいろなしがらみが邪魔してしまいそうなテーマでも、入口が子どもの素直な"なんでだろう?"という疑問なので、心にスッと入ってくる。

給食費のこと、苗字が変わること、クラスの男女の対立のようなもののこと…小学生が直面する範囲でも、何て説明したらいいのか迷うような問題がたくさんある。
直ちゃん達は、それを自分達の言葉で、自分達の考えられる範疇で、こうなのかなぁ?って答えを出していく。
彼らの柔軟さと前向きさが、眩しい。


気付けばエンディングテーマの、恋はマーブルの海へ、が後ろで優しく流れ出して、あっという間に30分が経っていた。
初見の感想はとにかく衝撃。こんなドラマはこれまでに観たことがないと思ったし、どんなジャンルにも属さないなと思った。

すっかりハマったわたしは、いつのまにか直ちゃん目当てで夜更かしするようになっていた。多分最終回まで、ほとんどリアタイしたと思う。
最終回、また一段とすごかった…!

ネタバレになってしまうのであまり書かないのだけど…最終回後、胸がいっぱいになってしまって。
直ちゃんを観ていると、子どもの頃の無力さを思い出すんだよなぁ、どこかへ行くのも一人じゃ行けない、何かを決めるのも自分でなくて親で、決まってから聞かされたり。
もう全ての子どもにしあわせになってほしい!って思ったし、みんなをぎゅーっと抱きしめたくなった。


このドラマを観ながら、ああ小学生って昔も今も変わらないんだな、なんて思っていたのだけど、そうじゃないよなぁって。
変えたほうがいいところ、たくさんあるよ。

直ちゃん達と同じ目線で考えて悩んで笑ってたけど、わたしはもう大人だった。
力は小さくても、変える方に進んでいける、大人だった。わたしは逃げてた、考えることから。

たとえば全国にいるてつちんのような子が、みんな丈のあったズボンを履けるような。そんな未来を作るのは、わたしたち大人なんだ。
履けるようにしようよ、せめて、そのくらいは子どもにお金を使おうよ。おうちで買えない子にはプレゼントしようよ、ぱっと見で貧富の差がわかる世界を変えようよ。

みんなみんなしあわせになってほしいから。変えたほうがいいところって、たくさんある。
わたしはこのことに、最終回後にやっと気付けた。
他にもたくさんの気づきをくれた直ちゃんは、大人も子どもも観るべきドラマだと思う。娯楽であるドラマに観る"べき"って合わないけれど、本当に観たほうがいい作品。


最後にひとつ。
こんなに素晴らしいドラマだったのに、なんでかなぁ、公式から円盤の発表がないんですよ…。
この作品を残せないのって本当にもったいないと思いますし、いつか息子が小学三年生になったら観せたいので、ぜひ円盤が出るといいなぁと思います…!
続編もぜひ観たいです…待ってます!!