見出し画像

まにまに

2年前のある日、本屋さんの文庫本コーナー前を通った時。西加奈子さんの短編エッセイ集「まにまに」が目に入った。

その頃は、自分に足りない何かを埋めるように、自己啓発本を読み漁り疲れていた時期だった。息抜きにぴったりなのでは?と、文庫本という手軽さも相まって即購入。

お恥ずかしながら、西加奈子さんの本は「まにまに」が初。何もかもを曝け出すような、それでいてユーモアと愛のある文章に、心の底から癒された。


関連づけるのが烏滸がましいけれど、そこから思い出された20年近く前の記憶。

ガラケー×パケ放題が主流の2000年代初頭、眉毛が薄い高校生だった頃、無料で作れる携帯用ホームページに日記作成ページを埋め込んで、毎日のように日々の出来事を綴っていた。

確か、オープンな内容の恥ずかしさから学校の友達には教えていなかった気がする。

気づくと、1日60人位の方が読みに来てくれるようになっていて。そのホームページは誰かと交流する為ではなく、個人の日記がメインで、コメント欄があった訳でもなく。反応はそのタグで分かる数字だけだったにも関わらず「知らない誰かが、わざわざ私の日記を読みに来てくれている」ということも励みになって、2年近く続けていた。

最後の日記に、「もうこの日記はホームページごと消します。今まで読みに来てくださっていた皆様、ありがとうございました」という内容を投稿した時、ずっと読んでくれていた『誰か』から、メッセージが届いた。

「歳も同じで、同じような境遇にいた貴方の日記を読むのが日々の励みになっていました。今まで楽しませてくれてありがとうございました」というような内容だった。

私の自己満足の産物を読んでくれていた『誰か』の存在に輪郭が生まれて、しかも励みにしてくれていた、という事実。言葉にならないくらい、嬉しかったのを覚えている。

彼女は関東に住んでいるということ、お互いの下の名前と、自撮りを交換したのも思い出。

ネカマでは無かったと思う。私の美しい思い出の為にもそう思いたいし、会ったこともない、名前も忘れてしまった彼女の幸せを今も願っている。


そう、私は「人の役に立っている」実感と、褒められることで伸びるタイプだ。

こっそりピアスを空けたり、ヒステリックグラマーが大好きでギラギラしていた中学生の頃。
お便りや発行物を書きたいが為に、生徒会書記を2期連続で務めた時「貴方は文章をまとめるのが抜群に上手い。こういう仕事が貴方の天職だよ。」と言ってくれたN先生、お元気ですか。

夏休みの課題だった作文を、2回も県の文集に選んで載せてくれた、N先生。

黒髪にパーマ、親友から貰ったというハイブランドの素敵な腕時計と、ヒールのカツカツ音がトレードマーク。よく居眠りする私を「こら!眠り姫!!」と、叩き起こしてくれたN先生。

(中高時代に居眠りしてたことは学生時代の後悔ランキング上位に入っていて、母を反面教師にするよう、子供達に説いています)



仕事にはなっていないけれど、息抜きとして、エッセイ気分で書き綴ることにしました。

大人になってからはついつい難しく考えて、頭の中で脳味噌スパゲティをこねくり回してしまうから、

あの頃みたいに、西加奈子さんみたいに、ありのままの気持ちを文章に起こせるようになる為の訓練でもある。

そしてあわよくば、共鳴してくれる誰かに、何かが届くnoteになりますように。!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?