見出し画像

もしもコンドームが禁止されたら

前回、人生で初めて失恋エッセイ(「9個下の彼女に振られて失恋しました」)を書いたのですが、僕が想像していた以上に反響がありまして、励ましのお言葉をたくさんいただき感謝でいっぱいだったのですが、「続編を書いてください!」なんて声もあり、

せっかくなので今日から5日間、様々な角度から「性の科学」について書いていくことにしました。


一方的にちゃんと振られるというのが久しぶりで、学生時代のアメブロから始まりこのnoteにいたるまでの9年間で初めて失恋エッセイを書いてしまったくらいには堪えていたのですが、

お別れをした最後のデートの帰り道は驚くほどすーーーーーーんとしていたのです。

しかも悲しみや後悔、怒りといった類いの感情は一切なく、むしろ多幸感や高揚感すら感じていて、この感情がわいて出てきた自分が不思議で仕方がなかったんです。


なぜだ?


と。

今さっき振られたんだぞ、おい。

どっからわいてきた、その感情。脳バグってるやないかいと。



しばらくなんでかなぁと考えていたのですが、これにはしっかりとした理由があり、恋人同士がする"あれ"がいつもよりすごく長かったからだということがわかりました。


ここには重大な秘密と深い真実が隠されていたのです。


しかもこれはプライベートだけではなく、仕事でも活かすことができ、そんな誰もが知っておくべきこの話をより深く理解してもらうために、

まずは史上最悪の政策が行われた1966年のルーマニアへ皆さんをお連れしたいと思います。


■もしもコンドームが禁止されたら



ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクは、技術進歩のため冷酷なまでに、合理的な理想を追い求めていました。

彼は失脚し公開処刑(銃殺刑)されるまでに異常なまでの様々な政策をしてきましたが、その中でも特に杜撰なものだったのが1966年です。

彼はなんと「避妊と中絶」を禁止し、報酬金とメダルを授ける制度を設けて出生率の向上を目指したのです。

「国力とはすなわち人口なり」と、すべての夫婦に4人以上の子どもを生むことを強制し、国民はこれらを破ると死刑になったり重罪となりました。

しかし、人々はすでに経済的に困窮していて、捨てられる子どもは増え、何千何万もの赤ん坊が強制労働収容所にあたる児童養護施設に引き取られましたが、ひどい人手不足から、子どもたちは抱き締められることすらありませんでした。


1989年、革命が起き、チェウシェスクの失脚に伴って孤児院は解放され、国外の衛生当局者が入ってみると、収容されていた子どもたちは、3才児でさえ泣きも話もしないことが判明しました。

この制度の中で過ごした始めの世代は、その後、大人になってからも他者を気にかける能力が身に付かず、人と絆を結ぶことすらできませんでした。



しかし、不幸中の幸いなことに、1日に1時間あることをすれば、そんな恐ろしい事態を避けることができました。


それは、

「子どもに触れ、手足を動かしてあげる」

です。


1日20分~60分、子どもを優しくマッサージし、手足を動かしてあげるだけで、触れ合い不足による悪影響はほとんど打ち消すことができたのです。


■母親に触られていた子は風邪をひきにくい

このように「触れ合い」は僕たちに生命の息吹きを与えます。

例えば、母親に頻繁に触られて育った子は、そうでない子よりも風邪をひく率が圧倒的に低く、吐いたり下痢をする回数も少なかったことが研究でわかっています。

逆に愛情のこもった接触をなされなかった子どもほど、成人になってからの暴力発生率が高いこともわかりました。


また、商店街でアンケートや署名を集めるときでさえ、相手の腕に軽く触れるほうが成果を上げられることができ、

医師は患者に触れる人のほうが親身になってくれると評価されました。患者も、医師に触れられることでストレスホルモンのレベルが下がり、治療結果が良くなりました。

もっと興味深いことに、NBA(アメリカ・プロバスケットボールリーグ)で行われた研究によると、「触れ合いが多いバスケットボールチームほど強い」ということがわかりました。

短時間の喜び合いでの身体的接触が個人とチームの成績を押し上げること、信頼と協調性を築くことを通じて成績を上げていることを強く示唆していたのです。


人と人との「触れ合い」は、発達の初期段階で特別な役割を果たしているばかりでなく、生涯を通じて社会生活の中で決定的に重要な要素となっているのです。



……ここで思い出したのが僕の通っている、"物珍しい挨拶"をする美容院Fでした。

少し長くなりますが、最後にその話をさせてください。


■特殊な挨拶でチームが活気づく

僕が通っている美容院の専門学生へのウリは、「最短で2年目からスタイリストになれること」です。

美容院によってスタイリストデビューできるかどうかの基準はかなり違っているみたいで、以前通っていたとある有名な美容院では、なかなか試験に通らず27歳でやっとデビューできた子もいました。

(引っ越しを機に美容院が変わることになり、本当にいろいろ彷徨った末、今の美容院Fにたどり着いたのですが)

そんな中、最短の21歳でスタイリストになれるということは、早く美容師になりたいやる気のあるスタイリスト志望の子たちにとってはやりがいのあることですが、ちょっと嫌な言い方にはなってしまうのですが、それだけにお客さん側からすると技術面では少し拙いなぁと思うことはありました。

しかし、髪型へのこだわりが強い方である僕がそれでもそこへ通おうと決めた理由はしっかりとあり、それは技術的未熟さをカバーできるくらいの「居心地の良さ」がそこにはあったからです。


シャンプー(3年目の人)
カット(7年目)
スタイリング(2年目)

この3人体制でいつもしてもらっていたのですが、誰かに喋った話はちゃんと他の2人にも共有されていたり、気づけば僕はお店のスタッフの半分近くの人と仲良く話すようになり、

もう本当に「髪の毛を切りに行く」というよりも、「後輩たちのいるサークルの飲み会へ行く」気分でいつも楽しく通っていました。

美容院が提供しているサービスは「髪を切ること」等かもしれませんが、提供している本質的な価値はそれぞれのお店ごとに違っていて、ここは「居心地の良さ」や「お客さんの居場所」を提供してくれているんだなぁと思っていたのですが、


なんでここまで風通しの良いチームができているのか不思議だったのです。


素直で愛嬌がある子がほとんどで、みんな笑顔で働き、スタッフ間は異常に仲が良く、当然、離職率もめちゃくちゃ低かったです。

様々なスタッフにヒアリングしたところ、この美容院はあることが他の美容院とは決定的に違っていることに気が付きました。


それは

「挨拶の仕方」

です。


この美容院はなんとスタッフ間で挨拶するとき、毎回、

「両手で握手をしながら挨拶する」

のです。



ここからは僕の勝手な想像に過ぎませんが、

オーナーがこの美容院の提供する価値は「居心地の良さ」でアットホームな密着型の美容院だから、そのためにまず店内の空気を良くしないといけない→スタッフ間の仲の良さを上げる必要がある→「両手で握手しながら挨拶する」

と具体的なアクションにまで落とし込んだ戦略を思い付いたのです。


以前まではいわゆる高品質・高技術・高価格型の銀座にある美容院に通っていて、銀座のあのセレブな感じに慣れきってしまっていたので、最初は若い人ばかりで面食らったのですが、慣れるとアットホームな密着型の美容院はめちゃくちゃ居心地が良かったんです。


正直、職場の人への挨拶は形だけで目を見ないで挨拶することってよくあると思うんですよ。

でも握手をすれば当然、相手の目を見て挨拶することになり、そこでコミュニケーションが生まれ、心がこもります。

この「握手の挨拶」こそがこの美容院のチーム力ーー協調性、信頼、共感、感謝などーーに結びつき、ひいてはこの美容院が提供している最も重要な価値である「お客さんの居場所」につながっていたのではないかなぁと僕は思いました。



ここまで少し長くなってしましたが、冒頭に書いた話に戻しましょう。

別れた日、恋人と別れ際にもう最後だからと僕たちはいつもよりもかなり長めの「ハグ」をしていました。

ハグをすることで、脳内にストレスを軽減させる物質が分泌され、心身ともにリラックスした状態になり、 これが僕の病んだ心を癒し、多幸感や安心感を与えてくれていたのでした。


「触れ合い」には、発達障害の子どもを救い、チーム力を上げ、そしてひどく辛い出来事からもすぐに立ち上がらせることができるような、そんな生命に息吹きを与える力があったのです。



■補足①

※女性の皮膚は男性よりも10倍は敏感

皮膚の感受性は女性の方が圧倒的に高いです。

実験で触覚に一番敏感だった男性と、一番鈍感だった女性を比べると、まだ女性の方が感度は上だっという結果がありました。

触覚に関して、女性の皮膚は男性より少なくとも10倍は敏感なのです。

なので女性にとって触れ合いはとても大切なことで、セックスとは関係のないスキンシップがとても重要です。

肩に手を置いてもらったり、手を握ってもらったり。そういったセックス以外の面でも自分に関心を抱いてくれている彼の肌の温もりを感じて安心を得たいのが女性という生き物なのです。

スキンシップを増やすだけで人間関係の満足度は上がるのですが、これは逆に言うと、喧嘩するときや何か大事な話し合いをするときは、手をつないだ状態ですることで、議論はヒートアップし過ぎずに、「言わないでいいことをわざわざ言ってしまった」などということを減らすこともできるはずです。



■参考文献/オススメ書籍

『孤独の科学』(ウィリアム・パトリック/ジョン・T・カシオポ)

『触れることの科学』(デイヴィッド・J・リンデン)

『話を聞かない男、地図が読めない女』(バーバラ・ピーズ/アラン・ピーズ)

今回の参考文献で買ったのですが、自分で決めた締切に間に合わず積読になってしまった一冊↓↓(読んだら感想ください~!)

『人はなぜ握手をするのか: 接触を求め続けてきた人類の歴史』(エラ・アル=シャマヒー)



■次に読んでほしい人気エロシリーズはこちらです↓↓


■関連記事



■補足②

※独裁者ニコラエ・チャウシェスクの公開処刑について

この記事を書く直前に、本当に偶然なのですが、最近までルーマニアに住んでいたという人と免許合宿で友達になりました。

「ルーマニアについて唯一知ってることがあって……1989年まで避妊すると死刑だったんでしょーあれってほんまなん?」と聞くと、「今でもその当時生まれた子どもたちはジプシーって呼ばれて(差別用語です)、貧困に苦しんでいて、なんだったら私は最初の方しか見てないけどニコラエ・チャウシェスクの公開処刑の動画も探したらネットで出てくるよ」と聞きました。


(公開処刑てワンピースかよ…海へと駆り立てられるわ……)


免許合宿から帰ってから探してみると、

「殺したいのなら二人一緒に殺しなさい!」
「二人一緒に死ぬ権利があるはずよ!」


と妻が叫び、共に銃殺される映像が確かに出てきました。

↓↓
リンク

※後半は閲覧注意です。世界史の勉強に、世界を知るという意味で見てみるのもいいかもしれませんが、映像が忘れられなくなるかもしれません。



ところで、テレビ番組『クレイジージャーニー』が根強い人気で今年の10月からついに復活しましたね!

7年前、この番組で当時まだ無名だった丸山ゴンザレスさんがルーマニアの"マンホール住民"を取材した映像がめちゃくちゃ話題になっていましたが、

当時僕はまだ若かったので「海外まじやべぇ……」くらいにしか思っていなかったのですが、あれは「ルーマニア」のことだったのかとこれを書いている際に知りました。


"マンホール住民"の映像を初めて見たときの衝撃は未だに忘れられません。

7年前ってちょうどテレビのコンプライアンスが厳しくなってきていて、過激な映像はもってのほかで「テレビは面白くなくなった」なんて言われ始めていた時期だったんですよ。

そんな中「テレビってまだこんなに面白いんだ!!!!!」と本当に最後まで釘付けで夜中に見るのがやめらなくなったくらいでした。

もう一度見たくなり、僕は人生で初めてテレビ番組のDVDを買いましたし、普段テレビを見ない友人もマンホール住民をたまたま見てから『クレイジージャーニー』だけは見ているって言ってました。

それぐらいとんでもない映像なんです。


革命によりニコラエ・チャウシェスク政権の共産主義国家は崩壊し、しかしそれに伴って民主化により経済格差も生みました。

親に捨てられ、国に見捨てられ、子どもの頃からマンホールの中に住む人々が出てきます。

マフィアの奴隷だったような孤児院出身の人たちを、マンホールの中に家族として匿っているのが、"ブルース・リー"というボスなんですが、これがほんと嘘みたいな身なりをしていて、漫画のキャラそのもので、テレビを見ていてあんなにハラハラしたことはなかったと思います。

独裁者ニコラエ・チャウシェスクが残した負の遺産を面白いだなんて不謹慎極まりないですが、周りの友人たちもまったく同じ熱量で話していたので、それぐらい衝撃的だったので、とりあえず見てみてください!!!!

丸山ゴンザレスさんのファンになると思います。

そのときの回がTVerで見られるのでリンクを貼っておきます。
(スマホからだとアプリいれないと見れないですが、パソコンならすぐ見れます!)



DVDはこちらです↓↓

大学生の頃、初めて便箋7枚ものブログのファンレターをもらった時のことを今でもよく覚えています。自分の文章が誰かの世界を救ったのかととても嬉しかった。その原体験で今もやらせてもらっています。 "優しくて易しい社会科学"を目指して、感動しながら学べるものを作っていきたいです。