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育児日記2|新生児の息子を抱っこしていると、2歳の娘がやってきて「よしよし」と頭を撫でた。

そのことを褒めると調子づき、手を息子の胴に乗せて全体重をかけてきた。私は咄嗟にその手を払いのけ、細かな説明もなく「駄目じゃないか」と怒鳴った。娘はえぐい何かを噛み潰したように顔にシワを寄せて泣いた。
娘の表情は、叱られたことへの怒りや辛さではなくて、自分よりも弟の方が大切なのだと悟ってしまったときのそれだった。そのことがすぐに分かって、私は何てことをしてしまったのかと、すぐに自責の念に苛まれた。泣く娘を抱きしめて、謝り、愛しさを伝えた。

こんな思いは二度とさせまいと誓った数時間後、また同じことをやらかした。 息子のためにミルクを作っていると、娘が「ミルク飲みたい」と言ってきた。卒乳してもう1年近く経とうとしているのにだ。
「あなたはもうミルク飲まないでしょ」と私が言うと、娘は再び何とも言えない切なげな相貌で、ひぃぃぃいと静かな声を上げて泣き始めた。あぁ、またやっちゃったと思った。
申し訳ない気持ちになって、娘にもミルクを作ってやった。およそ1年ぶりの哺乳類を寝ながら咥えて、娘に安堵の表情が戻った。ちゅぱちゅぱやっては、「ミルク飲む」と言ってニヤけ、大切そうに時間をかけて飲んだ。別に飲みたかった訳ではなくて、作って欲しいだけだったのだろう、結構残した。

こうした些細な心の傷の断片が、娘の将来にどれだけ残るか分からない。私など2歳の記憶など殆どなく、娘も出来事としてはきっと忘れてしまっているに違いない。この件でセンチメンタルになっているのは、どちらかと言えば私の方かもしれない。
子は親の心に、ここまでじわりと染みのようなものを与えていくものなのか。同じ失敗はしないようにしよう、子の気持ちにどれだけ応えられるだろう、そんなことを考えながら過ごす2度目の育休である。


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