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なぜ僕はローグ(メタ外)デッキを使うのか

昨今では競技性の高いTCGが増えたことで「勝ちたいならTier1デッキを使え」という言葉は、以前より目にする機会が増えました。

その言葉は正しいです。流行のデッキは強い。そして勝ちたいなら強いデッキを使うべきです。

ですが、勝つためにはTier1のデッキを必ず使わなければならないかというと、そうではないと思っています。


■ローグ(メタ外)デッキとは

ハースストーンのヒーロー、ローグを使ったデッキでもなければ、もちろんならず者にフィーチャーしたデッキでもありません。

ハースストーンではローグが好きです

ローグデッキとは、いわゆる「メタ外デッキ」、「Tier1,Tier2より下のデッキ」のことです。

さて、ローグデッキは、弱いデッキなのでしょうか?

答えは「はい」であり、「いいえ」です。

大多数のプレイヤーが選択しないということは、それだけの理由があります。トーナメントで勝利するためにデッキに必要な要素は、「デッキパワー」「安定感」「柔軟さ」と様々ですが、その内のどれか、あるいはすべてを満たしていない可能性があります。

デッキが強ければ、誰もがそれを使いますよね。パイオニアのラクドスミッドレンジも、スタンダードのエスパーミッドレンジも、多くのプレイヤーが勝利のために選択していました。

単純に使用者が少ないということは、勝つための何かが欠けている可能性が高いのです。

「いいえ」と言ったのにも、理由があります。

誰もそのローグデッキの強さに気が付いていないかもしれません。そのローグデッキは、潜在的にはTier1に駆け上がる力を秘めていながら、誰も試そうとしなかっただけなのかもしれないのです。

その場合には、トーナメントで活躍を続ければいずれはTier1の一角に上がり、ローグではなくきちんとした名称を与えられることになります。

古くはモダンのランタンコントロール、スタンダードのイゼット天啓などは、ローグから一躍有名になったデッキと言えるでしょう。

■ローグ(メタ外)デッキの魅力

想定外

ローグは、対戦相手にとって想定外のデッキです。それゆえに正しいプレイができない場合が多いです。

ラクドス吸血鬼を例に上げましょう。

1ターン目に《思考囲い》から入ってきて、2ターン目に《変わり谷》を置いてエンド。この時点でほぼ相手のデッキはわかりますよね。3ターン目に出てくるカードは《鏡割りの寓話》か《傲慢な血王、ソリン》のどちらかですから、《覆いを割く者、ナーセット》を出さずに《ドビンの拒否権》を当然構えます。

さて、それでは相手が《ラウグリンのトライオーム》から2ターン目に《若き紅蓮術士》を出して来たら、どうやって対応しますか?《ドビンの拒否権》を構えますか?《覆いを割く者、ナーセット》を出しますか?その《覆いを割く者、ナーセット》で何を加えますか?

相手の想定外のデッキを使うことで、ミスプレイを誘発させられます。

デッキビルダーとしての喜び

また、ローグデッキを使って勝利を収めることは、メタデッキを使用した場合とは違う意味もあります。

誰も思いつかなかった全く新しいデッキを生み出し、それを世に送り出し、TwitterなどSNS上で話題になる。そしてそこから多くのプレイヤーがデッキをチューンし、やがてそのデッキがメタの一角にのし上がっていく。

この快感に耽溺するデッキビルダーが後を絶えません。それぐらいの魅力です。

最終的に自分の作ったデッキが強すぎて、キーカードが禁止になればゴールです。

■なぜ僕はローグ(メタ外)デッキを使うのか

ここでタイトルの話になります。

前提として、僕はローグデッキが好きです。様々なイベントでよくローグデッキを使用します、競技イベントでローグを使用した時は、公式から取材もされました。

もちろん、取材を受けることはとても名誉であり、嬉しいです。

ですが僕は、「取材を受けたいからローグデッキを使おう」と考えたことは今までただの一度もありません。

そして新しいデッキを生み出す快感も、実際のところ今はほとんどありません。

僕がローグデッキを使うただ一つの絶対的な理由は、ローグデッキを使用した方が勝てるからに他なりません。

いわゆる強デッキを使用する人たちが「トーナメントで勝ちたいから」強いデッキを使っているのと全く同じ理由で、勝つために僕はローグデッキを使っています。

「ローグデッキを使う理由は、負けた時に言い訳にできるから」という意見も目にしましたが、僕個人の話をするなら、そんな考えは全くありません。

トーナメントに出場する以上、勝ちたいというのが僕の考えです。負ける言い訳なんてものは最初から存在しません。

あっさりと負けてしまうこともありますし、そうなればこのデッキのコンセプトがいまいちだったという結論に至ります。ですがそれは、負けた理由をローグデッキのせいにしているのではなく、このデッキが勝てると思ってしまった自分が悪いという自責によるものです。

負けて納得ができるはずがありません。負ければ悔しいです。

もう一度、はっきりと言います。僕は勝つためにローグデッキを持ち込んでいます。

■トーナメントで勝利する方法

トーナメントで勝つ方法とはなんでしょうか?

色々と必要なものはあると思いますが、まずは勿論、練習ですよね。そして何の練習をするかと言えば、その環境で最も強いデッキを練習するでしょう。

強いデッキについては、そのデッキコンセプト・サイドボード後のプランに至るまで、あらゆる対戦相手が研究しています。相手の用意に対して打ち勝つためには、幾度となく練習を繰り返し、最適なサイドボーディングとプランを見つけなければなりません。

少し前にスタンダードで頻発していたグリクシスミッドレンジのミラーマッチはまさにその極地と言えます。先手2ターン目の《勢団の銀行破り》に対して後手番は《削剥》を構えていても、メインで使うことができません。《かき消し》を構えて(あるいは持っているフリをして)、相手の3ターン目の動きを見てから《削剥》で割りにいきます。

ミラーマッチあるある

あるいは、後手番が2マナを立ててエンドした際は、3ターン目に《鏡割りの寓話》を突っ込んではいけません。打ち消されて返しで《鏡割りの寓話》を通されるのが敗着に繋がるためです。

ミラーマッチあるある2

また、《黙示録、シェオルドレッド》はミラーマッチにおいて弱いカードです。

《喉首狙い》1枚で対処されてしまう上に、プレイしたターンの隙が大きく、返しで《鏡割りの寓話》+打ち消しなど、マウントを取られるリスクがあります。

サイドアウトが定石

これらの結論は、練習することによって得られる成果です。

この一例については、記事を読めば同じことができますが、それだけで勝てるわけでもありません。あなたが記事を見ているということは、対戦相手も読んでいる可能性があります。だからミラーマッチで《黙示録、シェオルドレッド》を抜くことぐらい相手も知っています。

結局、記事を読んだだけでは、ある程度熟練したプレイヤーとのミラーマッチにおいては運が大部分を占める勝負になります。そしてそれを乗り越えるためには練習が不可欠です。

つまり、

その環境で最も強いデッキを使い、ミラーマッチを含めたあらゆるデッキと沢山マッチをこなし、適切なサイドボーディング・ゲームプランを知る

これが、トーナメントマジックで勝つ方法と言えます。

そしてズバリ僕は、好みでないデッキを使用して練習に打ち込むことが恐ろしく苦手なのです。

好みでないデッキで練習をすることが苦手なため、どうしても試行回数を重ねるのが苦痛になります。プレイの習熟も遅く、冴えません。苦手な科目を勉強しているのと同じ状態だと考えてください。

一方、自分で一からデッキを作った場合は、状況は全く異なります。何せ自分が全部作るのですから、好みでないはずがありません。

見つけたローグデッキをいじっている時も同様です。ネットの海に沈んでいる数多のリストから興味を持ったものをピックアップしたわけですから、好きな要素が詰まっているに決まっています。

好きなデッキであれば、僕はいくらでも時間を使えますし、プレイの精度も上がります。数マッチで悪い点は見えてきますし、仮想敵に対してどういったプランを取れば勝てるかなどの考えも冴えます。結果的に、Tier1のデッキよりもローグデッキを持ち込んだ方が、高い勝率が出せるのです。

これを「逃げ」と言われれば否定はできません。Tier1デッキによるミラーマッチを研究することを諦めて、ローグデッキで勝とうとするのは、辛い練習から逃げているのと同義でしょう。

それでも「Tier1のデッキを練習すること」と「楽しいローグデッキを練習すること」のどちらの方がよりパフォーマンスを発揮できるかというと、僕は後者なのです。

だからこそ、勝つためにローグデッキを選択しています。

そして後者においてパフォーマンスを発揮できる理由であるメンタルについて、もう少し掘り下げます。

■メンタルの重要性

マジックで勝利するために必要な要素。

「練習」「デッキ(構築力・選択力)」「運」「プレイスキル」。他には一体何があるでしょうか。

僕はそこにメンタルが加わると考えています。(メンタルと一言で言ってもその内容は様々ですが、今回はモチベーションについて考えてみていただければと思います)

先程も言いましたが、僕は好みのデッキを使っている時に、モチベーションが上がります。マジックをプレイしている時間そのものが楽しいため、練習が苦痛になりません。練習中に沢山のことを、楽しみながら吸収できます。その結果、僕のローグデッキの練度は上がり、Tier1のデッキを使うよりも、勝率が高くなります。

同じ練習時間をTier1のデッキに費やしたとしても、良い成果は出にくいのです。前述の通り、僕は「好みでないデッキを使用して練習に打ち込むことが恐ろしく苦手」だからです。

つまり僕にとって、楽しむという要素は、マジックで勝つための重要なファクターなのです。

Tier1デッキで練習をし続ける高いモチベーションを持っているトーナメントプレイヤーは強いです。そして勝つためにそのスタイルを目指すこと、それは正しいと思います。

言いたいのは、「Tier1デッキで練習をし続ける高いモチベーションを、トーナメントプレイヤーの誰もが持っている必要は決してない」ということです。

これは「人間には向き・不向きがある」程度に考えてください。「無理な人には無理」という、それだけの話です。

「Tier1デッキで練習をし続けるのが辛くモチベーションを維持できない」というのが、その人の努力が足りないとか、トーナメントマジックへのコミットが足りないとか、そういうことではないのです。ましてや「ローグデッキを使うことがトーナメントプレイヤーとして相応しくない」だなんてありえません。

それを知らなかったかつての僕は、思うように勝てず苦しんでいました。

その頃は、楽しいデッキを使うことが、自らのモチベーションを上げ、その結果、練習の精度が上がって勝率が上がるという結果に繋がるなど、まるで考えていなかったからです。だから環境で最も強いとされるデッキを使い、負け続け、マジックのモチベーションがどん底まで落ち込んでいた時期もありました。

Tier1デッキで練習をし続ける高いモチベーションがなくても、トーナメントで勝てる可能性はあるのです。楽しいデッキを回し続けられるということは、はっきりと力になります。

マジックにおけるメンタル面、とりわけ「楽しい」と感じる気持ちは軽んじられやすいですが、これは間違いだと思います。「楽しい」と感じることは、マジックの魅力であると同時に、勝つためのヒントでもあるのです。

「自分で作ったデッキの方がなぜか勝てる」という人の中には、「楽しさ」が練習やプレイの精度を上げている可能性が大いにあります。そういったプレイヤーが大舞台にTier1デッキを持ち込み敗北してしまうのは、自らの性質を理解しきれていないからであり、僕はそれが非常にもったいないと感じています。

結局、自分にとって最も勝率の高い方法を選択することが重要であり、その判断材料として、メンタルは大きな役割を担っているということです。

■世のローグ好きに

今、こうして僕の文章を読んでいる人の中に、ローグデッキが好きなプレイヤーはたくさんいると思います。そしてその理由も、千差万別でしょう。

その中で、僕と同じように「勝利」のためにローグデッキを選んでいる人はいるはずです。

「勝利」と「ローグデッキ」を二律背反だと思い、悩んでいませんか?

「なぜ強デッキを使わないのか」という意見に、耳が痛くなっていませんか?

僕は今回の話で、そういったプレイヤーに自信を持ってもらいたいと思っています。

勝つために必要な要素は決して一つではないのです。「デッキのギミックが楽しい」というのも、立派なデッキ選択理由の一つです。

「楽しいと感じること」と「勝利を求める姿勢」を切り離す必要はありません。楽しさを求め、勝利しましょう。

これからも良きローグライフを。

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