今日という日はT岡田を語りたい。
本日、2024年9月8日、T岡田選手が今季限りでの引退を表明した。
19年目の今季は開幕スタメンをつかんだが、その後1軍の多くの打席には立てなかった。
私がオリックスファンになったのは、2006年であり、T岡田は2006年入団。
つまり、私は彼の現役生活のすべてを、オリックス生え抜きということで見れた選手である。
率直に言って、彼の今年の成績では引退やむなしだと思う。
でも理屈ではそうでも、正直まだ受け入れられない。
彼はオリックスの唯一無二のスター選手なのだ。
ここ数年、オリックスバファローズは考えられないほど強くなった。
山本、吉田正、宮城、宇田川。彼らは知名度としてもオリックスだけでなく、全国的になったといっても過言ではない。
ただ、今でもオリックスバファローズの顔はだれか?
オリックスバファローズといえば誰なのか?
その答えは間違いなくT岡田が浮かぶ。ほかの誰でもない。
T岡田しかいないのだ。
それはなぜか?
生え抜きだからか?地元出身だから?HR王をとったから?
違う。そんなものでは語れない。
T岡田という男は、オリックスバファローズの歴史のすべてだからだ。
詳しい経歴はWikipediaを見ればいいので、今回は私の中でのT岡田を今日は語らせてほしい。
彼を最初にTVで見たときは2009年だった。まだHR王をとる前。
印象ははっきり言って最悪。こいつ三振しかしない。
打ったところを見た記憶すらない。成績的にも .158 7本
え、本当に7本も打っていたか?という印象。
その翌年。彼はHR王に輝いた。
おかわり君がけがという幸運もあったが、それでもKINGはKING。
あの時は画期的なノーステップ打法でHRを量産した。
カルチャーショックだった。
あの時はカブレラ、ローズ、松中。どれだけのパワーで勢いをつけて飛ばすかだったのに。ノーステップであそこまで飛ばす。
しかも、あれほどの美しい弧を描いて。
ただ、チームは残念ながらCSにすら出場できない。
翌年以降、T岡田は期待外れだった。
当時のどんでんから言われた、「お仕置きの4番」という言葉が強く印象に残っている。彼の低迷と同じくオリックスバファローズもCSに届かなかった。
そして来る2014年、彼は復活した。
この年は10.2決戦もあったホークスとの激闘を繰り広げ、惜しくも2位になった年である。
その年に飛び出した、CS第2戦の伝説のHR。
まずあの試合の前、10ゲーム以上離れた日本ハム相手に第1戦を落とし、打2戦も負けムードが漂っていた。ホークスへの悔しい思いとCSファイナルステージでやり返したい思いが乗った1発だった。
元々、T岡田という選手はメンタルが強くないと推察される。
それは発言からも打席の雰囲気からも感じる。投手優里カウントになると快音を飛ばすイメージはあまりない。
ただこの1発の時は、打つ雰囲気があった。
なぜならボール球先行だったからだ。あの打席、T岡田は余裕をもってボールを見逃せていた。そう、打席の中で余裕を感じられた。
その中での美しい弧を描いた1発。
あのHRは”昨日のHR”として、オリックスファンの忘れない1発となった。
なおこのCSは稲葉の引退ブーストもあり、あえなく敗退するのである。
10.2で負けたときはひたすらタオルで顔を隠し泣き崩れていた、
そしてCSで負けたときは放心状態になっていた。
あの表情の変遷。印象に強く残っている。
そこから2017年にプチ復活を遂げるものの、オリックスは低迷を続ける。
2005年の球団創設以来、優勝はおろか、15年で2度しかCSに出られないという暗黒っぷり。その中でもT岡田という選手は打席に立っていた。
そして2019年終盤、スポーツ紙を賑わかせたのは、
「藤波・T岡田トレード疑惑」の浮上だった。
当時、どちらも不振であった球団の顔をトレードする報道だった。
この年はT岡田はシーズンを通してHR1本のみで、苦しんでいた。
ただオリックスファンは彼の復活を心の底から求めていた。
そんな中、岸田護引退試合に1軍昇格を果たし、代打で登場したT岡田。
彼を待ち受けていたのは、オリックススタンドから聞いたこともないような大声援であった。
オリックスファンの渇望が声に変ったのだ。
前奏からの岡田コール。鳥肌が立った。
のちにT岡田はあの声援を聞いて、残留に踏みとどまったという。
ファンの声援が選手の力となり、選手を動かす。
ファンの力でT岡田の残留を勝ち取った瞬間だった。
そして2021年から2023年、
オリックスバファローズは夢にまで見た優勝。日本一、3連覇を成し遂げる。特に2021年は劇的なシーズンだった。
オリックスバファローズとしての初優勝を手繰り寄せたのは、そう。T岡田のHRだったのだ。
もう説明不要だろう。あの、”あいやほへ~”である。
そこから2年。
オリックスバファローズはT岡田がいなくてもチームが周り始めた。
今では宮城や紅林が主力となり、若手も多く伸び始めている。
オリックスバファローズという球団は、すでにもう第2章、いや第5章あたりまで突入しているのだろう。
私は時代に置いて行かれているのかもしれない、
ただ私はT岡田という選手を愛し、
オリックスバファローズという球団を愛し、
今日も床に伏す。
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