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ああこうはなりともない〜*土下座教放浪記

 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」。江戸期の尾張藩大番頭、寺社奉行を務めた 横井也有(1702〜1783)の有名句。
 芸能全般に造詣が深く武士、国学者、俳人、狂歌師と多才な顔。
 よく知られているのは①少肉多菜②少塩多酢③少糖多果④少食多噛⑤少衣多浴—などを著した「健康十訓」だろう。
 だが最も面白いのは、老人の諸相を詠んだ狂歌だ。
 一体何歳から老人なのかは定義していないが、「シワはよるホクロは出来る背はかゞむ頭は禿げる毛は白くなる」と現実を飾らず言い表している。
 「老人の諸相」はさらにシンラツになり「手はふるえる足はよろつく歯は抜ける 耳は聞えず目はうとくなる」と遠慮がない。
 これで終わりかなと思えば「ヨダレたらしメクソつけるハナたらす粗相をして小便ももる」と身体的老化を遠慮なくあげつらう。
 これだけでも本当の老人?は「な、な、なんちゅう」と目くじらを立てるはずだが、イジワルなのはこれだけでなく、老熟が進むと「またしても同じ噂に孫自慢達者じまんに若きしやれごと」などと「自慢しい」になり、聞く方をヘキエキさせてしまう。
 「こりゃ手厳しいですな」と聞けば?横井老は「なんの、まだある」と言う。
 「くどくなる気短かになる愚痴になる思ひつくこと皆古うなる」
 「身に添ふは頭巾えりまきツエ眼鏡ユタンポしびん孫の手」と容赦ない。
 最後になると「聞きたがる死にともながる寂しがる出しやばりたがる世話やきたがる」と傍若無人で周りの人々を困らせる(狂歌の部分は現代語に直した)
 私の場合、十中八、九は当たっている。若い人から「老害」「老醜」などと思われないよう、気をつけなければ。さあきょうも冷静忍耐寛容謙虚反省感謝。

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