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♯毎週ショートショートnote。掌編小説『棒アイドル日本一決定戦』

 今や日本中が熱狂する棒アイドル。その頂点に立つのは一体誰なのか。待ちに待った戦いの火蓋が某お菓子メーカーの手によって切られた。
  
 『棒アイドル日本一決定戦 開催!
 実況生中継!Twitter人気投票に皆様奮ってご参加くださいませ!』

 会場である日本武道館は満席。残念ながらチケットを購入出来なかった棒アイドルのフォロワー達も当日特設モニター前に集結し、其々の推しカラーの法被を翻しながらオタ芸を披露していた。
 ひしめき合う場内の熱気は更にヒートアップし、やがてフォロワー同士のいざこざにまで発展した。

『苺ちゃんが一番に決まっている!』 
『馬鹿野郎!チョコちゃんだよ!』

 赤の法被を羽織った猿顔の中年男性が凄みを効かせながら、オタク風青年の頭部に固く結ばれているピンクの鉢巻きを剥ぎ取った。
『ブッコロスヨ!』
 そこに『ピスタチオ』と刺繍を施された緑色の法被を羽織った外国人の男が何故か騒ぎに乱入。
 悲鳴と怒号が入り混じる会場内。慌てたスタッフは事態を収拾する為に場内を暗転し、大会開始のアナウンスを流し始めた。

 『お待たせしました!棒アイドル選抜メンバーです!ステージをご覧ください!』

 スポットライトが闇を切り裂いた。目を輝かせたフォロワーが一斉に振り返ると、光の洪水に包まれたステージの上に並んだ棒アイドル達がにこやかに手を振っている。
 だが、熱でドロドロにコーティングが落ちてしまったすっぴんの棒アイドル達の姿は何かが違う。

 日本国中のフォロワーの心は同時にポキッーと折れてしまった。

 

たらはかに様の掌編小説企画、
『棒アイドル』に参加させていただいてます。

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