毎週ショートショートnote。『それでも地球は曲がってる』
近年、地球はやる気をすっかり失せていた。
小ぶりな身体を自転させながら、太陽のまわりをぐるぐる回る。何万年も行ってきた単調な行為に地球はふと疑問を抱いてしまったのだ。
なあ、これって意味ある事なん?
地球が訊ねると火星は赤い顔で自虐的に笑った。
『余計な事考えるなよ。切られるぜ』
どうやら主である太陽の機嫌を損ねてしまうと、このポジションから追い出されてしまうらしい。
冥王星のあたりならまだしも、最悪、太陽系から排除という事もあるという。
地球は火星に礼をいい、再びゆっくりと決められたルートを進み始めた。
ここから離されてしまえば大気や気温の変化が劇的に発生する。ならばきっと、僕の背中で暮らしている沢山の生命達は耐えられまい。
地球はこっそり軌道を変えようとした考えを捨てた。決められたものから1ミリたりともズレてはいけない。それが大切なものを守るルールだから。
個性的な軌跡を刻む彗星達が宙を駆けていった。
地球は静かに、静かに、夢を見た。
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