見出し画像

小説 最後のミステリー.4

盗作は確かにいけない事だ。
だが、実際、その境目は実際に明確な基準がある訳では無いので判断が難しい。
オルガの言う通り、僕の作品に類似したものが同じクリエイターの手によって小説サイト『創作の海』に散見されていた。その事実を目の当たりにした時、僕は怒りよりもむしろ逃げたい、そんな感情に陥ってしまった。

『こんな事許していいの?運営に通報しようか?ありえない!こんなの大学と専門学校と舞台が変わっただけじゃない!』

 オルガは憤っていた。それは充分、文字だけでも伝わってくる。正義感が強いのだろうか。僕は正直不思議で仕方がなかった。オルガと僕はいわば見ず知らずの他人。何故そこまで彼女は他人の為に怒れるのだろう。

『いいよ、もう』
『なんで?どうして?』
『だから、もういい。問題なら僕の作品の方を消すよ』
『はあ?そんなのおかしいって』

あまりにもオルガが食い下がるので、言いたくは無かったが僕は正直な気持ちを伝えた。

『僕の作品をパクった彼の方が明らかに文章力が高く、表現も豊かだ。小説というものは素材がいくら良くても調理する者の腕が未熟であれば、食べてすら貰えない。僕は自分をわかっているから騒ぎたくないんだ』

『ヒビキ……』

それきりオルガの返信は止まった。

その後再びオルガから連絡が来たのは一週間後の事だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?