明日から、朝だけ勇者にぜってぇなる。

1日のはじまりは

お弁当作りから始まる。
長男と次男が毎日お弁当だからだ。
 

数年前は、年に数回、遠足のお弁当を作る程度だった。
ニンジンを星型にしたり、ポケモン弁当みたいなのも作ったり。

しかし毎日の日課となった今はだいぶ違う。


弁当箱にベンベン！と白米を詰め込み、
鮭ふりかけをサラサラ〜っとかけて、
昨日の残り物や、ゆで野菜などを詰め込んで完了。

 
タイトルは
「昨日の夜ごはんと一緒じゃん！弁当」だ。
 
もはや何も作っていない。
特に子どもたちからブーイングも来ないので、

「夜ごはんと一緒弁当」
「チーちく以外、朝ごはんと一緒弁当」
 
という感じで日々弁当を作ってしまっている。
 
S N Sでは美しいお弁当を毎日作られている方々がたくさんいらっしゃる。
すげぇ。うまそぉ。私が食べたい。
 

すまない。子ども達よ。
ステキ弁当をつくれる母さんではないが、
その辺りはゆるしてほしい。
今後とも現状維持な感じでやらせてもらいたい。
ヨロシク。
 

 

 
 

先日実家に帰った。

その日は暖かかったので、妹家族と母と、
みんなで広い公園にピクニックに行った。


そして
母がお弁当を作ってきてくれた。
運動会で食べるようなお重に入れて。
 

お重のフタを開けると唐揚げがたくさん入っている。
母はよく唐揚げを作るのだ。
 

すると妹が
「唐揚げに添えてあるレモン、色がちょっと赤めだね」
と言った。
 

母は
「あ、それね、みかん」
と言った。
 

え。

み、みかん？

唐揚げの横になぜみかんを添える。
居酒屋メニューランキング1位の、
唐揚げの横に必ず添えてあるレモンみたいに、
三日月の形をしたみかんが添えてあった。
 

「だってレモンがなかったんだもの。だからみかんにしたの。」
と母。

百歩譲ってすっぺぇオレンジならわからなくもないが、
唐揚げの隣に添えてあったのは
オレンジ　ではなく　みかん　だった。
冬にコタツでむきむきして食べるやつだ。

しかも隣にあるミートボールのタレがだいぶ塗布されている。

 
 
そうだった。
母の弁当はヘンテコなのだった。
私は母が作るお弁当を思い出した。

あれは小学5年生の時。
遠足の日。

お弁当に納豆が入っていたのだ。
しかもおかずスペースの主役になっていた。

 

……。
ほぼ納豆ご飯じゃん！

 

家に帰って母にクレームを言うと
「だってアンタ納豆好きじゃない。」
と言われた。
 

いや、そうなんだけどぉ
好きなんだけどぉ
あれって、青空の下レジャーシート広げて食べるやつじゃないじゃん？
ねばねばくるくるさせて食べてる子なんていないじゃん？
その辺りわかってほしいじゃん？
 

 
母の弁当はいつもヘンテコだった。
 

焼きそばとナポリタンのハーフ&ハーフ弁当の時もあった。
ツッコミどころが満載だ。

焼きそばには青のりや紅生姜も添えられていたが、そこのクオリティは全然求めていない。





「遠足だから、アンタの好きなものを入れてあげてるの」
という愛から作られた弁当なのだが、かなり間違った方向性だ。

ナポリタン&焼きそば弁当は売っていても買わないだろう。

いや確かに両方好きだよ。
好きなものなんだけど、
違う、違うんだよ母ちゃん。

「この弁当、なんか嫌ぁぁぁぁ！」

とレジャーシートの上で涙ホロリした思い出がフラッシュバック。

♢

現代に戻る。
母の唐揚げを食べた。
もぐもぐしながら、ふと
ミートボールのタレでべちょべちょになったみかんは、小さい頃のお弁当の日の私みたいだと思った。

今だから笑えるけど、
子どもの頃は結構悲しかったのだ。
だって、他のみんなは私の憧れの卵焼きとタコさんウインナー弁当とかで。デザートにアメリカンチェリーとかおしゃれなやつ付いていて。


私は恥ずかしくて、悲しくて、
ナポリタンと焼きそばを箸でぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて一瞬で食べたんだった。
切ねえ。遠足の思い出切ねえ。

そして母が作ったヘンテコ弁当シリーズを次々思い出した。小さい頃の私にねぎらいのことばをかけたくなったところで私はハッとする。

♢

いきなり妄想モード。

そこには大きく成長した息子二人が立っていた。

「俺たちの弁当、いつも残り物の詰め合わせだったよな」
「朝も昼も一緒なんてホントつまらない弁当だったゼ」

お、おばけ？

ヒ、ヒィィィィー。
急にブルブルした。
 

やばい。
言わないだけで、息子たちは実は苦い思いをしているかもしれない。
弁当トラウマ遺伝子が2人にも引き継がれているのではなかろうか。



昔の私のようにお弁当のフタを開ける前はショック緩和のため、まぶたをそっと開く。とかしてたり。
そうだとしたら
とってもかわいそうじゃないか。
 

今更遅いかもしれないが、
「息子たちの弁当への信頼を取り戻さねば…！
いざ！！」
と、急に勇者のような気持ちになった。

よ、よしこうなったら、
明日はおにぎりを握ろう。
卵焼きも朝焼こう。
イチゴも入れよう。


と急に焦り始めた母。

ということで
「シンライ」
を取り戻すため、
明日から、朝だけ勇者になります。

いざ、ゆこう！

おしまい