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信用リスクと有価証券の評価損

最近の記事で
信用リスクの上昇について頻繁に言及していた

過去の投稿をご覧になった方は
その背景を理解して頂けたと思うが金利と信用リスクの関係をおさらいしておく。

国や企業が資金調達する方法として
投資家からお金を借りて、国債や社債を発行。
投資家はその債券を購入する見返りに、
年間○%の利息を受取る。
そしてこの金利の決定要因の一つに
企業の信用力が関わってくる。
企業の健全性が高ければ受取る利息は低くなり
企業の健全性が低ければ受取る利息は高くなる

当然投資家は、企業が倒産するリスクを取って
金利を受取るわけだから、信用リスク分(リスクプレミアム)を上乗せした分の高い金利を受取るわけだ。

現在は新型コロナウイルス感染拡大により、
資金繰りが逼迫し、中小企業や大企業の財務健全性が懸念されている。
これが信用リスクの上昇だ。

今回はコロナウイルス感染拡大による

①信用リスクの上昇

②金融機関の保有有価証券の損金拡大

について金融機関の現状をまとめる。

①信用リスクの高まり
前述の新型コロナウイルスの影響と合わせて、
近年では金融機関の貸出のリスクテイクにより
信用リスクが高まり利回り上昇。
・ミドルリスク向け
景気の影響を除いた上での、信用コスト(貸し倒れに備えた引当金)でカバーしきれない
「低採算貸出先」が増えてきた。
そこに新型コロナウイルスの影響も加えた
大幅な信用コストの発生の可能性
・不動産賃貸業向け
住宅賃貸業向けは、新型コロナウイルスの感染拡大によるリスクの顕在化は考えづらい。
ホテル需要の急減で影響がでる業種も。
全体としての需給の緩みはあるが、不動産市場自体の成長性を懸念。
・大型M&A等のレバレッジ案件向け貸出
企業の吸収・合併の増加により、一部企業に
のれんが増加。クレジットイベント(支払い不履行や破産、リストラ等)が発生した場合のリスクを金融機関が背負う可能性。
2018年度の上場企業ののれんは30兆超。

※のれんとは
買収した企業のブランド力や技術、人的資源等の「目に見えない資産価値」のこと。
買収に支払った金額が買収した企業の純資産を
上回った分が「のれん」。下回ったら「負ののれん」となる。

②有価証券投資関連損益
企業は1年間の活動成績を決算報告する(多くの企業は3月)。
同時に保有する有価証券の状況報告もする。
新型コロナウイルスの影響で、
3月以降は株価の下落やクレジットスプレッドの
拡大(信用リスクの増加)により、
有価証券の評価損益が大きく悪化。
しかし海外金利の大幅低下(債券価格の上昇)で債券関連の損益改善し、相当程度補われた。
・大手銀行
海外の債券投資などを積み増し。またレバレッジドローン(欧米において、主に投資適格未満の、信用力が低い企業に対して行われる融資)を流動化し、証券化した金融商品の保有額が
リーマンショック期以上に増加。
つまり比較的信用力の低い先への投資を積極化
・地域金融機関
国内外の様々なリスクを含む投資信託等を積み増し。当初は海外金利のリスクを取ったものが中心であったが、最近では、株式・信用・不動産・為替などのリスクを抱える商品の増加。

前回の記事に引き続き、国内の金融機関の現状をまとめた。
近年ではグローバルな関連性が高まり、
今後も海外の株式や債券の価格がより一層調整される局面では、関連する有価証券の売却損や減損が大きくなる可能性
がある。
そして、金融機関の間でリスクに対する
検証方法のばらつきがある。
市場の構造もリーマンショック期とは異なってきている事も考慮しつつ、それぞれの資産構成やリスク管理の強化が必要になるだろう。


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