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黒人差別問題と失業率に見る今後の動向

新型コロナウイルス感染拡大により、米国雇用統計では戦後最悪の失業率を記録したのは記憶に新しい。

コロナ禍により頻繁に取り沙汰されるようになった、新規失業保険申請件数はピークを過ぎ、一時の最悪期からは抜け出しつつある印象だ。

雇用統計はさらなる悪化が見込まれていたものの、経済再開の効果も寄与し、失業率は市場予想を大幅に上方修正している。
直近では黒人差別について社会問題が表面化し、先月発表された人種別の雇用統計では、黒人の失業率のみが前月比で上昇。
今回は

失業保険給付金受給者が雇用市場に復帰する可能性

人種差別問題がコロナ感染拡大ひいては雇用環境の再悪化を引き起こす可能性

について考える。

新規失業保険申請者数
・米国の新規失業保険申請者数は一時期から減少傾向にあるが、給付金を受け取る非雇用者の数は依然として過去最高水準
・失業保険給付金に併せて、当局は7月末まで週給600ドルを上乗せした措置を講じる
・21年1月までの特別措置延長も示唆しているが、近頃の雇用回復を受け、その可能性は低くなった
失業保険金受給者の本格的な労働復帰は、特別措置期間の終了後だと考えられ、雇用統計の数値として現れるのは9月以降の雇用統計になるだろう
人種別失業率
・6月に発表した失業率は改善したが、人種別で見ると黒人の失業率は悪化
・白人警官による黒人殺害による人種差別問題が社会問題化し、コロナ感染拡大におけるロックダウンや、それに伴う雇用環境の悪化における社会不安が助長させたとの見方もできる
・全米各地でデモ暴動の激化や長期化が続けば、これを契機とした夜間の経済活動制限の長期化、デモ活動の密集によるコロナ拡大の第二波懸念が、雇用の最悪化を引き起こす可能性が考えられる
・同様に92年に起きた黒人差別問題「ロサンゼルス暴動」も社会的背景は酷使していた(91年にソ連政変、米・英GDPマイナス成長等の経済不安)
・ロサンゼルス暴動ほか、08年9月のリーマンショック、現在のコロナショックに関して、白人と黒人の失業率の悪化幅を比較すると、黒人層の失業率の悪化が明白。
・ブルーカラー労働者が、経済危機時に企業のレイオフ(一時解雇)またはリストラの影響を一番に受けやすく、黒人が多い職層であることが主因であろう

ロサンゼルス暴動、リーマンショック、コロナショックの人種別失業率についてまとめた

米国株式市場
・経済再開による雇用環境の回復が窺え、株式市場にもプラス要因となっている
・4-5月での経済環境悪化の底打ち期待から、株価の回復が見られているが、コロナ感染の第二波懸念が再燃した6/11のダウ平均株価は市場4番目の下落幅を記録
・引き続きコロナの感染拡大とそれに伴う経済状況が市場の注目となる

まとめ
・失業保険金は20年7月末まで政府による支援金は続き、この層の本格的な就業はそれ以降
・経済危機時には、黒人の雇用環境は悪化し易く、人種差別問題も表面化しやすい
・黒人差別問題が長期化した場合、雇用環境に悪影響を及ぼす可能性
・6/12にFRBが公表したマネタリーポリシーレポートでも「パンデミックで起こる失業格差」について言及。今回の失業について、テレワークやソーシャルディスタンス対策で互換できないような職種(飲食や観光業等)では失業者が多く発生し易く、更に人種別で見た場合、白人に比べ黒人の雇用率が低いことを問題点に挙げている。ブルーカラーで働く黒人層が失業に陥り、その後も職場復帰が困難になる例が多いことを示唆する内容であった
・6/16の議会証言でのパウエル氏の発言でも、「経済危機の重荷が、全ての米国人に平等に降りかかるわけではない」とし、当局も黒人等の低所得層との格差問題が生まれていることを認識しており、人種間格差の是正を重要視している
・直近の雇用統計は決して楽観視できるものではなく、引き続き雇用環境を注視しなければならない

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