T8を誤認するT1

T8を誤認するT1は多いが、T1を誤認するT8はそういない。
なぜこのような傾向があるのだろうか。

今回は自認1w9△154&過去△548を誤認していた自分の視点からこの件について考察してみようと思う。

またT8を誤認するT1は専らT型である。そのためこの記事はT型を前提に書くこととする。私自身もT型であるためT型視点でのお話となる。

たとえ誤認であれ今後の人生に役立つようであればそれで何ら問題はないだろう。自己分析による人生の改善が類型を学ぶ最も主要な目的の一つだからだ。しかしタイプの誤認によって誤情報が流れ出ることは極力防ぎたい。これに関しては私の二の舞を踏ませたくないという個人的な思いではあるが。

この記事では恐れや囚われそのものよりも、そのタイプが持つ思考プロセスに焦点を当てている。そのためT8とT1で迷っている方だけでなくトライタイプで迷っている方にも有効だと思われる。ぜひ参考の一つとして是非目を通していただけるとありがたい。

※この記事では
情動→喜怒哀楽などの情緒・気持ち全般(emotion)
感情→主観的な価値基準(feeling)
の意味で使っている。
一日の中で気持ちが変化を繰り返すとしても、好きな食べ物が変わるわけではない。前者が情動、後者が感情である。

※この記事では便宜上T1という大きな主語を使っている。T型のT1に焦点を当てているとはいえ、もちろん全てのT型のT1に当てはまるわけではない。くれぐれも周りのT1が皆このように思っていると考えること、またこの記事だけを参考にT1を自認しようとするのは控えていただきたい。

※あくまで個人的な持論に過ぎないため鵜呑みにしないよう注意していただきたい。



T1がT8を誤認する理由

①自分の感情がわからない

つまり、自分が何に価値を置くのか自覚できていないということだ。
ここで私の失敗例を話そう。

私は自分の心動かされるものについて考えるのが好きだ。だから自分がそう感じる理由をたくさん炙り出し、共通項を見つけ出すなどして遊んでいる。

他にも似たようなことを繰り返して生きてきたため、私は自分の価値観についてよく理解していると思い込んでいた。しかし実際は情動を発端に物事を分析しているだけに過ぎなかったのだ。対象のどのような部分に惹かれるのか説明できても、自分はこんな価値観を持っているからここに惹かれるのだという心の説明ができていなかった。

ここで一度立ち戻って考えてみる。そもそもT型とは感情の体系より論理の体系に注目しがちな人を言うのだ。ならばF機能(とりわけFi)未発達のT型が、自身が何に価値を置き、どう良いと思うのか自覚できていないのも無理はない。そして価値の置き方はエニアグラムの恐れや囚われなどと密接に関係している。感情だと思っていたものが実はただ情動に結び付けただけの論理で、本当の感情は何もわかっていない、そのためエニアグラムの恐れや囚われも気づかぬうちに誤解している、なんてことは十分起こりうるだろう。実際に私がそうだった。
これは合理型に属するT1に起こりやすい現象である。

一方T8は反応型に属する。つまり自身の情動に従うということだ。彼らは感情がそのまま情動に乗って出力される。誰かに言われずとも自分のことを心で理解しているのである。T型のT8はF発達が必須だと言われる理由の一つはここにある。

T1は怒りなどの情動の発散が上手くない。単純な話、T8はエネルギーが外側に向かうのに対してT1は内側に向かう。だからT1が何かに乗せて情動を外に出す場合、思考を頼ることになるのだ。ここで言う思考とは、論理的な根拠・ルール・良いとされていることなど様々。情動と思考が組み合わさることによって、勝手にそれを感情だと勘違いしている可能性がある。

怒りを覚えたとき、躍起になってそれを説明できる言葉や因果関係を探すようならT1かもしれない。
反応で行動しない・できないのはT8ではないのだ。

思考+情動(T1)→私はこれが許せない。なぜなら私はAに対してBと思う性質があって、今回のCはAと同じ特徴を持つからだ。
→情動を根拠づけるために何らかの基準を持ち出す。感情でものを言うのが難しいため論理的なつながりを重視する。

価値観+情動(T8)→私はこれが許せないんだ!許せないもんは許せないんだよ!!
これが許せない!という感情を許せない!と情動に乗せている。そこに論理的なつながりはあまり重視しない。

余談になるが、第三者に自分がT8に見えるか聞いたりそう見える振る舞いを考える場合はハートセンター(特にT3・T4)である可能性が高い。

②自分の衝動性を後ろめたく思っている

T1は9つの中で最も常に怒っているタイプである。神経質なのだろう。そしてそれを隠そうとする。意図的であろうとなかろうとだ。
ではなぜ隠そうとするのか。個人的な考察だが、一つは根に傲慢さがあると感じているから。もう一つは正しくありたいから。

「傲慢」「正しさ」。いきなりの見慣れたT1ワード。

これらの単語を個人的に解釈して、衝動性を隠す理由について考える。

ではまずこちらの例を見ていただきたい。

私が最も正しくものを理解しているのに、相手が私と違う価値観を主張しているのが不愉快だ。しかしここで「私が許せないから許せない」と言うのは、怒りの発端があまりに傲慢なため私が悪者になってしまう。ならばこの怒りを適当な事実に沿わせて正当化しよう。あるべき状態に戻さねばならない。

もちろん全てのT1の怒りのトリガーが常に理不尽であるわけではない。だが特に生得本能sxや健全度が通常~不健全のT1はしばしばこのような考え方をしてしまう。まるでやたら校則に厳しい、時に理不尽なまでの説教をする先生のようだ。そのような先生が自身の怒りを発散させるため、ルールを盾にし、必要以上の叱責をかます姿は想像に難くないのではなかろうか。

これはおそらく父親的存在との関係が影響している。
T1は父親的存在(自信を導いてくれるもの)から切り離されている。それ故に自分は何かを評価し導く存在であって、評価され導かれる存在ではないと思う傾向がある。
デフォルトの視点が物事を審査する側なのである。

不健全状態では自分の正しさを押し付けるようになることがあるが、通常状態であればそれは傲慢だ!と自覚することになるだろう。

そこで何をするか。最初に述べた通り怒りを隠すのだ。

怒りを隠せば傲慢な人間にならずに済む。また衝動的に怒るのは良い行いではない。怒りを隠して論理的に相手を正せば怒りの原因は排除される。そう考えることは特段珍しくはないかもしれない。

ちなみにT8は怒りが傲慢かどうかなど気にしないらしい。
T8が怒りを覚えるのは大切なテリトリを侵されたときに限る。怒る理由など「テリトリーを侵された」だけで十分であり、傲慢かどうか、論理的かどうか、相手を説得できるかどうかなどどうでも良いようだ。


ところで巷では「説明が悪口に見えるタイプが自タイプである可能性が高い」という噂が流れている。

後述するT8との比較のために、私なりのT1の恐れの解釈を先に書いておく。

おそらくT1の説明に書かれる「完璧ではないのを恐れる」は、物事の状態を指すのではないだろうか。T1は届かない理想へ手を伸ばす。自分が理想通り完璧な存在になるのを目指しているわけではない。そのため自分が完璧な人間でないことを恐れるというわけではないのだろう。

自分を完璧な人間だと思っているため堕落するのが怖い、ではなく、理想により近づくためには物事を抜け目なく整える必要があり、理想を目指すのをやめれば自分自身が堕落してしまう、という解釈の方が正確なのではないかと考える。

完璧を物事に求め、堕落しないことを自分自身に求めている。

ではここで3つの項目を提示しよう。

T1は届かない理想を追いかける。つまり自分自身を完璧だと思うことはない。
衝動性を持ちながら、それを制御しようと思っている。
T8は反応、衝動、攻撃性に焦点を当てて説明されやすい。

以上を踏まえると、自身の衝動性を後ろめたく思うT1がT8の説明を読み「確かに私には衝動性がある。そしてそのことに触れられるのは嫌だ。それに自分はT1の説明に書かれているほど完璧な人間になりたいとは思っていない。だからT8かもしれない」と結論づけることになるのではないか。

これは実際に私が経験した道だ。

③診断でT8が高く出た

T型のT1は事実を重視し絶対的な信頼を置く傾向にある。そのため診断の結果を過信しやすい。診断結果が最も信憑性の高い情報だと考えてしまいがちなのだ。

私はエニアグラムの診断(当てはまる個数や割合を一覧にして出してもらえるもの)をすると、大抵5・8・4もしくは3の順で高く出る。それが原因で5w4△548と誤認していた。いつやろうと1はそれほど高くは出ない。

前提として、診断は行動に現れている部分と自覚している価値観にチェックをつけるものだ。

それを踏まえて考えてみよう。②で述べた通り、T1は自身の衝動性を悪い意味で自覚している。基準に反するものを見ると衝動的な怒りが込み上げる。その攻撃性は理解している。そのためT8の特徴の、情動による反応的な性質が当てはまるように感じてしまうのだ。

また同じく②で述べた通り、T1はそこまで完璧な人間であろうとし、完璧さに執着しているわけではないのだろう(もちろん個人差はあるが、エニアグラム以外の要素も関わってくるため割愛する)。むしろ完璧なものの理想化にもはや意志は絡んでいないと言えるほど無意識な場合もあるのではないか。

T1とT8の衝動は①で述べたように全く違うが、比較対象がない場合T1が衝動性に着目してT8を誤認することは十分あり得る。

とはいえ多くの場合T1の衝動性は、第三者の目には抑圧されているように映るはずだ。T1とT8で迷うようなら(そもそもT8はT1と迷うこと自体少ないが)周囲の人に聞いた方が早い。

以上がT1がT8を誤認しやすい理由の考察である。

T8がT1を誤認しない理由

ではなぜT8がT1を誤認しにくいか。
それは至って単純。迷う要素がないからである。
①で述べたようにT1は情動を出力するときに一旦思考が挟まる。しかしT8は情動は情動として出力しており、それ以上でもそれ以下でもない。
衝動の発露の論理性について考えることがなければ言及することはないのだ。

私的にはT1は抜け目なく物事をこなすことや抜け目のない物事自体に価値を感じるが、T8はそこまで完璧に仕上げたところで何の意味があるのかと疑問に思うそうだ。T1は完璧を目的、T8は手段と考える傾向にあるかもしれない。T8の方から聞いた話だが、そもそも情報を出力するときに一旦止まって考えるという発想がないそう。

またT8は細かいことを気にしない。T1がこれを読んで「目につくことはいろいろあるがいちいち全てに口を挟むようなことはしない。よって私は細かいことは気にしないと言えるのではないか」と考えることはあり得る。しかしT8はT1の説明を読んでも、細かいことがそもそも目につかないためすぐに違うとわかるらしい。

T1はT8の衝動性や反応性にもしかして……と思うことがあっても、T8はT1の合理性や理想の追求にピンとこないようだ。

まとめ

私は本当に自分のことを理解していなかった。理解していない状態でタイプの候補を比較するのが無駄だと気づくのにも時間がかかった。

後悔することではないが、診断結果を眺めて何が正しいのか首を傾げる時間があるならディスカッションをして自己理解を深めた方がよほど有意義だったとさえ思う。

自分自身の全てを理解したわけではないが、少なくとも誤診を正したことによってより深く自己理解ができるようになったと感じている。

この記事を読まれた方々が新たな方向から自分と向き合うことができたら嬉しく思う。

参考文献

ドン・リチャード・リソ (著), ラス・ハドソン (著), 高岡 よし子(翻訳), ティム・マクリーン (翻訳). 2019年.『新版 エニアグラム【基礎編】 自分を知る9つのタイプ』. 株式会社KADOKAWA. 総320ページ

ドン・リチャード・リソ (著), ラス・ハドソン (著), 高岡 よし子(翻訳), ティム・マクリーン (翻訳). 2019年.『エニアグラム【実践編】 人生を変える9つのタイプ活用法』. 株式会社KADOKAWA. 総427ページ

イーライ・ジャクソンベア (著), 岡田 歩 (翻訳). 2022年. 『自由へのエニアグラム 自らの認識システムに気づき、真の幸せ、本性に目覚める!』. ナチュラルスピリット. 総400ページ



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