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消えた弔い:あとがき/解説

優しい文章が書きたい。

表現するということは、誰かに伝えるということです。
せっかく伝えるなら、その誰かにとって救いになるものをつくりたい。
これは、私が表現する上でのひとつの指標です。
長年かけて、好きな小説や作家さん、映画や絵画などのアートを振り返って言葉にできました。

そういえば、数年前の面接で
「あなたの夢は何ですか?」と聞かれて、
「自分のつくったもので誰かを救うこと」って答えたなぁ。
その前の面接では、
「あなたにとって幸せとは何ですか?」って質問に
「自分で決められるということ」と答えました。
どちらもその場で「うーん」って考えてひねり出した答えだったけど、
数年経った今でもあまり変わらない、的を得た答えだったのかもしれないと思います。



さて、今回は「消えた弔い」について少し説明しようと思います。

「消えた弔い」という言葉は、即興小説トレーニングというサイトでランダムに出てきたお題です。
(今調べたら別のサービスになってましたね、私割とお題探しに使ってたんですが。。。笑)

とむらい【弔い】(トブライとも)
①人の死を悲しみいたむこと。
②葬送。葬式。のべのおくり。
③法事。追善。

『広辞苑 第七版』岩波書店


「弔いが消えるって、どういう状況だろう?」
ふと、私の地元東尋坊が思い浮かびました。

東尋坊は雄大な景勝地でありながら、自殺の名所としても知られています。
ただ、商店街の方やNPO法人の皆さんによる地道で真摯な見守りにより、近年はずいぶん自殺者数が減少しています。
NPO法人 心に響く文集・編集局 の茂さんをはじめとする商店街の皆さまのご活動には、本当に頭が上がりません。
是非、気になる方はたくさん記事などが出ていますので、調べてみてください。

また、東尋坊には少し変わった電話ボックスが存在します。
お金や聖書が置かれている、崖の近くの電話ボックスです。
(ここでは用途の説明は省きます。)

今回、この話を書こうと決めた直後、久々に現地に赴いてみました。
(東尋坊にはよく訪れますが、電話ボックスは人通りの多い場所から離れているため、あまり目にすることはありません。)
改めてその電話ボックスを目の当たりにすると、たくさんの人たちの祈りのもと、設置され守られているものなのだと感じ、実は、このテーマで文章を書くことを少し、迷いました。
だけど、見せるか見せないかは後から決めればいい。
その時はとにかく書きたかったので、一人取材を終えてすぐ、1時間程度でこの文章を書き上げました。

まだ、私の中で「誰かを傷つけてしまうかもしれない」という思いは消えていなかったのだと、今なら分かります。
この文章を書いたのは2022年7月です。
人に見せてもいい、と思えるまで、8ヶ月もの時間を要しました。

「消えた弔い」「東尋坊」「電話ボックス」

これが、この小説を構成するキーワードです。

実は、私は表現したものをあまり解説したくはありません。笑
読み手によって受け取るものが様々であることが、創作物の魅力だと思っているからです。
ただ、届けたい人たちの中に、その受け取り方がまだ分からない人たちもたくさんいることにここ数年で気づいてきました。

以下、解説の項目は、読みたい方だけ読んでください。
できれば、一度本編を読んでみて自分が何を感じたかを味わってから、解説を読んでいただけると嬉しいです。

それでは、今回もお付き合いくださりありがとうございました。
次回作もゆるりと、更新していきますね。



【解説】
★「ガタガタッ」の前後で世界が変わります。
(お前がいない世界から、お前がいる世界へ。)

【根拠となる描写】
※前後で変化するもの
・「磯の香りをのせた乾いた風」
 →「湿った、しかし匂いのしない風」
・「兄と妹」「じゃれ合い高らかに笑い」
 →「姉と弟」「服を掴み合いながら喧嘩に勤しんで」
・普通に右利きとして受話器や小銭を持つ主人公
 →左利きとしての主人公
etc…

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