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弛緩性片麻痺患者の上肢機能


上肢弛緩性麻痺

回復期病棟では弛緩性片麻痺患者に遭遇することが多く、下肢の弛緩性麻痺に対してはエビデンスの高い装具療法が早期から用いられることが多い印象です。
それにより早期から立位や歩行といった重力位でのリハビリが可能となり、最終的には歩行が可能となる場合も認めます。

しかし、上肢弛緩性に対しての文献は少なく、早期からの運動療法も確立されていないように思います。

下肢の機能は向上しているけど上肢が弛緩である為、

ADLにおいても反映しづらい。
入院から退院まで筋緊張に変化なくstageⅠのまま。など...

↑このような経験をされた方も多いのではないでしょうか?

そのため、自分なりの経験と知識を基にまとめてみました。↓↓ 

上肢への気付き

①上肢弛緩性麻痺を呈した患者はそもそも自身の上肢の存在に気付いていない場合がある。
②弛緩性麻痺であるため非麻痺側上肢の過活動により半球間抑制が働き、更に上肢機能低下。
③弛緩性麻痺のままであり三角巾を使用したまま退院される。

以上のような状態が臨床でもかなり多いかと思われます。下肢に対するアプローチも必要ですが、自分としては上肢弛緩性麻痺に対し早期からのアプローチが重要だと考えます。

ではどのようにアプローチするか、自分なりの考えを順番に解説していきましょう。

評価と治療

まず①の場合、指示理解がある方であれば、閉眼状態で麻痺側上肢の位置を問います。この時はざっくりで構いません。位置関係がわかっていれば次に肩や手首など段階的に詳細な部位を質問します。
非麻痺側上肢から麻痺側上肢に対してself tochが可能かどうかで評価します。
self tochが可能であれば自身のボディスキーマはさほど問題無さそうであると判断しています。
もし気付きがない場合は、そもそも自身の身体所有感が低下している可能性もあるので、質問をより簡潔にします。

例)身体の真ん中はどこですか?
胸はどこにありますか? など...

いずれにしても弛緩性麻痺であるため自身での収縮は難しいため、他動的なリハビリになると思います。
その為には

上肢の重量を軽減する事が大切であると考えています。

そもそも上肢の質量は身体の約9%であり肩甲骨関節窩に対して上腕骨頭が30°後捻しています。
脳卒中患者では胸郭からの屈曲が強く上肢は更に内旋位で固定している方が多い為、胸椎の伸展がある程度作れないと上肢機能にも大きく影響します。

治療としてはテーブルの上に上肢を置き、上腕と肩甲骨の位置関係を修正しながら肩甲上腕関節に対して圧覚や振動覚を入力していきます。
初めはセラピストが他動的に誘導しながらでも、僅かに収縮が確認されると、頸部の回旋や非麻痺側上肢の活動を取り入れても構いません。勿論この時も肩甲上腕関節に圧を加えたままです!
なぜ非麻痺側上肢を使用するかと言うと、多関節運動を行う事で、腕、手、足、体幹に存在するバイラテラルニューロンを働かせる為です。これは両側性ニューロンであり、特に肩に多い事が知られています。これを応用すると、

座位から立位で運動することにより、
上肢、体幹、下肢の動きが関係してくるのでよりバイラテラルニューロンや皮膚関節組み合わせニューロンが活性化できると考えています。

↑自分が経験させて頂いた現場ではこれらにより、肩の収縮や手関節背屈の随意的な動きが確認されました。注意機能障害がありながらも、他動的に誘導がある程度できれば収縮が確認出来ると思います。


以上が僕が考える上肢弛緩性片麻痺における考え方でした。今回は簡単に説明させて頂きましたが、ご意見やご感想があれば更に深くしていこうと考えていますので、これからも宜しくお願いします🤲

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