長下肢装具の適応と治療方法
理学療法士 ゆうきです。
今回は長下肢装具の適応と治療方法についてお話ししたいと思います。
はじめに
臨床で長下肢装具を使用されている場面は多く、早期からの立位や歩行といった重力位での運動が可能であり、脳卒中治療ガイドライン2009,2015でも早期からの装具療法はgrade Aと表記されています。
しかし、長下肢装具の適応と使用方法を理解していない場合、↓
とりあえず下肢の支持性が乏しいから装具を装着して歩行練習...
なんて事も十分に有り得ます。
そうならないよう理論立てて説明ができるようになるには、適応と使用方法、歩行における運動学や神経システムについて理解を深める必要があると思います。
※今回は適応と使用方法について解説していきたいと思います。↓↓
長下肢装具の適応と目的
長下肢装具の適応として、
覚醒レベルの改善、膝折れ、弛緩性麻痺、反張膝
など様々です。
これらを改善することで、最終目的とされている移乗や歩行の獲得を目指す方が多いかと思います。
しかし、
長下肢装具→歩行
と考えられているセラピストも少なくありません。
そのため、長下肢装具を使用し歩行を行うことについて考えてみました。↓↓
長下肢装具を使用しての歩行におけるメリットとデメリット
まず、メリットとして早期からの歩行によって歩行に類似した下肢の筋活動が生じます。下肢弛緩性麻痺の患者では筋収縮が不足しているので、脳卒中後早期から下肢の収縮を与える意味ではOKかと思います。
逆にデメリットとしては、正常歩行における下肢の筋活動では大殿筋でさえも20%程度であり、下腿三頭筋が唯一50%、それ以外は20%以下です。
このことから、大きな筋活動が与えれない上に足関節背屈を角度をフリーにする事で下腿三頭筋の筋緊張が亢進しやすくなる、ということです。
もう一つは、、
膝関節運動が阻害
されてしますので、長下肢装具を除去するタイミングがかなり重要となります。
しかし、歩行に必要な神経システムを考えると早期からの歩行だけでは実用的な歩行に繋がりにくいと考えています。実用的な歩行獲得の為には立位保持からの練習が重要です。
自分が行う治療とその考え
僕は下肢弛緩性麻痺の患者に対して、立位保持から練習しています。
....と言うのも、ヒトは直立二足動物であり赤筋繊維が50%以上の割合を占める大腰筋が発達しています。この筋は脊柱に付着しているので姿勢安定筋(抗重力筋)として働きます。
立位時では足底からの荷重が大腰筋の作用で体幹が後方に倒れないように自動的な姿勢保持システムとして働きます。この大腰筋が働かないと網様体脊髄路が賦活されないとも報告されています。
直座位において骨盤は20°後傾しており、脊柱は後傾した骨盤の上に位置します。しかし立位であれば、骨盤は直立となり、体幹は自然と乗るため大腰筋が働きやすいポジションとなります。
そこに下肢の膝折れが影響するため、長下肢装具を使用するわけです。
大腰筋が上手く働くと網様体脊髄路が活性化するので、そこから歩行における神経システムの駆動にもアプローチが可能となります。
※歩行に必要な神経システムは後日note作成します。
立位保持練習において、まず足関節底背屈0°で固定し、ある程度立位の介助量が軽減すると今度は足関節ロッドを少しずつ緩め前後の姿勢制御を練習していきます。長下肢装具は距骨下関節の動きを制限するので、前後の動きが重要だと考えています。
少しずつ前後の動きにも対応が可能となればステップ練習や歩行練習を進めています。
まとめ
①長下肢装具の使用により早期から立位や歩行練習は可能であるが、治療方法や理論が不足していると、
長下肢装具→歩行といった考えに偏ってしまいがち。
②実用的な歩行を求めるには、歩行の運動学や神経システムの理解が必須であり、優先順位としては立位保持練習による大腰筋の自動的な収縮が重要であると考える。
③ある程度立位保持が可能となれば、足関節ロッドを調節しながら前後方向への制御を練習し、ステップや歩行
練習を進めていく。
今回、長下肢装具の治療と考えを簡単に説明しましたが、歩行における運動学や神経システムについては殆ど述べていませんので、次回noteに記載していきたいと思います。
今回の内容に対する僕なりの考えが、
少しでも皆さんの臨床に役立てると幸いです。。
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