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いきものがかりというバンドについて

いきものがかりが好きだ。

彼らは私が中学生の時に人生で初めて好きになったバンドである。出会いは3rdシングル「コイスルオトメ」。発売する少し前からバンド名だけ知っていて、「なんか、変わったバンドだなあ」とだけ思っていた。ちょっとあとにシングルの発売時期にテレビで流れていたCMを見てなぜか分からないけど急激に興味を惹かれて、数日後に彼らが出演したミュージックステーションを偶然見た。「好きだよ大好きだよいつまでもいっしょ/恋するあなたにはあたしだけなの」と歌う吉岡聖恵さんに一気に心を掴まれ、翌日すぐにTSUTAYAにCDを借りに行った。忘れることもない、私と彼らの出会いである。

それからは早かった。中学生の私は学校でもあまり楽しいこともなかったけど、いきものがかりと出会ってからは人生が変わった。出会う前の作品(インディーズ作品も)をYoutubeで漁ることが日々の糧になった。人生で初めて買ったCDは「流星ミラクル」。人生で初めて買ったフルアルバムは「桜咲く街物語」。歌詞カードを見ながらカップリング曲まで繰り返し聴くことや、フルアルバムというものをきちんと最初から最後まで通して聞いたのは初めての体験だった。1stアルバム「桜咲く街物語」2曲目の「KIRA★KIRA★TRAIN」という曲に「なんていい曲なの!!?!?!?」と衝撃を受け、いてもたってもいられなくなって、「この曲好きなんだけどいい曲じゃない?」と言って無理やり母に聴かせた。いきものがかりの曲はどこか昔の歌謡曲に通ずるところがあり、母もすぐに気に入って「いい曲だね〜」と言ってくれて、何度も一緒にアルバムを聞いた。

高校生になり、「彼らのライブを見に行きたい、ファンクラブに入りたい」と母に申し出た。なんとか許してもらえて、ライブにも行き始めた。母と一緒に行った公演もたくさんあるし、ネットでできたファン友達とも会場で会うようになった。冴えない学生だった私は、なんだかぼんやりと、人生で初めて「居場所を見つけた」と思った。

歳を取るにつれて熱量の波はあれど、高校〜大学、社会人になってもコンスタントにライブに通った。友達の輪も少しではあるけれど広がって、ライブツアーから単発イベント、ラジオの公開収録などたくさん足を運んだ。いきものがかりの現場を理由にして友達に会うのが好きだった。「私たち社会人になっても"今日の横アリ当日券出るらしいけど行く?"とか言って会場で会ってそうだよね笑」なんて友達と話していた。きっと私たちの未来はその通りだと思っていた。就職して仕事を持ち、たとえばそのうちそれぞれに家庭を持ったりしても、そんな感じでいきものがかりは人生を通して私たちの「帰る場所」だと思っていた。私は彼らに「音楽」を教わっていろんな音楽に触れるようになった。友達もみんなそれぞれにそんな感じで、いろんな方向に趣味を広げている。でもやっぱり、共通するのは「私たちの原点はいきものがかり」だった。だからツアーがあれば年に数回は集まったし、そんな関係性がとても尊かった。もちろん今でも尊いし、大事な友達だ。


そんな「私の人生を変えた」といっても過言ではないいきものがかりの形が変わると、数日前に発表された。アコギ担当の山下穂尊さんがいきものがかりを離れること、そして芸能界を引退することが発表された。


いきものがかりの3人は高校時代からの友人だ。そんな人たちが20年も、今に至るまでに第一線で一緒に活躍していたこと自体が奇跡にも近いことだと思う。40歳を目前にして、「一人の人生として」進むべき道を考えるのも無理はない。

私は今までいろんな「脱退」を経験してきた。FAX1枚で終わらせられたこともあった。理不尽な別れをたくさん経験した。何で、どうして、いつから、何が原因で、と、どれだけ考えても知り得ることもないようなことに悶々とすることもあった。だけど、何を言っても結局は「彼(ら)の人生なのだから」と言うしかなかった。自分は転勤のある会社に総合職で入社しておきながら「転勤って言われたら最悪転職するかな〜」なんていうくせに、好きなアーティストには「いなくならないで」なんて言葉を簡単に吐いてしまう。自分勝手すぎる。ファンのエゴだ。

山下さんは7月末で引退する。だけどその前に3人での配信ライブもあるし、それまではレギュラーのラジオ番組もテレビ出演もこなす。突然ではない、お別れまでの猶予が与えられているのである。なんてありがたいんだろう。そう思いつつも、どうしても寂しい。悲しい。いなくならないでほしい。ずっとそこにいてほしかった。だって彼は、3人は、私の人生を変えてくれた人なのだから。

どうしたって寂しくて悲しい気持ちの合間で、それでも今まで味わわせてくれたたくさんの素晴らしい時間を思い返している。好きだと思えることに出会わせてくれて、大事な友達に出会わせてくれて、幸せな思い出をたくさん作らせてくれた。遠征でいろんなところ行ったな。あのライブの後居酒屋であんな話したな。楽しかったな。本当に楽しかったな。思い出すのは、そんなキラキラした時間だけなのだ。

6/11(金)、3人での最後のライブが配信される。私はこのツアーの地方公演を(コロナ的迷いがありつつも)見に行ったけれど、本当にすばらしかった。去年事務所を独立した彼らはとてもすっきりしたように見えたし、正直個人的に少し懐疑的だった「独立」ということに対しても、「独立したのはきっと正解だったんだね」なんて思えるほど肩の力が抜けていて素晴らしいライブだったのだ。ここまで足伸ばして見にきてよかったね、これ見てなかったらきっと後悔してたね、なんて言っていたけれど、それが今になって違う意味になるなんてね。


いきものがかりの3人に出会えてよかった。だって人生が変わったのだから。気持ちの整理として山下さんに対してのありがとうとさようならを言おうと思ってこの記事を書き始めたけれど、それを言うのはやっぱり最後の日を迎えてからにしよう。

6/11の配信ライブはひとりで見る勇気がないから、実家に帰って母と一緒に見る予定。きっとべしょべしょに泣いてしまうだろうな。


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