輝き人! NO.17 辻 詩音 / Shion Tsuji 前半

本当に好きなことって何ですか?
今いる自分の環境は、自分のやりたいことができるところですか?
やるべきことにやりたいことが打ち消されている生活を送っていませんか?
本当に輝いている人って、好きなことをやって、それで結果を残している人。
今回はそんな輝き人である辻詩音さんをご紹介します。

―PROFILE-
辻 詩音
Tsuji Shion
1990年1月10日生まれ。神奈川県横浜市出身のシンガーソングライター。
幼少期から作詞を行い、15歳の時にギターを使い作曲を始める。自身が18歳となる2008年に「Candy kicks」でメジャーデビュー。これまでにリリースした楽曲の多くは映画・アニメ・CM等に使われ、毎年全国各地の音楽イベントに多数出演。自身の等身大の思いを綴った歌詞とポップなメロディーが同世代の方を中心に支持されている。

interview

―小さいころから、作詞をされていたんですね。
辻:私は一人っ子だったので、一人遊びの延長で曲を作っていたんですけど、ギターを使ってコードを付け始めたのは15歳の時です。それまではずっとアカペラで曲を作っていました。
―ギター始めてから作詞というのが王道ですよね。
辻:小さい頃だったので、ギターを弾くという考えもなくて、ただただ浮かんできたメロディーを自分のためだけに遊びで歌っていたので、アカペラでもいいかなって。でも、それを人に聞いてもらいたいなって思って、ギターを始めました。
―最近は“ギタ女”ブームですよね。そこについて感じることはありますか?
辻:私がデビューをさせてもらった時は今ほど“ギタ女”みたいな括りがなくて。今はいろんなメディアが“ギタ女”っていう特集を設けて取り上げたりしているので羨ましいです。
―その分、ライバルも増えますね。
辻:そうですね。でも、私はギターが好きで始めたんではなくて、あくまで自分で曲を作りたくて、その手段で始めたんです。
―ギター以外にやってみたい楽器は何ですか?
辻:まだ本格的にやったことはないんですけど、ドラムをやってみたいです。なぜなら、かっこいいからです。最近はギターからじゃなくて、パソコンで曲を作ることが多いです。
―どうしてギターからパソコンに?
辻:ギターから曲を作っていると、だんだん同じような曲が増えたりとか、同じようなリズムが増えてきてしまうんです。なので、そういったマンネリ化したものではない曲や鼻歌から始まる曲を作りたいと思って、パソコンから作り始めるようになったのですが、そしたらこれまでとは全く違うテイストの曲ができるようになりました。
―具体的には?
辻:楽曲の中にアコースティックの要素がなくて、もちろんギターの曲は入ってない。その代わり、打ち込みでしか出ない音や電子音が入ってきたり。こうやって机を叩いたり、お玉とかを鳴らして、そこから曲を作ったりとかもできて、そういう幅広い音での表現が可能になりました。
―いろいろ挑戦されているんですね。
辻:そうかもしれないですね。楽器じゃないもので曲を作るというのが面白いです。
ギターから作ると、この曲の最後はこういう風になるだろうなって予想できちゃうんですけど、ギター以外のものが入ってくると予想できない変な曲がたくさん入ってくるので最後までワクワクという感じで。
―変な曲というのは?
辻:私は小さい頃、具体的には7~8歳の頃に曲をたくさん書いていたんですけど、そこに戻りつつあります。その時は『ぱむちゃん』とか、そういうタイトルの変な曲を作っていたんですけど、そういった遊び心のある“おもちゃ”っぽい曲が生まれました。
―ギターから作る曲と、それ以外からの曲ではどちらが好きとかありますか?
辻:両方好きで、どっちも入っているアルバムを作れば、すごくバラエティーのあるアルバムを作れると思って。ギターだろうが、それ以外から作曲しても、どっちも自分だと思うので、そんなアルバムを作れたらいいなと思います。
―どっちかといったら?(笑)
辻:そこは決めないといけないんですね。(笑)多分、人って時期があるじゃないですか。だから、ひとりの人間の中にヒストリーが存在して、縄文や江戸という時代があると思うんですね。(笑)私にとっては、ギターを持っている時は江戸時代くらいで。だから、これからは変わっていくと思います。
―では、平成はどんな感じになるんでしょうか?(笑)
辻:今は平成ですよね。(笑)一番は自分が飽きたくないなって思っているので、自分が飽きない曲を作りたいっていうのが今の目標です。
―自分が飽きない曲と、世間が自分に求める曲の相違が生じたらどうしますか?
辻:すごくそれは難しくて、最近いろんな人と話す機会があります。他のアーティストの方とも話すことがあるんですけど・・・。でも、自分がやりたい100%を誰の目も気にせずにやって、それがお客さんの目に映った時に、自分がそこで堂々とやっていれば、きっとお客さんもこれもありだなと思って受け入れてくれると思うので、今はそこを目指して、開き直ってやるだけです。

―15歳で高校を退学されて、音楽一本でやっていく決意をしたって伺って、すごく行動力がある方って思いました。
辻:なんとなく学校に行っていたんですが、いつか特別な存在になりたくて。“多分このまま学校にいても、勉強が嫌いな私は学校という場所では一番にはなれないな”って思ったんです。だったら“私の一番得意なことはなんだろう”って思ったものが音楽だったので、それを極めるために音楽しかない環境にわざと自分を追いやりたくて、退学しました。
―学歴があったら、今より売れる要素が一個増えるとは思いませんでしたか?
辻:急遽、私が高学歴ですか?(笑)でも、勉強が嫌いなんです。性格があまり長続きしないので、好きな事しかやりたくない。この先の人生も、多分そうだと思います。好きなことをやって、嫌いなことを全部排除していたら、音楽の人生になりました。
―好きなことで生計を立てて行けるという自信があったんですか?
辻:根拠のない自信がありました。当時はまだ1曲しか自分の持ち歌をギターで弾けなかったんですが、これはもう売れると思って、その曲ができた次の日に、その曲を持って路上ライブに行って、4~5時間永遠にその曲だけをやっていました。
―今振り返ると、その自信はどこから来ていたと思いますか?
辻:恐ろしいです。(笑)本当に根拠のないものでしたし、若さもあったと思います。でも、それがなかったら、こうして取材も受けていられないから、多分そういう思い込みが激しい所が才能なんだと思います。
―そういう感じですと、もしかしたら人生踏み外しちゃうかもしれないですね。(笑)
辻:そうなんです。(笑)もうスレスレです。良い方に行けば良いのですが、悪い方向を信じたら一気に踏み外しますから、人生綱渡りですよ。(笑)それは何の仕事をしていても、変わらないと思います。でも、歌手は一夜にして、色んな人に影響を与えることもできるから、そこはやりがいですね。芸能界は賭けの世界であることに変わりはないのですが。
―賭けの世界にいて、不安などはないですか?
辻:でも、その方が楽しいかなって。それこそ明日死ぬかもしれないから、今やりたいことだけをやろうって。人生は短いので、常に楽しまないと。
―シンガーソングライター辻詩音を作っているものって、性格的な部分が一番大きいんですか?
辻:そうなんですかね。ただただ理由も無く、自分を信じているっていうのはあります。
―自分と向き合う時間はありますか?
辻:それは、小さい頃から好きでした。ずっと毎日今の自分は何を考えているんだろうとか、自分によく質問をしていました。今の好きな色はとか、最近聞いた言葉で一番心に残ったものはとかを月に一回ノートに書いていました。今でも自分と向き合うことをしています。
―最近は、どういうことを自分に聞いているんですか?
辻:雑誌などのインタビューで、よく100問100答というのが良くあるじゃないですか。それの問いをメモして、答えを自分の中で考えて書いたりして、自分を探したりとか。“私は今何を考えているんだろう”とか自問自答して、自分と向き合っています。
―最近は具体的にどういうことを考えられていますか?
辻:最近はアイデアですね。いつもノートを持ち歩いているんですけど、アイデアをメモすることが多いです。“次に出すアルバムのジャケット写真はどういうのがいいかな”とか。その絵をノートに描いたりとか。あとは、これはただのアイデアなんですが、“こういうアルバイトがあったらいいな”とか。具体的には、ラブレターの赤ペン先生があればいいと思って、それは時給がいくらでとか。(笑)
―妄想好きのきっかけは何ですか?
辻:小さい頃はひとりっ子だったので、そういう遊びでしか時間を潰せなかったんです。今もひとりが好きで、そういう遊びを突き詰めると、そこから曲が生まれることも本当に多いんです。
―大勢でいる時と、ひとりでいる時のどちらが好きですか?
辻:ひとりが好きです。せいぜい3人が限界です。
―そこのアレルギーは治らないですか?
辻:全然いてもいいんですけど、少人数の方が深い話ができるじゃないですか。
―大人数だといろんな意見がでてきて。
辻:たしかに。でも、大人数でいるようの自分と少人数の時の自分ってみんな違うから、大人数で盛り上がっているときって深い話をするっていうより、そのときの空間を楽しんでいるって気がするんです。だからお互いの話を深く話すってなると私は少人数の方があっているのだと思います。
―具体的にどう違いますか?
辻:大人数の時はほとんど喋りません。誰かが喋ってくれるので、私が話す必要はないと思っちゃいます。
―だから、少人数だと話せちゃうみたいな。
辻:そうですね。しかも、人見知りが激しいので、人ごみとかダメです。人ごみの中に行くときは音楽を聴いています。iPodが必需品ですね。
―本質的には同じ辻詩音なんですけどね。
辻:でも、私は創作というのが好きで、それはひとりじゃないと出来ない気がして。人数が多ければ多いほどいろんな意見が入ってくると、迷っちゃうから。だから、最後まで自分ひとりで作るために、楽曲を作る時は少人数のほうがいいのかもしれない。
―ひとりの時間を大切にしているんですね。
辻:こういうインタビューを受けるにも、まずひとりで一回カフェとかに行って、ちょっと考えてからとかじゃないとできないです。気付いたら、勝手にそうなっていました。
一方で、音楽の時は最後まで自分の意見を通したことがいいこともあるんですけど、例えばアーティスト写真を撮る時って、自分がいいと思う写真と他人がいいと思う写真って本当に違うから、それは人の意見を聞かないといけないなと思う時がありますね。
―自分の意見と他人の意見、最終的にはどちらの意見を大切にしたいですか?
辻:私は大人になったと思っているので、人の意見をすごく聞いている気持ちでいるんですけど、いまだに“自分の意見を最後は信じるね”って言われます。だから、自分だと思います。
―頑固なんですか。
辻:そうだとは思わないんですけど、そう言われることが多いです。(笑)
―どうしても、自分の中で変えられない部分があるということですか?
辻:本当に感覚で生きているので、“こっちの方が良いんだろうけど、なんか気持ちが悪いなってなると、その感情を無視できなくて、なんか嫌です”みたいになって。でも自分ではそんな感覚を大事にして、それを信じることにしています。

―音楽的な軸はありますか?
辻:一番は自分で曲を作ることです。人の曲を歌うのは違うかな。“シンガーソングライター”であれば、何をしても自分だと言えます。
―辻さんは、世間に出ていない曲が多いですよね。そういう曲を出そうとは?
辻:出したいです。ライブなどではやっているんですけど。まだ出していない曲をたくさん入れたアルバムを近いうちに出したいと思っています。
―それらの曲は小さい頃に書かれたものですか?
辻:それもあります。最近書いた曲もまだCDというふうになっていないものが多々あります。
―小さい頃書いた曲が今こうして世間に出ようとしているんですね。小さい頃から相当才能があったんですね。
辻:小さい頃の曲は日本語としてもちゃんとしていないので、今見るとすごく恥ずかしい気持ちになります。でも、その分当時の曲はエキセントリックな部分が多いので、そこは小さい頃の自分に負けちゃいけないなって思います。
―実際は負けていますか?それとも、勝っていますか?
辻:今のところ、まだ接戦でしょうね。(笑)
―小さい頃の自分にあって、今はないものは何ですか?
辻:やっぱり経験をすると、頭で考えちゃうことが多い気がします。“これをこのままやっていたら、結末はこうなる”とか予想をしちゃうけど、それをなんとか失くして、ドキドキすることだけを信じてやらなきゃいけないっていうのがいつも思っていることだし、同時にそれが今一番の自分の課題だと思います。
―そこの点で工夫していることは?
辻:なるべく小さい頃好きだったご飯を食べる。たくあんが好きだったんですけど、今でもそれをよく食べています。
―小さい頃はどんなお子さんでしたか?
辻:昨日ちょうど小さい頃の写真を整理していたので、これをお見せしますね。
変顔しているんですよ。(笑)

―小さい頃に強く感じていたことは何でしたか?
辻:ずっと人生について考えていました。人生についてのあらゆる疑問を、ノートにそれを書くことが多かったです。今もそのノートがいっぱい出てきます。
―どうして小さい頃に人生なんて考えられましたか?
辻:暇だったんじゃないですか。そういう子どもだったんでしょうね。よく分かりません。(笑)
―当時は自分自身や社会への不満などを感じていましたか?
辻:10代の時は、大人になる・ならないっていう悩みがすごく多くて、それをずっと歌詞に書いていた気がします。
―どういう部分を見て、大人になりたくないとか?
辻:大人っていうのが全部納得していないのに納得しているように言ったりとか、自分の偉い人だけに良い顔しなきゃいけなかったりとか、そういうのが嫌で大人になんかなりたくないっていう歌を歌っていたような気がします。
―今の辻さんはそういう部分を持っていると思いますか?
辻:でも、10代の時に大人は嫌だという曲を書いたのに、大人がそれをいいって言ってくれたんです。だから、デビュー出来たんですけど。私が思う大人と、実際の大人ではギャップがあったんです。私自身も大人と呼ばれる年になって、あの頃はこう見えていたけど、その時に見えていた大人も同じ悩みを持ちつつやっていたんだなっていうのを感じて、そこでまた悩みが生まれて、この気持ちをどうしたら良いんだろうって思って、また曲を書いてみたいな。今は、じゃあこれからどういう大人になればいいんだろうっていう悩みが出てきました。
―では、この先どういう大人になりたいですか?
辻:ドキドキしたことを信じてやるような大人になりたいです。“こうした方がいいからやる”っていうのを選ぶんじゃなくて、“こうした方がいいかもしれないし、それをしないと損するかもしれないけど、自分が本当にやりたいこと、ドキドキする方をする”大人になりたいと思います。
―刺激的な人生を歩んでいきたいみたいな。
辻:そうです。安定な生活って言っても、どこで何があるが分からないじゃないですか。だから、その日、その日を真剣に生きたいです。


 
取材協力:e-smart inc.

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