モンスターオジサン(現実世界でハーレムは無理なので異世界で作ってみた)

エピソード4  新世界

顔を撫でる生暖かい風が心地良い、背中に触れる草の柔らかさもまたなかなかに気持ちいい。
重い目蓋を開くと少し紫がかった空には白と藍色大きな月のような丸い天体2つ重なって見える。
そう、俺はついに異世界へと転生したのだ。

信士『、、うわぁ、、。マジで異世界じゃん。』

そんな当たり前の事を一人で呟いていると肩から黒い触手が伸びてきて軽く俺の頬をつつく。

ギロ『ギロ!ギロロロロ?(おーい!大丈夫ですか?)』

どうやらいつまでたっても目が覚めなかった俺の事を心配してくれていたみたいだ。

信士『、、ちょっ!くすぐったいぞギロ!!。心配した?(笑)大丈夫大丈夫。今、全身全霊で異世界を堪能してただけだって♪』

そう言いつつ、ギロを優しく撫でた。
それにしても身体がやたらと敏感だなぁと思ったら全開で裸なんだが。
それにそこには嫌ってほど何度も見てきた、馴染みの深いぽっこり中年太りの腹が見える。
どうせなら前世と同じ姿ではなく、せめてそれなりの若くてイケメンに転生したかったんだがまあ、それは高望みし過ぎなのかもしれない。
そんな事を内心思いつつ、身体を起こす。
まさしく生まれたままの姿、どこからどう見ても丸裸。
まあ、前世なら即逮捕ものだが、そうここは異世界!!しかも、なんと人間が一切居ない世界だって言うんだから全裸でも良い。
なんなら、ちん○も全開で見せちゃう。
俺はその場で両手を腰に当てて仁王立ちしてみた。
生暖かい異世界の風が全身を吹き抜けるのが妙に心地良い、そんな変な癖に目覚めそうになる俺を止める存在が居た。

ギロ『、、、、、、。ギロロロロロ。(なにやってんですかあんたは。)』

大きな目で冷めた眼差しを向けてくるギロ、ついでに黒い触手を器用に使って軽くビンタされる。
頬に感じる痛みがここが現実の世界だと実感させてくれた。

信士『、、、なんかごめんなさい。テイションがバグってたわ。』

謝る俺と冷ややかな目でこちらを見続けるギロ、2人の凸凹コンビはついに異世界へと舞い降りたのだ。
辺りには見たことがない草花や木々、遥か空の上には見たことがない鳥らしき生き物も飛んで居る。
まさに心踊る、そんな景色を無我夢中でその目に納める。
すると、突然肩にのって居たギロが震え出すとギロの上の方に口が出来上がる。

ギロ?『、、あー!もしもし、、!聞こえとるか?こちら女神、こちら女神。応答せよ!!』

そこからはつい最近聞いた事がある声が聞こえてきた。

信士『はい?こちら信士、、、。えっと、もしかして女神様が喋ってたりします?』

すると、どうやらご本人で間違いないとの事。
しかし、それにしてもまさかギロにケータイ機能があるとは驚きである。
それにしても突然悠長に話すギロには心底びっくりしたが。

女神様『そうか!そうか!無事そっちに着いたのだな!!さて、これでやっとゆっくりと話が出来るぞ!こちらの世界とそっちの世界とでは時間軸が違うのでな。こっちの世界での1分がそちらの世界での1日に相当するからのぅ。それでどうじゃ?新しい世界とやらは?』

どこか嬉しそうに話す女神様。
どうやら彼女がやたらと急いでこちらの世界に俺達を送るのを急かしていたのにはこういう理由があったみたいだった。

信士『はい♪!!とてつもなく楽しませてもらってます!!見るもの見るものがどれもこれも新鮮で楽しいです。ただ、、、。その、、裸なのは何とかなりませんか?流石にこのままマッパで生活するのは恥ずかし過ぎると言うか。不便というか。』

俺がそう言うと、少しだけ間が空いて女神様から提案が返ってきた。

女神様『ふむ!確かに、あの世界からこちらの世界に来たのなら何かと用入りだろうなぁ!よし!お主に我の加護をやろう!ついでにギロにも色々なスキルを追加しておいてやろう!』

そう言うと、俺の全身が淡くどす黒いオーラに包まれる。
同じくギロも淡く光る。
すると頭の中に何かアナウンス的なものが流れ込んできた。

[本田信士 36才 人間族 男 邪神の加護(微)を獲得]

[ギロ 年齢不明 邪神の分神体 性別不明 スキル 創造を獲得 スキル 仮想空間収納を獲得]

と何やら俺達は女神様から加護とスキルを与えてもらったみたいだった。

女神様『どうじゃ?これで少しは暮らしやすくなるとおもうぞ?ちなみにお主が望むならもっと加護の力を強くする事も出来るがどうする?』

そう言われて少し悩みつつ女神様に聞き返した。

信士『あの、この邪神の加護(微)ってどんな効果が有るんですか?』

すると女神様は楽しそうに。

女神様『うむ♪それの効果はのぅ、異常状態耐性、痛覚耐性、恐怖耐性、ステータス上昇(微)、あと、鑑定ぐらいかのぉ?もっと加護の力を強めれば更に強力な力も使えるようになるぞ?まあ、ただし力が強くなればなるほど理性が崩壊して、やがては敵、味方の区別もつかず暴走する化物になってしまうがな(笑)がっははははは♪』

いや、笑い事じゃないでしょうなどと内心思いつつ愛想笑いをする俺。

信士『ははははははぁ。今のままで結構です。』

そう言うと少しだけ残念そうに女神様から返事が返ってくる。

女神様『そうかぁ、、、。残念じゃ。まぁ、いつでも気軽に言ってくれればいつでも強化してやるからの♪おっと、こちらも騒がしくなってきたようじゃ、それじゃ異世界を楽しんでくれ♪まったのー!!』

すると、ギロの目の色が紫色から元の黒目に戻る、どうやら女神様との通信が切れたようだった、正確には一方的に切られたと言った方が正しいが、それにしても嵐のように来て嵐のように去っていったなぁ。
素直にそんな事を思っていると、不意に頬をつつかれる。

ギロ『ギーロ!ギロロロロ!ギロ!!(女神様はお忙しい方ですから、それよりも女神様から服を何とか出来るスキルを授かりましたので、早速試してみますね。)』

そう言ってギロが目の前に広がっていた草花を器用に触手を伸ばしては刈り取る、それと同時にもう一つ伸ばした触手の先を掃除機のホースのように変化させて物凄い勢いで吸い込んでいく。

信士『おおお!!なんでも出来るなギロは!!お前!!最高かよ!!♪』

そう言いながらギロの作業の邪魔にならないよう少しだけ遠慮しつつ、ギロの頭を指で軽く擦った、一瞬ビクッと驚くギロだがすぐにとろけた表情で喜ぶ。
ふふふ、わかりやすくてういやつめ!!
そんなこんなでギロとイチャイチャしていると、なんと片手間でギロが俺の服を作ってくれていた。
ギロが触手の先から無地の服や下着、靴下や腰ひもなどをポンポンと何着も吐き出す。
どうやら、創造とか言うスキルを使ってギロが取り込んだ物を違う物に加工しているらしい。
さっき取り込んだ草花を繊維に加工して作ったんだとか、流石に前の世界にあった物と比べるとかなり質は落ちるがそれでも無いよりはましである。
早速、服を着替えてみるがイメージは原始時代かな?、長い上着に下着を履いて腰ひもで固定する靴下を履いたが肝心の靴は流石に材料不足の為無理との事だった。
まあ、これだけ出来ただけでも上出来だと思う。
あとはおいおい素材を確保しつつ、生活を向上させてけばいい。
そんな感じで、ギロのスキルをお披露目して貰いつつ今後の方針を2人で練っていく。

信士『、、そうだな!んじゃ、まずは拠点を探すとするか!!』

ギロ『ギロロロロ!!(そうですね、了解です!!)』

そんな感じで2人で次なる目的の為、付近の捜索に出掛けた矢先、木々が生い茂っている森の奥から何故か悲鳴が聞こえてきたのだった。

信士『テンプレ展開!!キタコレーーーーー♪』

つい、テンプレの展開にテイションがぶち上がる俺とそんな俺の反応に冷ややかな反応をするギロ。
両者全く違う反応だか、この出会いがのちの俺達の異世界生活をしていく上での大切な出会いとなる出来事になるのだった。

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