モンスターオジサン(現実世界でハーレムは無理なので異世界で作ってみた)

エピソード1   女神との邂逅


女性の声『お前の罪は何だ。』

突如として、周りが代わりいつの間にか赤い絨毯が一直線に敷かれた神々し城の一室に移動したようだった。
目の前には中世のお城の謁見の間の様な荘厳な玉座があり、そこに背中に黒く美しい羽が2つ、おどろおどろしい骨の羽が更に2つ合計で4つの羽が生えた長い黒髪の美しい美女が足を組んでこちらを見下ろしていた。
それにしても、元の世界では滅多にお目にかかれないほどの美女。
ついつい、時が止まったように彼女の顔を見詰めて呆けてしまう俺。
そんな俺を不快そうな顔で眺める彼女。
しばらく両者の間で沈黙の時が訪れた。
そんな沈黙を先に破ったのは黒髪の美女の方だった。
彼女は一度深い溜め息を吐くと、足をゆっくり組み直し玉座の肘掛けに肘をおきそこに顔をもたれかかりながらこちらを見て口を開く。

黒髪の美女『、、、、。はぁ、ここに来てもまだ人の時の身体を保ったまま居れる。お前は何者だ?そもそも、普通は意識すら無い筈。おい、お前!!何をしてここに来た?』

そう言うと彼女は俺の返答を待った。
しかし、それは一番俺が聞きたいことであってむしろこちらが今の現状を説明して欲しいくらいなのだが。
そもそもここは何処なのかとか。
まあ、多分あの世なんだろうけど。
それにしても、どう説明して良いものか悩みに悩んでいると彼女の方から物凄い威圧が放たれる。
余りの威圧にその場で腰が抜けてへたりこむ。
今にもしょんべんをちびってしまいそうになるくらいの恐怖に身体が完全に動かなくなる。
金縛りとは種類の違う、恐ろしい何かに出会って動かなくなる感じ。
全身の穴という穴から液体が滴る程の恐怖と脈打つ心臓。
病気のそれとも違う激しい動悸。
前の人生でも一度として味わった事が無いそんなこの状況に更に頭が真っ白になる。
どうしたら。
すると、まるで今までの恐怖が嘘だったかのように消え失せ、身体が動くようになる汗でびちゃびちゃだった顔をあげると。

黒髪の美女『ふっん。まぁ、良い。どうせ姉上達の悪戯か、戯れだろう。それにお前には関係無いしの。威圧して悪かった。して、お前は何故死んだのだ?同族でも殺したか?』

彼女からの圧が無くなり、彼女の顔からも嫌悪感が消えた。
それに、ほっと内心安心する。
彼女からの問いに素直にここに来るまでの事や、今までの人生を語った。
彼女はそれらをただ黙って聞いてくれた。
むしろ、こんなに素直に誰かと話した事があったか?と思う程言葉がすらすらと出てきた。
自分でも意外な程に。
恐らく、彼女が聞き上手だったのだろか?そんな事を錯覚してしまうくらいには包み隠さず色んな事を話せた気がする。
すると。

黒髪の美女『、、、、、。つ、づらかったなぁ。すん、すん。お前の世界はそんなに生きずらい所だったのか。わかる。わかるぞ。それならば全てを恨んでしまうのも頷ける。』

そう言いながら目に涙まで浮かべて話を聞いて更にはこんな俺に同情までしてくれた彼女。
そんな彼女の意外過ぎる反応に俺のなかでの神様に抱く印象が大きく変わる。
てっきり、呆れるか、もしくは逆に怒りを買うものと思ってただけにこれは予想外だった。
そして、彼女は自身についても色々と話してくれた。
彼女は6人姉妹の末の女神様で、この世界の創造神の娘達の一人なのだそうだ。
そして、彼女はその父?母?まあ、神に性別は無いらしいが創造神様から魂の管理を任された女神との事だった。
世界はいくつも存在していて再生と破壊を繰り返しながらそれらを見守るのが彼女達、女神の仕事なのだとか。
そして、彼女の姉である残り5人の女神様達は大層人間が好きなんだとか。
まあ、好きと言うか見ていて面白いと言う事らしいが。
彼女達女神からしたら俺達人間も動物も植物も無機物も皆均しく同等の存在らしく。
その中でも人間ほど理解に苦しむ生き方をする生き物がまあ、珍しく珍妙で見ていて飽きないとの事らしいが、彼女曰く姉達の人間びいきは今に始まった事では無いとの事だった。

黒髪の美女『まあ、そんな訳で姉達がわざわざ世界が滅ぶ原因である人間達を何故再び作るのかは理解に苦しむのだ。そのせいで私の仕事が忙しくなる一方だし、それに人間ほどよく深く醜い生き物がこうも溢れると魂の循環が難しくてのぅ。ほれ、後ろを見てみろ。』

そう言われてここに飛ばされて初めて後ろを振り返る。
そこにはまるで世界が途切れた様な異様な光景が広がっていて。
城の一室の様な風景が突然ちぎれたように途中からは何もない果てしない荒野とおぞましい数のあの黒い塊達がここまで数を成して並んでいるそんな不気味な光景が広がっていた。
つい、後ずさる。
そんな俺を見ていた彼女が少しだけ笑うと。

黒髪の美女『しかし、姉達の悪戯でなければ、はて、やはり魂の循環機能にも限界があると言うことか、、、?どうしたものかのぅ?おい、お主。どうする?姉達の元に送るのも出来んこともないが、、。その際に今の記憶や魂がまっ皿になってしまうかもしれんが。どうする?』

彼女が言うには、彼女が管理するこの空間と他の姉達の女神様が管理する空間は全く別の所にあるらしく、それらの壁を越えようとすれば最悪魂ごと消え去る可能性が高いらしい。
それに加え、恐らく彼女の姉達が管理する世界は元居た人間だらけの世界と同じ世界に転生もしくは降臨するとの事だった。
勿論、転生や降臨の際、色々とボーナス的な物が普通は貰えるらしいが、なんとそれらのボーナスも姉達の女神様の元に送る際に0になる可能性もあるとの事だった。

信士『、、、、、。えっと、、、。女神様にこんな事と言うか、こんな生意気な事言って良いのかわからないんですけど、、あの、、それって俺に何もお得な物が無いんじゃないと、、。』

すると、彼女も少しだけ困った顔をすると。

黒髪の美女『、、うむ。まあ、結果はどうであれ。こちらの問題ではあるしのぉ。それにお主も人間にしては欲が薄いし、しいて言うなら性欲くらいかの?それ以外の欲はほぼ無いに均しいし。何より生きる事を望んでおらん、違うか?』


そう彼女に指摘を受ける。
まあ、確かにあの世界にもう一度人間として生まれ変わって生きたいとは思ってはいない。
むしろ、このまま消えるのも悪くないとさえ思ってはいた。
しいて心残りと言えば、女神様とまでは畏れ多くて言えないが、それなりの美女と一度で良いから良い関係になってみたくはあった。
そんな人生。
そんな事を内心思っているとそれらを全て見透かされたように彼女は少しだけ微笑むと。

黒髪の美女『ふむ。ならワシの管理する世界に転生してみんか?ボーナスとやらも付けてやらん事もない。どうじゃ?お主は中々に人間にしては面白い思考の持ち主だしのぉ。』

そんな感じて、何故か。
俺は彼女の管理する世界に転生する事となるのだが。



黒髪の美女『よし、ならどの世界が良いか?』


そんな彼女の提案される世界がまさか、とんでもない世界だとは、この時の俺は何も知らなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?