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ワールドエンド・シンドローム クリア感想

 NintendoSwitch版でクリアしました。

 ミステリー × 恋愛アドベンチャーゲームとのことでしたが、テンポ良く進むシナリオはとても読みやすく、キャラクターも個性的ながら脇役含めて魅力的でした。

 ミステリー要素に関しては、サスペンス、伝奇物、ホラー、時々ファンタジーなどと複数のジャンルが混ぜ合わせた感じになっており、序盤からもそういった演出にかなり力が入ってて色々な意味で驚かされた。・・・序盤のホラー演出はやめて欲しかったなぁ。

 なお、私が記事の表紙絵をこれにした理由は、ミステリーは面白かったよと主張したいがためである。ただ、人に勧めたいほど声を大にしては言いにくい理由もあるのがもどかしいところではあるけど。

ミステリーは、いいね!

 では感想を。


ストーリー

 100年に一度、死者が蘇る「黄泉人伝説」の伝承が残る田舎町に、奇しくもその節目の年の夏に転校してきた主人公が、ミステリー研究会を通じて青春をしつつも黄泉人伝説に迫る、という感じのあらすじ。

 序章・本編・真相編と分けられており、ネタバレはしないよう真相編を除いた感想を書こうと思う。

序章

 ここは本編まで読み進めるだけのパートとなる。舞台設定やゲームの雰囲気を伝えるパートになっているが、前述したように話はテンポよく進み、始まりから魅力的なストーリーで展開される。キャラクターの掛け合いはもちろん、本編や真相編に関わる伏線や、主人公含む各キャラの意味深なセリフ・演出と先が気になるものがふんだんに盛り込まれている。

 唯一、壁になりそうなのは麻木健介。ボケと賑やかし役であるために1番個性が強いせいか、序章で1番よくしゃべっているキャラの印象を持った。

 個人的に予想外だったのは人死にが出るというところ。私は、このゲームは黄泉人伝説からして神隠し的なファンタジーなものかなと勝手に予想していたもんだから、事件性のある殺人事件が起こって「あ、そういう感じ?」とびっくりしちゃった。

 ところで、ストーリーとは関係ないが背景がよく動くところも目を引いた。こういった見てわかるところからも力を入れているゲームなんだと感じた。


本編

 ここから本番かと思わせて、まさかのギャルゲーが始まった。システム的には恋愛シミュレーションかな。序章と違い、8月1日から下旬までカレンダー通りに進み、攻略対象キャラの1人が攻略出来たらまた8月1日に戻って別のキャラを攻略することとなる。ちなみに、ループ物ではありません。

 5人いる攻略対象キャラのうち1人を毎日スト・・・もとい追いかけて好感度を上げることで、対象キャラの個別ストーリーが見られる仕組みとなっている。

好感度が上がると光る

 この恋愛パートはテンポよくストーリーが進むせいか意外とあっさりしており、攻略対象キャラがなぜ主人公を好きになったかの過程が少ないように思った。逆にそれが、いつも一緒にいて気になっていたらいつの間にか好きになっていたので付き合ってみたい、という雰囲気が出てて10代っぽさがあるなと思った。・・・何語ってんだ、私は。まぁ、要するにね、濃い恋愛ゲームが苦手な人のハードルは低いと思ったんです、はい。

成人女性も攻略対象にいるけどね

 じゃあ、そんああっさりしているんならストーリーは面白くないのか、と聞かれたらそれは違うと答えられる。序章で彼女たちの人となりを知れたからこそ、交流を重ねるごとに彼女たちの内面を知り、時には思わぬ真実が判明したりと、読み手に興味を引くものが次々と出てきて面白かった。

 本編終盤からは一連の事件、そして黄泉人伝説の真実と黄泉人の正体が判明していく過程は夢中になって読み進めた。夢中になった理由に、真相編に至るまで小出しに次々と出る新たな謎や、それをプレイヤーが推理する上で誤魔化し・目くらましを仕掛けてくるところが非常に上手いところかと思う。

「明らかに怪しそうなのに実は違うのかな」「特におかしくないのにそんなこと言われたら気になる」「主人公、意味深に黙るな」、という感じで生半可に推理しようものならストーリーに振り回されることになる。常に興味の引く導線が引かれる中で、予想通りのものもあれば、意味ありげだったけど実は大したことなかったり、逆に予想外の真実が明かされたりと、最後まで飽きにくい構成になっていると思う。

 終盤からはファンタジー要素が出てくるもののちゃんとミステリーになっているし、真相編の種明かしも二転三転するから、私はライターの掌の上でコロコロ転がされた気分だった。まぁ、真相編はあまり好みのストーリー展開ではなかったけど、種明かしは納得いくものだったから設定方面では良かったかな。

気になったところ

 ストーリーは面白かったからこそ、振り返ると色々気になるところが出て満点は出せないのが惜しいなと思った。

ゲーム性

 ゲーム性を高めるか、読み物として割り切るかの配分はADVというジャンルにおいて悩ましいところだと察せられるが、本作はあまり褒められない。

 本編で攻略対象をスト・・・もとい追いかける際はマップから行き先を選ぶのだが、初めは誰がどこにいるのか明かされない。しかし、一度訪れるとその人物が明記されるようになる。なら、初めから明記してもいいのでは、と思った。

初めは何も分からない
一度訪れると記録される

 というのも、このゲームの攻略対象キャラの攻略順はほぼ決まっているようなもののため、何のために隠しているのかよく分からなかった。今どきのRPGみたいに親切設計にしても全く問題ないように思った。また、好感度システムやミッションといったものを採用しているが、それが活かされているとは思えなかった。とはいえ、ストーリーに関わるもんのすごく重要なミッションが混じってて混乱させられたりしたけどね。

コレクション要素もあって、これは世界観を楽しむ意味では良かった

 ゲーム性を更に悪くしているのがセーブとロード。ADVならお馴染みのオートセーブやオートロードが本作には搭載されていないばかりか、セーブポイントは本編のマップ画面か1日の終わり際でしかできない。

 ストーリーのテンポがよいため、思った以上にセーブする間隔が短いので困らなかったが、好きな時にセーブできないのと、やり直したい時に気軽にロードできないのはさすがに不便だった。

ストーリー構成

 ここまでストーリーは面白くテンポがいいとしていたが、それが仇となった部分はある。テンポがいいということはシナリオの圧縮率が高いということなのだが、そのせいでドラマ性は落ちてしまい、1番その割を食っていたのが恋愛パートかなと思う。

恋愛パートは悪くはないんだが、物足りない

 それを補うためなのか、本編マップで訪れる場所にいるキャラとは好感度が上がる以外にボイスなしで手短に会話が進行するときがあるが、中にはとても重要なものや意味深なものが含まれている。作業性の強いシステムのせいで2回以上見ることがあるので、流し読みしやすいのはもったいないと思った。

 また、恋愛パートで結ばれた一部のキャラのエピローグは後味の悪いものがある。5人のうち何人かは青春を謳歌しただけで黄泉人伝説は終わってないから、ミステリーとしてはいいのかもしれないが、正史ルートでないと回避不可なのは恋愛ゲームとしてはひどいものだなと思った。

主人公

 ここは個人の好みかと思うが、私は主人公の扱い方があまり好きではなかった。序章から重要人物であることは示唆されていても終始、主人公は受け身であり、殺人事件に関わらないだけでなく黄泉人伝説の真相を追うこともなかった。

 この主人公はミステリーにおける探偵役でないというのは別にいいのだが、真実が明らかになったときや、事件に関わるときは相手からのアクションによって不可抗力に巻き込まれることが多く、それは真相編の重要なシーンにおいても変わらなかったのは残念だった。役回りとしては理解できるが、脇役でもいいくらいの立ち回りだと感じた。もしかしたら、探偵役はプレイヤーかもしれない。

続編がある?

 ラストで続編を示唆する言葉で締めくくられる。残された謎もあるので分からないまでもないが、個人的に余韻に浸れずモヤっとするのでマイナスです。・・・シリーズ打ち切りじゃないよね?

総評

 ストーリー全体としては間違いなく面白い。テンポの良さに加え常に目新しさを提供する演出やストーリーの構成に、読み手の推理が混乱するような話の展開は上手いので、ここだけなら人に勧めたいところ。恋愛要素はあっさり目なので、こってりした恋愛ゲームが苦手な人でもプレイしやすいかと思う。

 反面、ゲームパートは作業性が強く、攻略方法が初めはマップのどこにいるか分からない攻略対象キャラをスト・・・もとい追いかけるという味気ないものなので、恋愛シミュレーションとして期待してはいけないし、ADVでよくある選択肢等でフラグを立てるようなものを想像してはいけない。

 最初から最後まで面白いことは面白いし、やって後悔することなんてない出来栄えなんだけど、何か物足りないというか煮え切らないというか、面白いからやってみてと声を大にして言いにくいゲームとは思った。ミステリーよりもゲームパートである本編に尺を取られているせいかもしれんし、魅力的なキャラクターが集まっていたからこそもっとボリュームが欲しかったのかもしれん。単にミステリー × 恋愛は相性悪いのかもしれん。

こう締められたらいいんだけどね


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