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switch版 魔法使いの夜 クリア感想

 タイプムーン・奈須きのこ作品、魔法使いの夜を読み終えました。

 携帯モードで読みたかったのでswitch版を購入していたのですが、月姫リメイクと同様にアニメのような演出・派手なアクションシーンといった豪華な紙芝居は大画面でこそ映えると感じ、結局はTVモードで読んだという。
 きのこ作品は空の境界(原作小説)→Fate/stay night及びhollow ataraxia(vita版)→月姫リメイクと履修してます(アニメは割愛)。


ストーリー

 選択肢が一切ない読むだけの一本道ストーリー。ボリュームは少なめ。もともと3部作らしく、序盤から穏やかに緩やかに始まるので、土台作りのためのように思えるくらいに描写等は丁寧に描いていると思った。

冒頭シーン

 ガチ勢の人からしたら何かが続編に持ち越された設定があるのかもしれないし、ネットを漁ると事前情報がうんたらかんたらということらしいので、逆に予備知識が少ない私みたいな人間の方が楽しめるかも。そこまで深く深淵を覗いてない身からすれば、綺麗に1本で収まったストーリーに思え、読後感も心地良くこの1本でも十分に満足した。複雑な設定及びそれらの解説も少なめかと思われるので、初めてのきのこ作品としてはうってつけかな。

 基本的には蒼崎青子を中心としたストーリーとなっている。青子さんはもちろん、蒼崎橙子さんのファンも必見となる。私は空の境界から橙子さんのファンなので、声優が変わってはいるが、出てきたときはほんとにうれしかった。が、オマケの最後はなんでやねん。

 ストーリーが私は綺麗に感じたのだが、理由としてはきのこ作品にしては残酷描写が少なめ、そして死人がいないからだと思われる。まぁ、いないわけではないけど、本編の外側のことだからスルー。他作品だと名前のない一般人が死んだり、主人公がデッド・エンドして何とかの道場で虎に、もしくは変な教室で猫に遊ばれたり等してたが、それすらも一切ない(・・・と思っていたんだが、後に型月を甘くみていたことを思い知る)。何なら悪党らしい敵も登場しない。まぁ、物騒なところは変わりないが。

 ちなみに本編でデッド・エンドがなくなったため、恒例の攻略お助けコーナーは主に解説メインのコーナーに。数は少ないものの、道場や教室は手抜きやったんやなと思わせるほどバリエーションは豊富だった。有珠さん、ツッコミ役だと思ったのに、めちゃくちゃふざけるやん・・・もしかして素がそれ?

なぜなにプロイという、有珠はルリルリ枠?

 ところで、最後のオマケは日常パートなのかファンディスク的なサービス回なのか、どう受け取ればええんやろ。時系列的には後日談っぽいけどふざけすぎでマジメだし。しかも、あのポッと出のピンクはマジでなんやねん、次回作の予告を兼ねてるのか? これ以上おもろい女を増やすな。

キャラクター

 主人公でありヒロイン? は他のきのこ作品でも顔を出す未熟な魔術師・蒼崎青子、もう1人の主人公である山育ちの一般人・静希草十郎、もう1人のヒロインである魔術師・久遠寺有珠の3人の視点を織り交ぜて展開される。この3人の距離感がまた絶妙で、恋愛関係に発展してもいいようなギリギリのラインを越えず維持した不思議な信頼関係を築く様子は、個人的に大好物。

 青子さんの印象としては、遠坂凛と近しいものを感じた(でも、きのこ曰く月姫組に派生するらしい)。合理的なのに人情を持ち合わせつつ愛嬌もあり、完璧なのに努力型だからかどこか抜けてて、誰に対しても素の自分で接し、生徒会長として学園を牛耳っている? ので美人な姉御肌が強め。普段はかっこいいのに、表情が百面相のようにコロコロ変わるおもしれぇ女。

 草十郎に関しては、衛宮士郎や遠野志貴の枠ではなく、黒桐幹也の枠かと思うがどうだろう。意味ありげすぎるので続編次第だろうが、読み終わった今も謎の男。きのこ作品の男主人公は賛否別れる印象なのだが、今回も例に漏れずそんな感じ。青子さんとの漫才は相性抜群。

 無表情キャラな有珠さん。魔術師としては青子の先輩で表情が顔に出ずミステリアスな雰囲気を持つのだけど、後々こちらも抜けてる部分があることが判明し、時たまお茶目なかわいいところも見られる。前述したように、おまけコーナーでめちゃくちゃはっちゃける。かわいい。

演出面

 OPから感じたのは、背景美術が綺麗というところ。ここだけでこの作品の力の入れ具合が伝わりとてもワクワクした。しかも通常の紙芝居ゲームなら背景は固定することが多いのに、この作品は演出のためにアップにしたり、場合によっては背景を動かすことすら辞さない徹底ぶり。

OPの1部シーン

 その次に思ったのはキャラの配置。シーンによってキャラ視点が切り替わるのが本作の特徴だが、その視点で話相手がどこにいるのかまで表現してくれている。

 通常の紙芝居ゲームなら、主人公視点で相手キャラが1人なら画面真正面に1人、相手キャラが2人以上なら画面左右に配置するものだが、本作は奥行、要は手前にそのシーンでの視点キャラ、奥に相手キャラといったように遠近で距離感というものを表現することがある。それがどれ程の作業かは私にはわからないが、そのような労力を割いているのは型月作品以外では見たことない。アニメみたいに絵コンテでも作っているのかな。

前を歩く青子さんと後ろからついていく草十郎

 そして戦闘シーン。紙芝居なのにもう動く動く。こういうのはセンス問われるだろうけど、月姫リメイクでも感じたことだが、BGMや効果音も合わさって紙芝居でここまでアニメのように表現できるのかと感動した。前半の山場である遊園地での青子さん、マジかっこいい。

 全体的に背景やキャラを固定しているシーンが少ない。いや、紙芝居だから動かないのだけど、会話シーンではキャラの表情差分だけにとどまらず、アニメのようなカット割りにかなり力が入っているように思える。そのため、文章を読むだけでなく絵でも飽きにくい作りになっている。携帯モードでやるのはもったいないので、大画面でやることを推奨したい。ufotableさんのアニメも待ちきれない。

総評

 個人的に満点でもいいくらいに良かった。これが10年以上前の作品とは驚き。その後、月姫リメイクに活かされていると思うと感慨深い。他作品を読まないといけないというような必修科目はないので、ノベルゲームが大丈夫なら初めての人でも楽しめるゲームと思われる。もちろん、蒼崎が出るので過去作をやった人ならもっと楽しめる。それにしても、続編を10年以上も待たせるとは、きのこも罪な菌類よ。

早くしないとファンに撃ち抜かれるぞ、きのこぉ

 

 

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