見出し画像

クライマキナ -CRYMACHINA- クリア感想

 PS5版にてクリアしました。難易度はノーマル。

 フリューから出たモナークとクライスタのプロデューサー兼ディレクター兼シナリオ担当・林風肖さんが新たに携わった作品。私は2作ともプレイ済み。

 林さんがインタビューで今作はクライスタの精神的系譜作と発したように、タイトルや「エゴ」「ヨミガエリ」といった過去作の共通用語が出るものの、世界観は人類滅亡後の近未来SFで登場人物は機械ということもあり、続編としての匂わせは僅かしかないほぼ別作品となっている。

 ストーリーは過去作2作品と同様の安定感。また、クライスタから予算がアップしたのか、キャラデザイン担当・ろるあさんの絵を忠実に再現された3Dモデルや戦闘システムのクオリティが格段に上がって驚いたが、実際にプレイしてみるとクライスタとは別の理由で好みが別れそうな気はした。

フォトモードが使いやすかったから色々貼っちゃう

 では感想へいきます。


ストーリー

本編

 物語は細かな設定や動機があるものの単純明快。人類滅亡後の世界で機械の少女たちが「本物の人間」になるべく戦い抜く、というもの。

 登場人物は全て機械なのだが、とりわけ主人公陣営の第8神機・エノア配下であるレーベン、ミコト、アミは人間性が非常に高い人格データを持つE.V.Eと呼ばれる機械なためか、喜怒哀楽の感情表現が豊かなので綺麗なビジュアルも相まってあまり機械には見えなかったが、そのおかげか非常にキャラは立っていた。

神機も負けず劣らず

 敵に関しても裏で陰謀を張り巡らせているが、人間らしい言動はあれどあくまで機械として役割を全うしているので、なぜ主人公たちと敵対しているのかが分かりやすくなっており、ストーリーはSF要素がありながら万人受けしやすいと思う。

家族愛を説く機械がいたりと様々
4人揃って、トリニティ!

 ただ、個人的に序盤から本編3分の1くらいまでは微妙だった。導入は一部記憶を無くしたレーベン視点で始まるのだが、なぜかエノアに一目惚れしただけでなく、いつの間にか好感度100%状態で時折急にむっつりとデレ始める様は、完全に私は置き去りにされてしまった。私は好きになる過程が欲しかっただけなんだ。

 本編にしても序盤は淡々とプロットを消化しているような進行具合に、「殺さなければ生き残れない」と公式ホームページで謳う割には敵と会話での解決を望みつつ戦いになる殺伐さのない展開には疑問を持ったりした。また、お茶会と称される本編進行も兼ねたキャラの雑談模様はテイルズシリーズのスキットを想起させられ、この時点の私は百合があるという事前情報からシチュエーションを楽しむものなのかなと思い込んでいた。

本編の進行や説明に補足を兼ねた必要会話
自由会話はキャラの深堀りも兼ねている

 しかし、ストーリーは中盤の衝撃的な展開から明らかにされる真実の1つが出たところからギアが入る。真実が明らかにされる度に物語が二転三転しつつ盛り上がり、そしてレーベンとエノアを中心とした人間ドラマは声優効果もあってか、機械だろっていうツッコミすら無粋と思うくらいに良かった。好きになる過程がある分、レーベン視点よりエノア視点の方が感情移入しやすい。

意味深
機械に感情は・・・

 ストーリーのボリューム的にはクライスタと変わらなさそうなのだが、後述するゲームパートでかなり省略が施されているので、体感的には短いようで程よい長さに感じた。残念に思ったのは、クライスタやモナークの魅力の1つだったキャラの内面に迫るエピソードが、機械が主役なためかほぼ無いに等しいのは寂しい限りだった。

私にとっての百合の線引き

 まぁ、恋愛要素が入って初めて百合認定するかな。だから、私の中では今作はそこまで濃い百合要素はないんじゃない? とは思っている。とはいえ、レーベンのエノアに対する盲目的な好意だったり、ミコトとアミの既に完成された関係性を見るとLIKEじゃなくてLOVEだよなぁと察するけど、家族というワードもよく出ており、好意の愛情表現がマイルドで本編がシリアスなのも相まってあまり気にならなかった。

アミは平常運転かなぁ、手懐けるミコトがすごいわ

 でも、やっぱりレーベンの一目惚れと、匂わすだけだった恋愛要素が終盤・本編外のお茶会とかで急にストレートに言葉でぶつけてきたのには戸惑ったかな。好きに理由はいらないんだろうけどさ、レーベンはなんでエノアを好きになったんだ。ゲーム内資料で憶測はできるけど、これじゃあ幼女趣味とならないか。

システム

戦闘

 クライスタと比べるとゲームスピードが上がり、スタイリッシュな感じへと進化。操作感や雰囲気的にはニーアオートマタに近い。3人のうち1人を操作、それぞれ使う武器が違うので任意で好きなキャラを選ぶのだが、ストーリーに合わせて指定キャラで強制出撃されることが多々ある。クライスタのようにスキル等で追加されるものがない、ゲーム開始時から完成されたシステムとなっている。

 プレイヤーによって個性が出そうなのが、ニーアオートマタのポッド的立ち位置の、眷属機というプレイヤーに追従する兵器。近接戦、遠距離、妨害、防御といったタイプから自分の戦闘スタイルに合ったものを2機選ぶことになる。

射撃モードもあったり

 操作がシンプルな代わりに、敵の種類やボスの攻撃パターンにバリエーションがある。クライスタのような使いまわしがかなり少なくなったおかげで、個人的にはそれなりに楽しむことができたのだが、「RPG」要素が強いクライスタよりも、「アクション」要素が強いクライマキナの方が万人向けからハードルが上がっているように思えた。

レベル差補正と死にゲー要素

 まず、今作は敵よりレベルが2~3下回っただけでも、攻撃を2~3発受けてゲームオーバーになる可能性のあるデザインとなっている。そして、敵よりレベルが下回れば下回るほどこちらの攻撃が空振りになる確率が上がるようになっているため、低レベルクリアは困難だと思う。

 では、任意で上げるレベルを上限まで上げればいいのでは? となるのだが、得られる経験値は敵とのレベルが近いほど少なくなる仕様となっている。つまり、一度はストーリーを止め、経験値を貯金するためにレベルを上げず維持しながら経験値稼ぎをするという作業が必要となる。

 まぁ、大層に言ったけど、RPGとかでレベル上げ作業好きな自分からしたら作業にそんな時間かからないし、経験値稼ぎ用のステージで集中的に回せばクライスタやモナークよりも短時間で稼げるかなと思う。特にアミは稼ぎに打ってつけな性能だったので、大変お世話になった。

力こそ正義

 とはいえ、推奨レベルに合わせてレベルを上げても被ダメージが大きいことには変わらないので、死にゲー並の緊張感のある戦闘となる。ゲームスピードが速いので理不尽さを感じやすいかもしれない。まぁ、ボスとかは近接より広範囲のビームを撃つことが多いから回避連打や、判定はシビアだけどジャスト回避で何とかなったりするけど。

ステータス

 いつもなら気にしないところだけど、今作は分かりにくかった。例えば攻撃力の表示はキャラ本体に攻撃力とSTR、眷属機にも攻撃力とSTRがあるんだけど、どれを重視したらいいか分かりにくい。ハクスラ要素があるために同名の装備でも能力の乱高下があるし、攻撃力は上がるのにSTRが下がった時なんかは本当に困った。ゲーム内TIPSに説明がないので、なんとなくでやり切った。

探索

 これはクライスタと比べると物凄く省略されている。クライスタは迷路型2Dダンジョンのような長いフィールドなのに対して、クライマキナはほぼ1本道を進むだけ。時にはボス戦のステージは2~3分かけて進むだけで最奥までいけるほど。おまけのようにアスレチック要素や装備アイテムが落ちてたりするが、クライスタのことを考えるとこれくらい潔い方が好感持てる。何より無駄なプレイ時間が省けて嬉しいくらい。クライスタは辛かったからなぁ。

たまにあるアスレチック要素
パイプを滑って省略

やり込み

 クリア後のやり込みは、クライスタやモナークと比べると結構ボリュームが増えている。本編より強いボスがたくさん用意されていたり、裏ボス的なやつがいたり、合わせてレベル上限も拡張されるようになる。今作はそれだけ戦闘に自信あるのかな。まぁ、私はどんなゲームでも本編をクリアすれば満足しちゃうからやらないかな。そもそも死にゲーは精神衛生上の都合で極力避けてるし。

終盤以降からの対戦カード

BGM

 クライスタから引き続き削除さんが担当。今作はボーカルの入ったBGMもたくさんあるためか、より神秘性が増していた。それだけでなく、中毒性のあるBGMもある。まぁ、謎に個性が強すぎる4馬鹿のトリニティのせいなんだけど。ボス戦での登場頻度も多いから、この曲に関しては自然と口ずさむようになっちゃった。

 公式も分かってらっしゃるようで。ちなみに、この時点ではまだサントラが販売されていたのでしっかりゲットしたった。サントラはなかなか配信に移行できない私であった。

総評

 SF要素のある世界観ながら、敵味方の対立理由や動機に複雑さはなく思った以上に分かりやすい。人間味のある機械の物語、特にレーベンとエノアを中心とした人間ドラマは尻上がりに良くなってくるので、百合要素とは関係なく感情移入はしやすいものと思う。まぁ、百合の許容度や線引きは個人差が大きいと思うのでアレだが、本編は抑えめ、本編外のやり取りだと恋愛的な好意が見え隠れするかな。

 戦闘はスタイリッシュながらシンプルな操作なので分かりやすいが、死にゲーみたいな1発1発が致命ダメージになるようなものになっているので、ボス戦で倒されてもリトライできる根気は必要かなと思う。そういった緊張感を持ってプレイするので、今作はアクションゲーム好きの期待に応えられそうな素養はある。

 林風肖さんプロデュースの次回作、お待ちしております。

待ってます(にっこり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?