ゆるパクされ続けた字書きの末路

字書きの友人の話をします。今現在、彼女は非常に落ち込んでいて、創作を続けられないかもしれない。そんな風に思ったので、この記事を書くことにしました。

友人は字書きです。二次創作の字書きをしています。BL小説を主に書く、ごく普通の字書です。今は、ある程度人気ジャンルに居ることもあり、見てくれる人が多いと喜んでいました。読んでくれている人が多いということはモチベーションになるのだそうです。

友人は原作軸の物語を書くことは少なく、パロディを得意としています。友人でないと思いつかないような特殊設定や捏造と呼ばれる類のものも多いです。それでも、大人気とはいかないまでも、イベントや通販で友人の小説を欠かさず購入したり、感想をくれる人が居ます。その中に、ジャンルである程度人気の絵師さんが一人混じっていました。比較的当初から友人をTwitterでフォローし、RTや感想をくれる絵師さんだったということです。友人とは良好な関係を築いているように見えました。

しかし、その絵師さんの本で、友人と設定がまったく同じ本が発行されました。詳細は話せませんが、時代もののパロディで、友人とキャラ設定がまったく同じ状態の本が出されたそうです。友人の本が発行されてから、二ヵ月後のことでした。Pixivではもっと早くに掲載していたので、それを読んでいた可能性が高いそうです。しかし、そのパロディは友人が考えたものでも、時代もののパロ自体が友人のものであるということはありません。しかし、全く同じ設定の本を二ヵ月後に出さなくても、とかなりモヤっとしたそうです。しかし、性癖が似ているということは、好みも似ているということで、相互フォローですし友人は何事もない振りをして、絵師さんとの関係を続けていくことに決めたそうです。1冊ぐらい被ることもあるか、と思ったようでした。しかし、似た本を作っていいか?などの確認は一切なかったとのことでした。

そして、友人は萌えると多作なタイプで、沢山の物語を投稿しました。相互フォローの絵師さんは欠かさずそれを読み、RTやいいね、時に感想をくれたとのことです。絵師さんのフォロワーは多く、友人の物語を読む人が増えたということは事実としてあると思う、とのことでした。

そして、2月に友人はイベントで本を発行しました。あまり言うと身バレするのですが、またもやパロディでした。この話は、相互フォローの絵師さん以外にも、沢山の人がRTやいいねをして下さったようで、知っている人は多いと思う、とのことでした。相互フォローの絵師さんも、わざわざ通販で入手した報告を友人にしたそうです。

そして最近のこと、5月にイベントを控え、友人はちょっとニッチな短編集の発行を予定していました。あらかじめお願いしていた絵師さんに表紙も描いていただき済で、気合十分です。

そんな中、相互フォローの絵師さんが、鍵アカで描いていたという絵を表にぽろっと漏らしたそうです。友人が、2月に発行した本と同じ内容のパロディでした。多分詳細は被ってない、とのことですが、わざわざ鍵アカでそんな絵を描いているのか?と友人は不審に思ったそうです。そして、相互フォローの絵師さんが、5月に発行すると言ったのは、2月に発行済の友人と同じパロディの本と、5月に予定していた短編集と同じ内容のものでした。

「ここまで被るか?」と友人は悩み、私以外の他の友人にも相談したようです。内容が酷似というよりは、時系列が完全におかしい。というのが友人の主張でした。幾ら好みが似ていても、こんなに短期間で3冊続けて本の内容は被らないのではないかとのことです。そして、短編集の中には友人がPixivで投稿していた内容の、違うパロの予定も入っていたそうです。そして、短編集の表紙イラストすら、イメージがかなり似ているもので、友人は流石に青ざめたそうです。「何で一言も相談なしに、こんなことが出来るんだろう」と…。見も知らぬ他人ではなく、同カプ、同ジャンル、相互フォローの仲です。別の友人も、「相互フォローでそれだけ被るものを平然と出せるのはちょっと神経を疑う」と言っており・・・。

友人は相互フォローの絵師さんに、直談判に行きました。直談判というよりはもうちょっとソフトな、似ている話についての相談という具合です。これまでの時系列、似ている表紙についてデータを見せると、相互フォローの絵師さんは「確かに似ているし、そう思われても仕方ない」とのことでした。自分でもそれほど似ていると認めたのです。しかし、相手の主張は「決して友人のものをみて書いたわけではない。自分で考えて描いた話だ」ということでした。どれだけパクっていたとしても、「はいパクりました」という人はいないと思うので、そんなもんなんでしょう・・・。

友人はなるたけ穏便にことを済ませました。しかし、3冊続けて同じ設定の本を発行されそうになり、次回もまたそうなんじゃないの?と疑心暗鬼な気持ちが拭えないそうです。そして、その相互の絵師さんは、友人からメッセージを貰ったその日、他の人気絵師さんと一緒に飲み会を急遽開いたそうです。ジャンルの大手絵師が徒党を組んでいるさまがありありと分かったと言っていました。同じ晩御飯の写真が続々と続けて上がる様は、友人を威圧しているにも等しく、「アンタが絵師さんに文句言えば、周りのあたしらが味方です。わかってるよね?」と言わんばかりで、その様子を見た私も呆れるばかりでした。

なるだけ自分に出来る範囲で穏便に済ませた。それは友人自身の創作も、相手の創作も守りたかったからだということで、大事にはしませんでした。しかし、おそらくこれから友人の創作は、大手絵師から総スカンを食らうことでしょう。もうどれだけ面白い話を書いても、その徒党を組んだ絵師さんたちからいいねやRTをされることはありません。

それは別に構わない、と友人は言います。この創作界において、字書きの立場が非常に弱いこと、それそのもの自体を憂いているようです。今回の件も、友人は特に誹謗中傷などを今のところもらっていないようですが、同じ本を発行する方がいることを、直談判前にツイートで呟いたところ、100%の人が誰のことか分かっていたことに驚いていました。「この人のことでしょうか?」などということはなく「この方は私のフォロワーですが・・」という迷いも何もない書き方だったとのこと。

「そんなに似ていると思ったのに、何で誰も止めてくれなかったんだろ・・・」と、悲しそうな友人の表情は、完全に元気をなくしていました。字書きそれ自体が、絵師のネタバンクにされることを、友人は怯えていました。「もう何を書いても、また同じネタなんだろうなぁ」と思ったときから、友人は書く気力をなくしています。

友人はパクリパクられの話題で騒ぐことは嫌いなタイプです。ですが、今回のことは堪えたようで、休筆とジャンル撤退を考えているようです。

アンソロに小説は要らないと言われ、絵描きのネタバンクにされ、イベントでは「小説か」と言われる。そんな学級会が持ちあがる度に、確実に字書きの魂は削られていっています。この記事を書いても、友人が元気になるとはまったく思いませんが、個人的に憤りを隠せなかったので備忘録として残しておきます。




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