久米島に行く(10)

久米島は全島にWiFiスポットが配置されていて、観光客も無料で使えるようになっている。
ただ、WiFi電波の特性上、スポットの近くにいないとつながらない。
たくさんスポットがあっても、そこからすこし離れると切れてしまうので、スポットの近くに居座ってネットに接続することになる。

私たちが滞在していた宿には無線LANはなく(有線LANはあった)、部屋にも島のWiFi電波が届いていなかったので、ネットに接続するときはいちいち表に出て、外のテーブルのところで作業しなければならなかった。
スマホでテザリングするという手もあるが、ソフトバンクは3Gしかはいらないし、一日二日ならいいが長めの滞在になるとあっという間にデータの上限を超えてしまって使いものにならない。
島のWiFiスポットをあてにせずに、無線LANを完備しているかどうか、あらかじめ宿に確認しておくのがいいだろう。

そんなわけで、なにかと面倒だったメール処理やらネット作業がとどこおっていて、どこかでまとめて作業しようということで、リゾートホテルなら大丈夫だろうと、空港近くの〈サイプレスリゾート久米島〉というホテルに行ってみた。
ついでに昼食と飲み物を注文、ラウンジ外の気持ちのいいテラスでネット作業。
まるでボラボラ島あたりのリゾート地みたいな風景が最高。
ほんとうはネット作業などではなく、なにもかんがえずにのんびりしたいところだが。
テラスの下には大きなリクガメが飼われていて、従業員がかわいがっているようだった。

2時間ばかりそこにいたあと、海洋深層水を利用したスパ施設である〈バーデハウス〉に行ってみることにした。
宿はその近くだったが、なにかとスケジュールが立てこんでいてなかなか行く機会がなかったのだ。

バーデハウスはなかがふたつに分かれていて、ひとつはお風呂とサウナ、もうひとつは温水プール。
それぞれ料金が違う。
お風呂のほうは千円、プールは二千円、両方だと二千五百円と、けっこう高い。
両方はいってみたかったが、高いのでお風呂のほうだけにした。
バスタブは外にあって、ちょっと背伸びすればきれいなビーチが一望できる。
お風呂はしょっぱくて(海の水だから当然だが)、それなりに気持ちよかった。

夕方着くフェリーで野々宮の娘の藍ちゃんと、その友だちのさきちゃんが到着したので、迎えに行く。
ふたりを拾って、いったん宿に落としてチェックイン。
そのあと、ラジオ局で仕入れた情報にしたがって、みんなで鳥島公民館まで島唄のライブを聴きに行くことにした。

午後7時ごろ、場所を聞きながら行ってみると、公民館のステージに太鼓と三線がいて、すでにはじまっている。
6時くらいからやっていたようだ。
演奏者は神戸からやってきたそうだが、三線の人の奥さんが久米島出身で、一度こちらで恩返しのような形で演奏会をやりたかったと話していた。
子どもたちが踊ったり、遊んだり、自由にしていて、ほほえましい。
また、聞いている人もときどき前に出てきて踊ったりする。
なかでもひとりの漁師のおじいさんが、非常にたくみな踊りを披露して、ときおりそれに子どもが対峙していっしょに踊ったりして、独特の雰囲気がある。
四歳くらいの子どもが多かったが、こんな子どものころから島唄に接して育っていれば、かなり独自の音楽感を身につけるだろうなと想像する。

途中でラジオにも出ているという初老のおじさんが出てきて、演奏を交代した。
これがまた非常に巧みでホットな演奏で、客もノリノリになって、公民館は一種のディスコ状態。
たったふたりが演奏する三線と唄と太鼓だけで、これだけの熱狂を作ってしまうのはすごいなと、見とれてしまった。

私たちだけが明らかによそものだったのだが、みなさん親切で、次々と差し入れが回ってきたり、いっしょに踊ったり、「ラジオに出てた人でしょ?」などと声をかけてくれたりして、あったかい雰囲気がうれしかった。

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