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JR九州の収支公表と地元に思うこと

どうも。ゆうくんです。

今回から暫く間、大学院時代に研究していた公共交通に関する内容について書いていきます。

5月27日にJR九州の公式HPで輸送密度が2000人/km以下の収支状況が発表されました。

それ受けて、様々な記事が出されています。
1本目は日本経済新聞(5/28付・九州面)
2本目は朝日新聞
3,4本目は宮崎日日新聞(5/28付)
5本目は九州ブロック紙の西日本新聞
6本目は佐賀新聞となっています。

これらの記事から、自治体の首長によって受け止めの差があるように感じられます。全く公共交通に対して関心がなく、どこか他人事のような発言をしている首長もいたり、危機感は抱いているが具体策が全くない首長がいたり。
しかしながら、これらの新聞記事の中からは自動車やバスといったその他の交通手段とどう鉄道を紐づけしていくのかという考え方があまり見受けられませんでした。
強いて言えば、佐賀県の自治体がサイクルトレインについて言及している程度で、日南市長が「駅に人を集める仕組みづくり」と言った発言を除けばその他の自治体はあまり具体性のない話ばかり聞こえるように感じました。

私自身は、4本目の記事で河野宮崎県知事が言及していたJR九州の全線の収支について公表をするべきであると考えています。
なぜなら、JR九州の経費(電気代や運転士・車掌・駅員といった人件費、車両の購入費やメンテナンス費用、線路や土木構造物の維持費等)が明らかになることで、また次の議論ができると思っています。

昨年9月14日に熊本県でJRと県外を繋ぐ高速バスを除き全ての公共交通を無料にするという壮大な社会実験が行われたのを覚えてますか?
その日、バスや電車の車内は大混雑で特にバスは満車で何本か待たないとバスに乗れない状態でした。一方、市内中心部の道路はガラガラで、九州で最も渋滞が激しいと言われる熊本の姿が一変したことに鳥肌が立ちました。
加えて、熊本の中心市街地・通町筋は大賑わいになり、レストランは30~1時間待ちという状態になりました。

ちなみに、この実験を行うのにかかった費用は2500万円ですが、中心市街地への波及効果は概算で5億円と言われており、B/Cが20倍というとんでもなく効率の良い経済政策を民間のバス会社(九州産交HD)が果たしたという実例があります。

この実験後、コロナショックが起きるまでは熊本都市圏のバスの利用者数が前年比1割増という効果が出ており、公共交通の利用促進に無料化実験は有効であることも明らかになっています。

JR九州の収支と熊本の無料化に何が関係するのかという疑問を持つかと思いますが、僕はこれが地域再生の戦略に繋がるのではないかと直感的に感じています。

それは、(県庁所在地等の中核市では)公共交通を政策として確りやることが地元の若者定着に効果が大きいという仮説です。
4月に社会人になり、給料を貰いながら生活をしていると、東京水準で給与を貰いながら公共交通網が充実している地方中枢都市で生活することが金銭面で最も合理的であるように感じるようになりました。

東京23区内で1Kを築15~20年程度で借りようとすると家賃が月8.5万円程度。そして光熱費や携帯電話代を合わせると10万円程度固定費が飛んでいきます。それに食費が4万円程度飛べば、残り1~2万円程度になり、もし奨学金を借りていれば、それがほぼ返済額になってしまう状況です。(大卒新入社員の平均給与は約20万円で手取り16万円程度) ただ生きるために東京で生活をするという状況になり結構過酷であるように感じられます。(2年目に住民税が課税されれば生活は不可能…)

実際のところは、23区内をこだわって築年数を30~40年程度の物件にするか、埼玉県や千葉県に住み、通勤地獄と言われるような電車に乗り、家賃を5~6万円程度に下げる人も多くいます。

例えば、私の地元である宮崎市でシュミレーションしてみると、初任給の平均は大体17~20万円程度。手取りに換算すると14~16万円程度になります。
家賃は東京の半分程度の4.5万円で1LDKが借りられちゃいます。(新築でも5.2万円) 携帯代などの固定費を合わせれば、6万円程度。そして食費が大体3.5万円で9.5万円。
余裕じゃんと思う方もいらっしゃると思いますが、そこに自動車という固定費が上乗せされます…。軽自動車でも固定費が2万円強。そうなると12万円で奨学金、住民税。。。結局生活ギリギリじゃん…。
※宮崎県は県内企業に就職した場合、最大100万円奨学金返済を支援する制度を設けています

でも、自動車の固定費が削減できれば東京に比べてもお金に余裕ができるし、むしろ地元で生活する方が時間的にも金銭的にも余裕ができて、子育てだってワンオペも成り立たなくなった社会情勢の中、両親の手助けを受けながら子供を育てられるので、日本の少子化問題も良い方向に進むように感じられます。

今回の収支が発表され、宮崎県に関しては日豊本線延岡~都城間を除き大半の経費・収益が発表されましたので、大体公共交通にかかる費用が把握できたのではないでしょうか。
僕自身は、大体100億円が宮崎県の公共交通(鉄道・バス)の年間経費ではないかと考えています。
宮崎県の一般会計の予算が大体5000億円なので、県の予算の2%を公共交通に充てることができれば、宮崎の地域内公共交通は無料にできるし、それをPRすることができれば、かなり生活の質が変わってくるように感じています。

しかしながら、県の土木整備部長の優先度の認識が道路と港湾という話でしたので、実現は難しく感じています。

そして、宮崎市においては路面電車の整備と自転車道の拡充が自動車の依存からの脱却、そして地域再生の戦略に繋がると思っているのですが、それについては2週間後の更新で論じたいと思います。

来週は、宇都宮ライトレールが何故あそこまで揉めたのか?
そして、宮崎市に路面電車を整備することが合理的であることが僕の中で確信的になったのか。
実際に現場を訪れてみて分かったことを書きたいと思います。

それでは、次の更新をお楽しみに!


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