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ヤン・シュヴァンクマイエルの映画

チェコを代表するアニメーション作家ヤンシュヴァンクマイエルについて書きたいと思います。

最後のシュルレアリストと呼ばれることもあるくらいの方。

実にシュールで少しグロテスクな作品が多いのです。


作品制作もとても面白く、実写もアニメにおいてもCGは使用せず、全てストップモーションで作品を作っています。
実写とアニメーションの間。

その作品の中でもおすすめな2つを挙げさせていただきます。
1つ目は前回の記事でも取り上げました、
『サヴァイヴィングライフー夢は第二の人生ー』

主人公エフジェンは、うだつのあがらない中年の勤め人。彼の楽しみといえば寝ることぐらい。
ある日夢の中で美しい女性と出会う。
その女性にもう一度会いたいエフジェンは古本屋で夢の操作法のカルト本を見つけ自身でその儀式を施してみることにする。
すると自身の夢に自分の意思で入ることができるようになり、その女性との人生が夢の中で構築されてゆく。

そんな夫の行動が気になる現実の妻ミラダはエフジェンの後をつけて、自分も儀式を行い、夫の夢に入ることに成功する。
そしてかれらにとっての夢と現実が境界線があやふやになってゆく。

というお話です。

俳優さんたちに切り絵で様々な言葉を発せさせるために、まずは俳優陣の様々な発音の顔表の作成から入ったのだという。
コラージュで作られた背景に、俳優陣の実写やコマ撮りの動きの入り混じった中で進んでゆく物語。

夢についての映画なのですが、
その夢に対する見解は、エフジェンの現実での精神分析医によるフロイト的な意見がそれを務める。
そして最終的に夢とは、第2の人生なのかもしれないし、はたまた第一の人生なのかもしれないという点が面白いのです。

私も昔、一晩の夢の中で2日間が過ぎたことがありそのときは凄く考えてしまいました。
これがもし毎晩続いたら、1日現実を生きて、2日間を夢で過ごすことになる。
必然的に夢の比率が増えてゆき、自分にとっての重要度も夢の方が上回ることがあるのではないかと考えました。
凄く怖くなったのをとても覚えています。

でもやはり惹かれてやまないのが夢ですね。
もうすでに亡くなってしまった大切な人にも会えるし、自分の願望を叶えたい放題な、
倫理観や制約を取っ払った世界。

夢を扱う作品にはとても惹かれます。

この夢と現実のあいまいな構図は、
ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』とも似ている気がして、これもまたも好きな作品です。
作品全体の雰囲気としては、ミシェルゴンドリー監督の『ムード・インディゴ』にも似たものを感じます。

そしてヤンシュヴァンクマイエル監督の作品の中でおすすめしたいもう一つが、
『オテサーネク』です。

子供が欲しくても出来ず悩む妻ボジェナに、夫カレルは、慰めのつもりで木の切り株を赤ん坊の姿に似せてプレゼントする。
すると妻ボジェナはその切り株をオテサーネクを溺愛し始める。そしてそのオテサーネクには生命がやどり異常な食欲を見せ始め、それが参時へと繋がってゆく。

というようなお話です。

ここまで不思議と快・不快が混ざり合いながら惹かれる作品は初めてでした。
ヤンシヴァンクマイエルの作品の色々な短編作品には”食べる”という行為が良く出てきます。

そしてこの食べるという行為がこれまた見ていて心地よくないのです。わざと美味しくなさそうなご飯に、食べることが楽しくなさそうな上に、その食べる口元がクローズアップなのです。

ただこれは、監督の拒食症だった過去や食事に対する嫌悪感がそのまま反映されているからだそうです。

この作品でももれなくご飯をたべるシーンがあまり心地よくないです。

この作品は、チェコの民謡「食人木(オテサーネク)」を題材にした短編作品で、とても狂気的なものですが、何故か惹かれてしまうのです。

好き嫌いの分かれる作品なのだと思うのですが、
百人に受け入れられず一人には最高に好かれるような作品を作り出し続けるヤン・シュヴァンクマイエル監督はやはり好きだなあと感じます。


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