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第一話 猫耳獣人と不思議な物語

 ピンと立った耳、すらりと長い手足に毛並みのそろった尻尾。
 ネコ型の獣人と普通の人種が住む不思議な世界。それも、ネコ型の獣人は女性だけという極端な世界。
 周囲を海に囲まれた孤島に作られた学園都市、猫撫学園。
 高度なAIで管理され、生活すべてが都市内で揃う快適な学園都市で、学園の卒業生が、その都市を維持していた。
 あるものは、物流の職種へ、またある者は花屋など、多種多様な生活が都市内で約束されていた。
 全寮制のこの学園は、ネコ型獣人がパートナーを探すために設けられた学園でもあり、生徒は卒業の段階で、相手を選ぶ必要がある。
 そして、特定の相手を選ぶことができない生徒は、当然留年になってしまうことにつながる。なかでも、ひとりの男子が複数の獣人をはべらせるという、伝説的な生徒がいた。これは、そんな生徒のお話……

「ねぇ、彩芽<あやめ>。今日も彼が来るの?」
「は、は? か、彼じゃないし……彩人<あやと>は……」
「ふふ~ん。彩人ねぇ~」
「な、なによ……」
「呼び捨てにしてる段階で、もう、そういう仲よね?」
「いや、ちがっ……」

 そんな仲良しの二人の元に、ひとりの男子がいつものように、挨拶を始める。といっても、普通のあいさつではなく……

「彩芽~~」

つつ~

「あひゃっん!!」

 彩人と彩芽は幼少期からの腐れ縁ということもあり、スキンシップも激しい。普通の男女ならしないことでも、普通にしてしまう。
 普通の男女が同じようなことをしようものなら、手首に着けてあるAI管理の警報がアラームを発してしまう。
 手首につけられているブレスレットは、学園都市で生まれたと同時に配布されるもので、個人の身分証明書の役割も果たす。
 そして、男女でシステムが異なり、男子は普通の身分証明や買い物などに使われる。しかし、女子はというと獣人の管理機能が追加される。
 女子は猫型の獣人になってしまうことで、独特な生理現象が生まれる。それは、興奮度が急上昇し、異性を求める生理現象。“発情期”がある。
 それを探知する機能も持ち合わせている。男子のブレスレットにも似たような機能があるものの、女子生徒ほどではない。
 過度なホルモンの上昇を検出した場合、警告音が鳴り、注意を促すことになっている。これも、人によっては異性に触られただけでも、警告音が鳴るものもいた。
 そんな、生徒もいる中、彩芽はというと……

「あ、彩人!! もう。やめてよ~」
「えぇっ。いつもの挨拶でしょ?」

 警告音は全くなる様子がなかった。それは、単純に彩芽が鈍感なのか、それとも……それを察してか、穂乃花は不思議そうな表情をしていた。

「相変わらず、仲がいいよね。二人とも……」
「だろ?」
「どこがよ。もう……」
「それにしても、ブレスレット反応しないよね。彩芽、壊れてる?」
「いや、そんなはずないと思うけど……」

 穂乃花は首をかしげながら考え込む。前かがみになり、穂乃花のピンと立った耳が、彩人の前に来る。
 そよ風になびき、整えられた毛並みが、風になびく……。

「試す?」
「えっ? 試すって……」

 彩人が何の気なしに、顔の近くにあった穂乃花の耳に、息をかける。

ふぅ~~

ゾワゾワゾワ!!

 男同士でもゾワゾワすることのあるその行為を、なにを思ったか彩人は目の前の穂乃花の耳に、やさしく吹き付けた。すると、当然体中に電気が走ったようになった穂乃花は……

「あひゃん!!」

 そんな、とっぴな声と同時に……

ピピピピピピ!!

 ブレスレットのLEDが赤く光り、警告音を鳴らす。

「大丈夫そうだよね。」
「あ、彩人ぉ。なんで、あたしで試すのさ。もう!!」

 くねくねと体をよじらせながら話す姿は、妙なえろさを醸し出していた。そして、彩芽は当然のように……

「彩人……サイテー」
「いや、これはな。どんな音が鳴るのか、気になって……」
「いや、それでもしないでしょ。普通……」
「ええっ。」

 穂乃花とは、学園に入ってからの友人で成績優秀だったこともあり、一緒に話すことも多かった。特に、同じクラスや彩芽とルームメイトということもあり、より親しくなっていた……
 ゾワゾワして、悶えていた穂乃花は、ようやく落ち着いた後、素朴な疑問が浮かんだ。

「ねぇ、彩人くん?」
「ん? なに? 穂乃花ちゃん。」
「彩芽との関係だけど……」
「うん。友達だよ? それがどうかした?」
「うん。わかってるんだけど……」

 改めて、ふたりの前に向き直った穂乃花は、続けて質問をした。

「彩人くん。」
「なに? もったいぶって……」
「う、うん。恥ずかしいけどさ。ひとつ聞いていい?」
「なんだよ?」
「今、横にいる彩芽のほっぺに、キスってできる?」
「!!!!」

 穂乃花の純粋な質問に、彩芽の顔は湯気でも上がるかのように、一気に真っ赤になる。しかし、それを知らない彩人はごく普通に……

「う~ん。できるよ? する?」
「!!!!」

 素直で、ストレートな表現に、穂乃花も彩芽も同時に恥ずかしくなり……

ピピピピピ!!

「あっ。」
「あっ。」

 あれほど鳴ることのなかった彩芽のブレスレットも、穂乃花と同時に警告音が鳴り、ある意味で故障でならなかったということが分かったのだった。
 しばらくの沈黙の後、三人はいっしょに学園棟へと足を向けたのだった……

「が、学校。いこうっか……」
「う、うん。」
「ん? どうしたの? 二人とも。えっ? あれぇ~まって……」

 彩人は男女隔てなく垣根を作らず親し気に対応してくれる。気さくでいい人といえば、聞こえはいいけどその実。親しさに合わせ、スキンシップも増えてくる。つまり……

『その胸に手を当てて考えてよ。彩人』
『そうよ。その発言は、私たちには、ある意味。毒よ。もう』

 彩人たちの暮らす、全寮制の学園都市。猫撫学園。
 猫型獣人の女子たちが、パートナーを求め入学してくる学園でもあり、奇妙な共存関係が出来上がっていた。
 入学した生徒たちは男女に分かれ、入寮することになり共有スペースを除き、基本的に寮での接近は禁止されていた。その寮には互いの棟を仕切る高い塀が設けられ、名所にすらなるほどだったが、それは彼女たちの特異的な体質のためだった……
 そんな学園で繰り広げらえる、ちょっぴりえっちで、ちょっぴりドキドキする物語が始まります。

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