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放牧民生活記 #1 2024.8.6tue

放牧民生活記#1としたけども#2があるかはわからないけど、最近の仕事について思うことを書いてみようと思う。
遊牧民かと思いきや、どちらかというと放牧されている家畜ですから放牧民の方がいいでしょう。
あまり言うことを聞かず、好き勝手、放ってさらくもので雇い主はさぞ大変だろうと思いますがありがたくいろんな仕事をしてきました。

最近、タイミーというアプリを入れてみた。
すごい時代になったもんだ。
タイムリーに、空いている日に募集している仕事へ、ボタン一つで応募するだけで仕事が決まる。つまりは現代の日雇い労働者だ。
便利ではあるものの、利用の増加は不正規雇用、人手不足などもっと多岐にわたる問題も増えている時代でもあるのだと思う。
なんとも複雑だが、なんせ放牧民にはありがたいシステムであるのは確かだ。

応募の際には大半がボタンを押すだけで完了し、中には面接、職種によっては応募資格が必要であったり、簡単な作業であっても経験者を募集している。倉庫作業や運送業など、体力が必要なものは"男性活躍中"、販売や接客業は"○〜○歳代女性活躍中"、ないしは"女性活躍中"と限定募集はかけられないので、遠巻きに限定募集されている。
少し前や今でもあるだろうが、これまでは求人案内を見て、電話をかけ、履歴書持参で面接→受かれば勤務できた。勤務までに数日〜数週間かかる。

毎日誰が、どんな人が来るかはわからない。経験値の差も大きいだろうし、人によって様々すぎて事業者もやりづらそうにも思えた。
だから大抵が誰でもできる、皿洗いや清掃、作業仕事なのだけど、逆に、人手不足で手を取られ、本来手をかけたい部分や必要な部分に影響が出ている、という事業所からすれば、事業者・利用者互いに都合の良いものだろう。

私は専門卒業の時に就活をやめて以来、定職というものには縁がないのだけど、高校の時から何かとあらゆるバイトしているので、こういうところで募集がかかっているものは大抵経験者であることも多い。
自慢ができるようなことではないけど、こういう時は便利に使える。

取材費を稼ぐ必要もあるけども、定職に着くと何か撮影があった時に行けない、なんて本末転倒な自体になるような気がして、もしもの時に直前で対応できるような仕事をいくつかしている。

私に限ったことでもなく、写真仲間は皆四苦八苦して取材を続けているのが現状でもある。鳶職職人や写真学校の先生、民宿、、、言い出すとキリがないが様々な職を持っている。作品で食べている、なんてある程度名前が売れている人でもそんなことができている人は皆無に近い。

実はタイミーも、先日展示に来てくれた写真家の人で難民の取材を続けている女性写真家の人が教えてくれた。
取材もだが、家族もいて、生計を立てる必要があるのでいろんな仕事をしているそうだ。
海外組はこれに加え、円安で海外でも滞在費や食費など周辺の出費も跳ね上がり、行けなくなっている人もいれば、日本からレトルトを大量に持って行って空腹を忍んでいる人もいるようだ。

とはいっても、タイミーで募集しているのは、大半が街中なので熊本市内の市街地やあっても第二都市の八代、観光地、までが大半で水俣やそれ以外の田舎はほとんど募集されていない。水俣では職探しは一番大変だと痛感している。
しかし一方で、矛盾しているようで田舎のお店や事業所は人手不足で、人がいないがために倒産して行っている現状がある。

余談だが賃金とはよくできたもんだといつも感心する。
時給一つにしても、最低〜上がるにつれ、体力を要する肉体労働か、資格や専門知識の有無など関係してくる。
学問を要する職が賃金が高いのも納得だが、清掃業や飲食業、工場や何かと作業仕事無くしては世の中は成り立たないことも事実だ。
世の中には不都合な事実が山ほどある。

もしもっと早くに写真家の収入や仕事の素性を知っていれば、安定する職を見つけて、もう少し楽な環境を、とも思うが、それができていれば写真業など無縁だったのかもしれない。

何より、良い方に考えてみれば、そうした現場で働いていくことの方が、写真を撮る上で身の肥やし、視点の肥やしにできているようにも思う。

山や海、川の民は、自然に生かされながら、自然との折り合いをつけながら、生きているように思える。だからなんでも欲するままではなく、次の人、次の年、次の…と来るべき何かのために塩梅を見ながら、何かを得て暮らしていたりする。手足、体そのもので感じ得る感覚がその判断の決め手になるだろう。そんな中で、会社員とは思考が無縁の場所にあるような気がするから、養鶏や畑仕事、介助仕事は経験したからとて何がわかるわけでもないかもしれないけど、ほんの少しだけ、撮る相手に近づけるような気がしている。何より、外で土に触れ、風にあたり、仕事をするのは、この炎天下とはいえ、精神的な苦労は驚くほどなく、かえって爽快でもある。

話は戻り、タイミーを使って3回仕事へ行った。
1、3回目は同じ畑仕事で草払い業務だ。
朝5時からと、6時から、どちらも勤務は4時間で時給1100円、交通費200円。
熊本は最低賃金が898円で少しよくでも910~2,30円の話なので、悪くもない。悪くもなくはないが、いいわけでもないだろうが、働くにしても興味がある仕事がしてみたい!と、面白そうだったので、とりあえず行ってみることにした。

世の中は最低賃金が1500円だとか、それでも…と言っている現代。
最低賃金ワーストを占める九州はどこも900円を切っている。
福岡ほど人口の多い場所や市街地であればもう少しいいところもあるだろうが、よくても900円だ。これが地方や田舎の現状だ。
ここ数年、最低賃金は上がっているものの、それでも事業所がその負担の増加についていけているのかというと疑問が残る。
人口流失もあり、高齢化のますます進んでいく町で、消費する人口も当然減り、収入もだろうが、収益自体が少なくなっている。
問題は山積みだ。こう言う部分を肌で知れることはある意味、ありがたいことでもある。

結果から言うと、朝方7時台まではまだ日差しも弱く、朝早いこともあって、1度目は芋畑の蔓を整理しながら合間の雑草を手作業で抜いたり、鎌で買っていく作業だ。中腰での作業はそれだけでもなかなかハードだ。
8時から場所を変え、ミカン山の草払いに、ここでは草刈り機を使う。
作業自体はきつくもないが、8時以降、一気に日差しが強くなる。
体を熱すというより、焼かれるような痛々しい暑さはそれだけで体力を消耗していく。
慣れない草刈り機をどうしたら使いやすくなるものかと試行錯誤していたら一瞬で2時間経っていた。

3回目、畑仕事2回目は、5時から稲の苗を作っていた敷地のスプリンクラーを取り外す作業だ。泥だらけになりながら、スプリンクラーを分解してみたり、使い終えたマルチシートをまとめていく。
体力はそこまで必要ではない作業ではあるし、日差しもまだ強くはないが、すでに蒸されるような暑さに随分体力を消耗していく。
後半はまた場所を移動し、出水市街地近くの田んぼへ。
田んぼの畦の草刈り作業だ。

ここからは容赦のない日差しとの戦いでもあるため、会社から脇下に保冷パックをつける専用ベストを貸してくれた。アクション映画か刑事ドラマで見るような、脇下に拳銃を2丁入れるような感じで、保冷パックを2つ、両脇へ取り付ける。あると随分いいが、これでも暑さは容赦ない。
今回は草刈機ではなく、耕運機のような形の手押しタイプの草刈機を私は使うことになった。
初めての農機具に、簡単なレクチャーを受け、出発。

機械の中心から左に出ている部分で草を刈り、畦の傾斜に合わせて左の部分は30度60度と変更が効く。最初に左半分の草を借り、帰りでもう半分の草を刈る。
1往復で1畦の草刈りが完了する。

手押しで自動で動くとはいえ、畦のバランス感と機械の操縦は、妙に体の力を使い、1往復する頃には疲れよりも体の痛みが伴う。
一番端の三角形の田んぼにきた。
反時計回りならば、1周できるだろうと考え、回ってみたのが間違いだった。
コーナー部分には、水の出入り口がある。
うまく前後を上げ下げしたり、何かしらどうにかすれば乗り切れるだろうと素人頭で考えた。
そうしたら、機械は田んぼにハマり身動きができなくなってしまった。
さらに炎天下は追い打ちをかける。
沼から抜け出そうと、何度も何度も力を振り絞り、動かしてみるものの、車輪は田んぼの中でくるくる空回りをし続ける。

何度挑戦しても抜けれず、とうとうもう一人タイミーできていた男性に協力要請に行くことに。すでにこの時、持参していた水も全て飲み切ってしまった。

もう一人の男性も、今まで冷房の効いた事務所で働いていたのだと言うが、体力が追いつかないと朝から言っている。
田んぼに来る直前から気分の悪さを訴えていたが、耐え忍んでいた。そんなことはいいから、早めにギブアップしないと命の危険性の方が先だろ!と少し心の中で突っ込んでしまった。

二人で少し休憩し、機械を救出しようとしていたところに畑の従業員が来て、助けてくれた。日頃から畑で働いている人は、体つきから違う。
いつも山でも、足腰の強さや、何が違うのか、体の大きさに全く伴わない貧弱な自分の体力が情けなくなってしまう。

沼からの脱出撃で、体力は奪われ、飲み水をなくし、少し気分までわるくなってきてしまった。
運のいいことに、畑の真裏にあったローソンに許可を取って水を調達に行くことにした。
だけども奪われた体力に、熱し続ける日差しの強さで、もう体が動かない。
最後の10分は事業主の人の草刈機や普段の動き方で力の入らないコツのようなことを教えてくれた。

しかし、一言。
今かい??笑

男性でも慣れない人は、1日来たら次は来ないようなのだけど、稀に私のように2度ないしは今度も行こうとしている人は珍しいのかもしれないけども、できれば最初に聞きたかった。と聞き終えた後に笑えてしまった。
また時間が合えば、ここの畑仕事へ行きたい。

間の2回目は、ピザ屋の配達だ。
10数年前にできたピザ屋は、出水市内では唯一のピザ屋だったが、去年別のピザ屋がとうとう進出してしまった。
コロナが手伝って一時は売上も1.5倍ほど上がっていたのもも、コロナが治ったことと、競合店舗が進出したことで元々の半分まで売り上げは下がったのだという。

とはいえ、お店を一人で回している状態だった。
暇になったとはいえ、週末は特に配達中に連絡があったが対応できずに注文が流れたと言う話だった。
人手不足は今やどこも抱えている問題だ。
かと言って、固定で入ったとしても儲けより賃金の方が高く赤字が続く。
そうした時に、短時間で求人できるタイミーは便利だろうが、やっぱり毎回同じことを教えることは手間になっているとのこと。そして、何より、手数料が30%かかることも、考え方によってはマイナスなのは事実だ。

畑仕事の人は、逆にその時その時で必要な時に募集をかけられ、こうしたところから来る人は、テキパキ動く人も多く、もっと早く使っていればと思ったという、対極の感想であったが、ケースによってかなり良し悪しはあるようだった。
利用する側も、必ず仕事があるわけでもなく、仕事が少ないところで先を越されると仕事がなくなる。だけども、いささかこう言うものが重宝してしまうなんて、便利なものの、不景気というのか、不穏な気配を感じる気がした。

しかしながら、放牧民はこれも少しばかり楽しみながら、いろんな職をもう少し転々としてみたいと思う。

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